2009/1
No.1031. 巻頭言 2. inter-noise 2008 3. カナダの圧電材料国際会議 4. 拍子木 柝
5. 普通騒音計 NL-27
謹んで初春のお慶びを申し上げます 平成21年元旦
理事長 山 下 充 康
新年明けましておめでとうございます。
私事を申し上げて恐縮ですが、昨年「古稀」を迎えました。中国唐代(618〜907年)の詩人杜甫が詠んだ詩「人生七十古来稀なり」から派生したのが「古稀」。孔子の論語では「七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず」と記述されています。孔子が亡くなったのは74歳ですから論語には七十歳から先は書かれていません。
古稀を記念して中高時代の同窓会が開催され、当時の悪ガキたちが集まりました。楽しい時間を過ごしたのですが残念ながら鬼籍に入ってしまった仲間も少なくありませんでした。時の流れの速さには戸惑いを感じさせられる昨今です。
昨年末には、0系新幹線が現役を離れて博物館入りをしました。「夢の超特急・ひかり号」が東京−新大阪間に運行されたのが1964年(昭和39年)10月、今から45年前のことです。新幹線の開通と同時に名古屋市内の沿線で新幹線の騒音振動に対する苦情が発生し大きな社会問題となりました。1960年代には鉄道とともに高速道路の建設も活発に進められ、ここでも沿道における環境問題、中でも騒音にかかる苦情が頻発する時期を迎えました。環境問題に対応するべく昭和42年には公害対策基本法の施行、昭和45年には公害紛争処理法が定められ、昭和46年には環境庁が誕生し、「騒音に係る環境基準についての閣議決定」が行われました。昭和44年に当時の日本道路公団からの委託研究を受けて日本音響学会が「道路交通騒音調査報告書」を取りまとめました。「好ましい生活環境の保全」を実現するべく幾多の方策が検討されております。行政でも環境庁を環境省に昇格させて環境問題に対して正面からの取り組みを試みています。環境に係る苦情の内、地方自治体等行政機関の窓口に寄せられる苦情のトップが騒音振動についてだと言われています。
小林理学研究所は、長きにわたって音響振動を中心に基礎、応用の研究を進めてまいりました。今日では音響分野の研究の中でも「騒音」に焦点を当てて、その制御と評価、計測の技術を具体的な研究テーマに上げております。「好ましい環境」を実現するために「建築材料の音響性能についての研究」、「騒音源からの音の放射を低減する方策の研究」、「音と上手に付き合うために聴覚機能維持のための研究」、「音を的確に捉えるためのセンサーと計測システムの研究」等々・・・。私どもが培ってきた音響物理の知識と技術を道具として騒音振動の制御にこれまでにも増して力強い取り組みを続けたいものです。日本を始め世界中が100年に一度あるか無いかの大嵐に翻弄されている感のある昨今です。こんな時期には慌ててはいけません。「為すべきことを為す」ことが肝要だと感じます。
将来、喜寿、傘寿、米寿、卆寿、白寿、そして百歳の百寿が待っています。何歳まで健康で過ごすことができるのか、周囲に迷惑を掛けることなく命を全うすることができるのか・・・そんなことに思いをはせる年齢になったようです。
新年のご挨拶に過去を振り返りつつ私事を申し上げて失礼しました。諸兄諸氏の益々のご多幸をお祈り申し上げます。