2005/7
No.891. 昭和15年8月24日 3. 電気音響変換機(ヘッドホン) 4. 強震観測装置SM-27 <技術報告>
強震観測装置SM-27リオン株式会社 計測器技術部 本 吉 順 一
1.はじめに
ダムや道路施設、または変電所などでは、地震が発生したとき、設備の揺れの状況や、岩盤の揺れの観測、耐震設計の検証などが行われています。従来、このような地震観測のニーズにお応えするための地震計がリオンから販売されており、多くのお客様にご利用いただいております。
今回、さらなるお客様のニーズにお応えするため、新機能を搭載した地震計を開発いたしました。新機能としましては、主に下記の4点があります。
・最大で6つのセンサによる複数箇所での同時観測
・地盤の微弱な振動を長時間に渡って観測できるデータロガー機能
・遠隔操作(通信)により現在の振動波形をリアルタイムに通知する機能
・地震の揺れを早期に検知し、瞬時に震央距離やマグニチュードなどを推定する早期警報機能
特に、早期警報機能は、地震のP波(最初に地表に到達する小さな縦揺れ)とS波(P波の後に到達する大きな横揺れ)が地表面に到達するまでの時間差を利用したもので、P波が到達してから約2秒程度で地震の規模や震央の位置を推定し、S波が到達する前に警報を出すことができます。
これは、最近注目されている技術であり、鉄道会社や半導体工場、公共施設など幅広い分野においてニーズが高まりつつあります。
以下、製品の詳細についてご紹介致します。
図1 SM-27 2.製品の概要
2−1.SM-27の基本構成と動作
地震計の構成は、大きく分けてセンサ(オプション)とSM-27本体(処理器)に分けられます。
センサには、直流の加速度まで測定することができるサーボ式感震器を使用します。これにより、通常の地震はもとより、1〜数Hz程度の微少な低周波地震も検知することができます。
サーボ型感震器には、地表面に設置するタイプ(LS-13DY)と地中に埋設するタイプ(LS-15D)があり、設置環境に応じてその場に適したセンサを使用します(図2参照)。このセンサからの信号はディジタル信号に変換されて本体に送信されるため,外来電磁波などのノイズの影響を受けにくい信頼性の高い設計になっています。
図2 サーボ式感震器
左:地上設置型(LS-13DY) 右:ボーリング孔埋設型(LS-15D)図3にSM-27のシステムブロック図を示します。
図3 SM-27のシステムブロック図 処理器では、センサによって検出された信号を受信し、DSPによって信号処理を行い、震度などの地震動の指標となる物理量を計算します。
CPUは、DSPでの計算結果を元に、危険な揺れかどうかを判断します。もし危険な揺れと判断したときは、周辺環境での被害を防止するため、通信ポート(ポート1、ポート2)からの信号出力や、ハード的な接点の開閉によって警報を外部に出力し、地震への対応を促します。
また、そのときの地震波形などの情報をICメモリーカードに記録します。ICメモリーカードは2枚装着されており、同一のデータを記録しています。これにより、万一の事故に対してもデータの保存を確実にしています。2−2.新たに追加された機能
■ 最大6センサ接続による地震観測
免震ビルでの強震観測などにおいては、建物の屋上や底部、または地表面や地下にセンサを設置し、それぞれのポイントにおける地震動を同時に観測したいという要望があります。このような需要に対応するため,本地震計では最大6個のセンサをつなぐことが可能です。
■ 長時間にわたる振動波形の収録が可能
研究機関などでは、長時間にわたり、地表または地中における微細振動の計測を行うことがあります。
SM-27では、このような長時間にわたる振動波形データ収集のニーズにもお応えできるように、地震計測機能に加えて振動波形を記録するデータロガー機能を搭載しました。これにより、最大で17時間分の振動波形をCFカードに記録することができます。
地震計本体のタッチパネルにより、簡便な操作で記録の開始や停止の制御ができるほか、記録する時間帯を予約することもできます。このため、深夜における振動の監視を無人で行うこともできます。
■ 遠隔地点での振動の様子をリアルタイムに送信
センサが検出している現在の振動波形を1秒ごとに通信ポートから出力する機能を追加致しました。これにより、地震計を制御する監視局側では、遠隔における振動の様子をリアルタイムに受信・監視することができ、地震計システムの構築にも柔軟に対応できます。
また、データロガーを使用しているときにも有効です。
■ P波から地震の規模を推定し警報を出力
(早期警報用地震計への拡張)
鉄道会社などでは、地震による揺れをいち早く検知し、大きな揺れが来る前に電車を停止させ、最悪の事態を避けたいという強い要望があります。
このような要望を満足するため、(財)鉄道総合技術研究所と気象庁では、地震計向けの新しいアルゴリズムを共同で開発しました。
これは、地震が発生したとき、最初に地表面に到達するP波の揺れを早期に検知します。その後、検知してから約2秒間で、地震計の設置位置から震央までの距離や、地震の規模を示すマグニチュードなどを推定します。これにより、被害をもたらす大きな揺れ(S波)が来る前に、危険回避の行動を促すことができます(図4参照)。
図4 地震波伝播のイメージ SM-27では、オプション機能として、このアルゴリズムを搭載した「早期警報用地震計」として動作することができます。
早期警報用地震計は、今後、鉄道会社のほか半導体製造工場や遊園地などの公共施設においても、より早期の危険回避という面で有効に活用できると考えております。3.終わりに
強震計測装置SM-27についてご紹介させて頂きました。
最近、地震が多く発生しております。本器が、地震に対する早期の対応や被害の状況把握など、防災活動に役立てられますよう望んでおります。