2010/7
No.1091. 巻頭言 2. 強誘電ポリマーの話 3. マレット:撞木 4. 159th ASA MEETING
5. 多チャンネル分析処理器
4チャンネル分析処理器<会議報告>
159th ASA MEETING
圧電応用研究室 安 野 功 修
ASA(米国音響学会)とNOISE-CON(騒音制御) の会議が去る4月19日より23日の5日間に渡って、米国メリーランド州ボルチモア市で開かれた。今回はアイスランドの火山噴火の影響で、欧州の参加者の多くは空港閉鎖でキャンセルあるいは遅れての参加となった。ボルチモアは、米国ではもっとも歴史の古い港町で世界各国の港のモデルになっているとのことで、港周辺は観光都市として整備され、きわめて米国らしい明るい感じの町であった。
会議が開催されたMarriott Waterfront Hotel(左側)
左から筆者、Dr. Leo Beranek、Dr. Jim West私は1998年米国シアトルで135th ASAと16th ICAの合同会議があった時に「デジタル直接変換形マイクロホンの研究」発表して以来のASA参加である。その発表はJ.L.Flanagan のデジタルスピーカ研究を発展させたもので、私が実験実証研究の手法を身につけた研究テーマのひとつである。今回はInvited PaperとしてTechnical session のElectret Condenser Microphoneのセッションに参加した。NASAのDr. Allan J. ZuckerwarとDr.Qamar A. ShamsがCo-chairsで、発表の一番目はエレクトレットコンデンサマイクロホンの発明者の一人、J. E. West (Johns Hopkins Univ., MD USA) が発明の歴史について、二番目はG. M. Sessler (Tech. Univ. of Darmstadt, Germany) が Piezo-electret のCellular PPの最近の研究の概説をした。三番目が私で、SiO2を応用したエレクトレットシリコンマイクロホンの構造とその温度特性について報告し、ロバストなマイクロホンとしての新たな評価方法について提示した。セッションの聴講者は80名ぐらいで最前列にはDr. Sessler, Dr.Westと並んでDr.Leo Beranekが参加していたのには感激した。Dr. Leo Beranekは会議の途中で、感度絶対値のエピソードを特別スピーチして喝采をあびていた。
Electret condenser microphoneのセッションはEngineering Acousticsの分野に属し、
1. MEMS応用ではシリコウエハー上にアレーを構成した大音圧用途のマイクロホン
2. 多孔性高分子エレクトレットの圧電性応用によるスタック方式マイクロホン
3. アレーマイクロホンでは球面上に数十個のマイクロホン素子を配列し、比較的単純なアルゴリズムのビーム制御
4. 騒音測定への応用では地上にマイクロホンを数10個配置してビーム制御し、航空機の騒音を真下から計測して騒音源を可視化する研究等があった。会議全体として、ASAの発表は研究の概説、あるいは論文にする前段階の意見交換の場といった内容であり、論議は自由活発に行われるが発表資料、論文を公開している研究者は少なく、従来のイメージより完成度の低い発表も多い印象を持った。