2025/ 1
No.167
1. 巻頭言 2. 面ずり圧電を発現する生体高分子とその応用 3. 振動レベル計 VM-57 4. 時間の拡大装置

       <技術報告>
  振動レベル計 VM-57


リオン株式会社 環境機器事業部 音響振動計測器開発課  山 下  広 大

1.はじめに
 当社は長年にわたり振動レベル計を市場に提供している。新製品をリリースする度に市場の声や有用と思われる新技術を製品仕様に反映してきた。この度、振動レベル計VM-55 の後継機種として新しい要求に答え、従来にない機能を搭載した振動レベル計であるVM-57を開発したため、本製品の特徴等について紹介をさせていただく。

2.製品の概要
 VM-57 は図1に示すように、本体と3軸振動ピックアップのPV-83E で構成される。本機VM-57 は振動レベル計の規格であるJIS C 1510:2023 および取引証明に関する規格JIS C 1517:2014 に適合した振動レベル計である。JIS C 1510:1995 から2023 に変更するにあたり、振動レベル計に要求される周波数範囲や直線性の規格値や追加機能の変更はない。一方で従来は規格に定められていなかった電磁両立性性能に関する規定がなされており、VM-57 は自身が外来電磁波ノイズなどへの耐久性に留意された設計である。

図1 VM-57(左), PV-83E(右)

◯ 測定
 本機は3軸ピックアップPV-83E が標準付属となっ ており、XYZ の三軸の同時測定が可能である。VM-57 は人体の感覚補正がされた振動レベルLv と物理量であ る振動加速度レベルLva も同時測定可能である。瞬時 値の他、各種演算値(Leq, Lmax, Lmin, LN)も同時に測定 可能である。測定値は本体の内部メモリの他、SD カードに保存することが可能である。

◯ 機能拡張
 本機はオプションプログラムをインストールすることで様々な機能を追加することができる(図2)。
 機能拡張プログラムVX-57EX をインストールすることで、最大1000 時間の長時間収録やLAN 端子による通信を可能とする。後述のオプションプログラムをインストールするためには本プログラムが必要となる。
 波形収録プログラムVX-57WR をインストールすることで、振動データをWAVE 形式の波形収録ファイルに保存することが可能になり、PC での詳細な周波数分析などに用いる事が可能である。
 更に、1/3 オクターブ実時間分析プログラムVX-57RT をインストールすることで1/3 オクターブ分析測定機能は実行可能になり、160 Hz まで測定、本体表示、データの保存も可能となる。

図2 VX-57EX(左)、VX-57WR(中)、VX-57RT(右)

◯ 操作・表示部
 本機は3.5 インチのタッチパネル付きカラー液晶を採用し、大半の設定がタッチ操作によって実行可能である。直感的な操作が可能である他、測定に向けた設定変更の操作回数の削減等に努めた。測定開始や停止、電源オンオフといった操作ミスが発生してはならない機能は、操作者が押下したことが認識できる物理キーに割り当てを行った。

◯ AC・DC 出力
 本機は図3に示すようなI/O インターフェイス部分を有している。
 計測した値をXYZ の三軸において、同時に電気信号出力することが可能であり、交流と直流の選択とLvLva の選択が可能である。これにより後段にマルチチャネルのレベルレコーダーや周波数分析機を接続することによって収録、再分析が可能であるためサウンドレベルメーターから得られる出力と合わせて評価することで良い詳細な音振動の分析が可能である。

図3 VM-57 I/O 端子部分

◯ 電源
 現在はスマートフォンを始め、USB 端子からの給電が一般的になり、本機においてもUSB Type-C コネクタから給電を可能とした。従来機種において使用可能であったAC アダプタや単3 形電池を用いた動作は引き続き使用可能であり、状況に応じて電源を使い分けることが可能である。特に外部電源に接続ができず、AC アダプタは用いられない場合にモバイルバッテリーやUSB 出力をもつポータブル電源などと本体に挿入された単3形電池を組み合わせて使用することで1週間以上の商用電源を必要としない長時間の測定も可能である。

◯ 通信部
 本機は新たにLAN 端子を設けTCP/IP 通信が可能とした。これにより通信コマンドでの測定開始、停止の他に画面表示値や、最終演算値、瞬時値の連続取得が可能である。また、FTP サーバーを用いてSD カードに保存したデータもPC に保存することが可能である。これにより従来よりも遠隔地からの操作が可能になり、現地に赴くことなく測定からデータの回収まで実施することもできる。RS-232C 端子, USB Type-C 端子, LAN 端子といった複数の通信機能を有しており、こちらも状況に応じて通信手段を選択することが可能である。本機が直接無線通信機能はないものの、LAN端子の先に無線ルーターなどを接続することによって無線計測を実現することも可能である。

3.VC 測定
 VM-57 にVX-57RT をインストールすることで利用可能になるVC 測定機能に関して紹介する。従来の道路交通振動などを対象とした計測ではなく、精密機械などの設置環境に対しての計測に対応する機能である。VC 値はアメリカにて提案された精密機械の設置環境振動に対する許容基準であり、1 ~ 80 Hz の範囲で1/3オクターブバンドが用いられている(図4)[1]。振動値の規格付けとして大きい方からVC-A ~ E のクラス分けされている。それぞれのクラスの速度とそのクラスに関してどういった使用用途に適するかに関して示されているものである。

図4 VC 値のクラス分類

◯ VC 測定機能
 VX-57RT のインストールによって、従来は1/3 オクターブ分析を可能としていたが、今回はさらにVC 値の測定が可能になった。1/3 オクターブ分析の結果から図5にて示すように本機ではVC-E までの測定が可能であり、リアルタイムでXYZ の3軸判定が可能である。加速度に関して計測したデータを速度変換することで、速度における評価を実施している。本機で評価できる下限のVC-E の判定はほとんどの場合、達成するのが難しい基準であり想定される最も要求の厳しい高感度システムには十分であるとされており、長経路、レーザーベース、小型ターゲットシステムなど並外れた動的安定性を必要とするその他のシステムの設置環境の評価にまで対応している。

図5 X,Y,Z 軸のVC 値評価結果

4.おわりに
 VM-57 は環境改善につながる振動レベル計であり、更に利便性向上につながることを期待する新機能や従来の環境振動市場とは異なる機能を搭載したことを紹介した。販売後もフィードバックをいただきながら機能改善を実施していき、新製品開発時にはさらなる進化を遂げた製品やサービスとなるよう心がけ、社会貢献につながるように努めていく。

参考・引用文献
[1] Generic Vbration Criteria for Vibration-Sensitive Equipment, Colin G. Gordon, SPIE99

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