2009/4
No.1041. 巻頭言 2. 第13回エレクトレット国際会議 3. 木魚・魚板 4. 第33回ピエゾサロン
5. 8チャンネルデータレコーダ DA-40
現象の変化と因果律から
所 長 山 本 貢 平
米国金融会社の破綻を大きな震源として、その影響は現在も世界の社会・経済・政治に大きな変化を与えています。連鎖反応は止むところを知らず、今後もなお大きな状況の変化を生むと予想されます。そして、我々は毎年このような大きな変化に対峙していかなくてはなりません。激しい環境変化の中で、どのようにして生き抜いて行くかが我々の大きな課題です。
ところで、変化とは「ある状態が移り変る様子」のことです。この状態の移り変わりを、我々は「現象」として捉えています。現象の発生または現象の変化には、必ず何らかの原因が作用しています。そしてその原因の作用は、「次の現象変化を誘引する」という結果を生み出します。つまり、現象変化には原因と結果の関係、すなわち「因果関係」があることがわかります。一般に、物質的現象は全て原因と結果という因果律に支配されることは物理学の法則であって、それは皆さんもご承知のとおりです。物理学の研究は、物理現象における原因と結果の関係を詳しく調べて、法則性を導き出します。さらに、現象の観測によって次々に発生原因を一つ一つ手繰っていくと、結局宇宙規模のビッグバンに到達します。ただ、ビッグバンという現象を発生せしめた原因は不明なのですが・・・。
一方、一元論的立場(主客未分)に立てば、精神的現象というものも物質的現象と同様に、原因と結果という因果律に支配されることになります。これは、小林理研の創設者である小林采男氏が、若き物理の研究者たちに問いかけた研究課題の一つだったと聞いています。すなわち、精神的現象を因果律に支配される物理法則によって説明できるのか否かです。そのために、小林理研の創設当時、物理現象の研究は生命現象の研究に進んで行ったのです。ところで、一元論的世界観の中で、すべて因果律が成立すると考えるならば、我々にとっては非常にありがたいことがあります。それは、良い結果を産むためには良い原因を作ればよいということです。また、善いことをすれば、善い結果が得られることになり、これを、「善因善果」と呼びます。その逆は「悪因悪果」です。
抽象論になってしまいましたが、大きな変化にただ流されて悪事をなせば、それが原因となって必ずや悪い結果を得るに到ることになります。逆に、未来においてよい結果を望むならば、流れに対峙して怯むことなく、我々は良い原因を作る努力をするべきであるということです。そのことによって、大きな変化を乗り越えて、よりよい未来を切開けると信じています。激動の経済状況変化の中で、新たな法人制度への移行、音響学におけるイノベーションの創出など、今年も多くの課題が山積みですが、良い結果を産む原因を作って行きたいと思っています。