2016/7
No.133
1. 巻頭言 2. 誘電法による圧電率・弾性率の測定 3. カメラ 4. ローノイズマイクロホン UC-35P
 

 
  理事長就任のご挨拶


理事長  山 本  貢 平

 このたび、山下充康氏が理事長職を退任され、その後任として理事長職を拝命いたしました。その責任の重さを痛感しております。小林理学研究所は、小林采男氏の寄付により1940 年に設立されました。今年で創立76 年を迎えることになります。現在まで諸先輩のご努力で、戦前戦後を通じて困難な時代を乗り切ってまいりました。この長い歴史の間、諸先輩は一貫して創設者小林采男氏の設立の趣旨を継承し、寄付された財産をその目的実現達成のために活用してきました。小林采男氏の遺志とは何であったかというと、科学立国としての日本の発展と、人へ奉仕の精神でした。その背景には、仏教という精神界への深い造詣がありました。そして、物理学を基礎とする科学・技術の研究を通じて日本人の生活を豊かにし、仏教でいう人への奉仕を祈願したのです。したがって、小林理学研究所が社会に提供する研究成果は人への奉仕でなくてはならないのです。このような意図で設立された研究所であるので、私もその遺志を継承していきたいと思います。

 そこで、小林理学研究所に求められることを幾つか挙げてみます。第一に品格のある研究所でなければならないということです。この研究所は常に中立・公平な立場で研究活動を行い、社会から尊敬される研究所でなければなりません。第二には、優秀な研究者を育成することです。すなわち、大きなアンテナをもって世界の情報を取り入れ、他にない独創的な研究を行う研究者を養成することです。第三は、研究成果が社会の役に立ち、かつ公益に資するということです。仮に公益に資することが目に見えて無くとも、人間としての知的興味を充足させ、学問領域で意義のあるような研究成果も大切であると考えています。

 私たちが見ている世界というものは、ひと時も留まることなく変化していきます。常に不安定に揺れる綱のようでもあります。その不安定な綱の上でジャイロのようにブレることなくまっすぐ進むことが我々の使命です。強く回転するジャイロはすなわち、設立の趣旨だと考えていただければよいでしょう。設立の趣旨はブレることのない安定したものです。そのような研究所でありたいものです。

 最後に小林采男氏が、小林理学研究所の次に設立したリオン株式会社(当時は小林理研製作所)についても少し触れます。この会社にも小林采男氏の設立の思いがあります。すなわち、彼自身は実業家でもあったわけですが、仏教徒としての人への奉仕の精神は変わりません。したがって、営利企業ではあっても人への奉仕という精神は現在のリオン株式会社に引き継がれています。一般財団法人と株式会社は法律上の組織の違いはありますが、等しく創設者の遺志が引き継がれていることは忘れてはなりません。それ故に、互いになきところを補いながら協力し、遺志の実現に努めていきたいと思っています。変わらぬご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

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