2007/4
No.96
1. 研究者の倫理観考 2. 4th Joint Meeting of ASA and ASJ, inter-noise 2006報告 3. 空中聴音器

4. オープン補聴器リオネットロコ

   
      <技術報告>
 オープン補聴器リオネットロコ

リオン株式会社 聴能技術部  綿 貫 敬 介

 

1.はじめに

 聞こえのご不自由な方にとって補聴器は、聞こえを改善することによりQOL(Quality of Life,生活の質)を大きく高める可能性を秘めています。しかし様々なハードルのために、いざ補聴器を購入しようとする時には必要となるにも関わらず控える方が多いのも現状です。ハードルの中で大きな割合を占める2つの要因が、「こもり感」と「見栄え」といわれています。こもり感とは耳を指で塞いだ時に感じる自分の声のこもった感じで、補聴器は通常耳せんなどで外耳道を密閉しており装用者の多くが感じる問題となっています。これらのハードルを乗り越え、さらに付加価値の高い製品を目標に、リオンでは平成19年2月にリオネットロコ(図1)を発売しました。ここでリオネットロコの特徴についてご紹介します。
図1 リオネットロコ概観図

 

2.リオネットロコの特徴

2.1 こもり感を改善
 新規設計したオープン耳せん(図2)は、大きな穴が開いているため閉塞がなく、こもり感がありません。このように閉塞をなくす補聴器のフィッティングを「オープンフィッティング」と呼んでいます。オープンフィッティングでは、外耳道内に出力された音が耳せんの穴を経由してマイクロホンに帰還するため、そのままでは、わずかな増幅でもハウリングを起こしてしまいます。このために、ハウリングの発生を抑制するハウリングキャンセラーはオープンフィッティングを可能にする重要な機能です。リオネットロコでは必要な音響利得を確保した状態で1.5 kHz〜6 kHzの範囲でハウリングの発生を抑制するハウリングキャンセラーを搭載しております。このハウリングキャンセラーにより高域の聴力レベル55 dBまでの装用を実現しています。
図2 オープン耳せん

 

 オープンフィッティングでは低域の音を自然に鼓膜に伝える事も重要です。図3はオープン・イヤー・レスポンス(耳介と外耳道による増幅効果)とオープン耳せんを装着した場合のレスポンスを表しています。補聴器が駆動しているときには、約2 kHzまでは自然音が直接入り、それ以上の帯域では補聴器による増幅された音が入るため、快適な聞こえを実現しています。
図3 鼓膜面上の音圧レベル

 

2.2 目立たず快適な装用感
 従来の耳かけ形の補聴器から大きくサイズダウンを行うとともに、軽量化(本体1.9 g)を実現しました。耳介にフィットするボディラインと極細チューブ(外径φ1.8 o)の組み合わせは従来製品にない目立ちにくさも実現しました。さらに前記のオープン耳せんにより、通気性が良く長時間装用でも快適性を確保しています。また、耳垢のつまりを防止するためオープン耳せんの音口は外耳道の向き対して直行するよう配慮しています(図2)。

2.3 こだわりのカラーバリエーション
 従来の補聴器のイメージを脱却し、外したときの楽しさを演出するため、自然な色合いのミドリをテーマカラーとして、日本人の感性にフィットするこだわりの全13色のカラーバリエーションを用意しました(図4)。さらに、エアーブラシアートデザイナー八巻昌子氏とのコラボレーションによる限定モデルを用意しました。
図4 カラーバリエーション

 

2.4 シンプルな使いやすさ
 内蔵する4メモリを使用して、環境に合わせて4種類の設定が可能です。また、4メモリを音量調整として使用することもできます。メモリの切替は本体に搭載している切替ボタンで簡単に行えます。また、電池をどちら向きに入れても正しく動作するリオン独自技術の「おまかせ回路」を搭載しております。

2.5 クローズフィッティングに対応
 オープン耳せんから従来の耳せんに付け替えるだけで、中等度難聴までカバーできる力強い補聴器に変身させることができます。そのため、購入後の聴力変動に対してもリオネットロコを使い続けることが可能です。

3 おわりに
 リオネットロコは補聴器購入の妨げとなる「こもり感」と「見栄え」の解決という明確なコンセプトを持って開発を行いました。この補聴器により、多くの方のQOLが向上することを望んで止みません。

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