2005/4
No.88
1. 深田研究室50年の歩み

2. 超音波の光学的可視化

3. 鉛蓄電池(可搬型直流電源) 4. 第24回ピエゾサロン 5. 1/2インチ エレクトレットマイクロホンUC-57
       <技術報告>
 1/2インチ エレクトレットマイクロホンUC-57

リオン株式会社 計測器技術部 池 富 雅 幸

1.はじめに
  社会が成熟するにしたがって、生活環境・作業環境を構成する機器やインフラ整備も、その重点が量から質へと移り、それにともなって「快適さ」や「静けさ」に対する要求が厳しくなってきました。そして、この要求にこたえて、家電製品・事務機器・産業機器等の静音化が進み、それらは「静寂な音環境創り」に貢献しています。
  このような状況で、「静かな騒音」、つまり、低いレベルの騒音を扱うケースが増え、より小さな音圧を計測する手段が必要とされています。
  リオンにおきましても、低音圧レベル計測用マイクロホンとしてUC-34Pを製品群に揃え、低レベル騒音の測定にご使用いただいております。
  このほど、このUC-34Pに加え、より広帯域で、より簡便な計測手段を提供するという目的で、「1/2インチ エレクトレットマイクロホンUC-57」を開発いたしました。

2.製品概要
  UC-57は、次のような特長を持つ計測用の音場型マイクロホンです。
・ 高感度
・ 低雑音
・ 1/2インチ型
・ エレクトレット型
外観・外形寸法上の特徴
  グリッドは従来のリオン製計測用マイクロホンのデザインを踏襲し(写真1)、プリアンプとの結合部も従来製品(UC-53A・UC-52)と互換性があり、1/2インチ口径のエレクトレットマイクロホン用プリアンプを、そのまま使用することが可能です。
写真1 UC-57 外観
  また、UC-57を使用して計測システムを構成した場合、騒音計の規格(JIS C 1509-1・IEC61672-1 Class2)に適合するのに十分な性能を備えております。

3.性能の詳細
公称外径:1/2インチ
  現在の計測用マイクロホンの主流である1/2インチ型のマイクロホンです。グリッド部の外径はφ13.2o、これは1/2インチ型計測用マイクロホンでの標準寸法で、通常の音響校正器を使用することができ、それによりUC-57を含む計測システムの感度校正を行うことが可能です。
バイアス電圧:0V
  エレクトレットマイクロホンですので、マイクロホンに対して外部から直流のバイアス電圧を印加する必要はありません。
  これは、このマイクロホンの大きな特長です。エレクトレットマイクロホン用のプリアンプ(1/2インチ径)をご使用ください。
周波数レスポンス:自由音場型
  通常の騒音計測に適した自由音場型の周波数レスポンスを有し、自由音場における平面進行波に対して、周波数レスポンスがほぼ平坦になるように設計されています。
周波数範囲:10Hz〜16kHz
  コンデンサ型マイクロホンの場合、使用周波数範囲の上限は、振動膜の共振周波数でほぼ決まります。共振周波数以上の周波数領域では、感度が急激に低下し、平坦な周波数レスポンスを得ることができません。UC-57は高感度化を優先した設計のため、他の1/2インチマイクロホン(UC-53Aなど)と比較すると周波数範囲が狭くなっておりますが、騒音計に使用するマイクロホンとしては十分な周波数範囲と周波数レスポンスを有しております。
感度レベル:−22dB(re 1V/Pa at 1kHz)
  リオンの計測用マイクロホンの中でも、UC-34P  (−21dB、1インチDCバイアス型)に次ぐ高感度マイクロホンです。
A特性自己雑音等価音圧レベル:12dB(カートリッジ単体)、13dB(NH-17使用時)
  このマイクロホン最大の特長です。特別な電気回路などを使用することなく、マイクロホンカートリッジの機械的な、もしくは音響的な設計だけで低雑音レベルを実現しました。また、複雑なメカニズムを用いることなく、ごくオーソドックスなアプローチで設計されており、従来製品と同等の安定性と信頼性を確保しております。
最大入力音圧レベル:132dB(全高調波ひずみ率3%以下)
  マイクロホンに入力される音圧が大きくなると、振動膜の変位が大きくなり、それがある限度を超えると出力電圧信号に歪の増大やリニアリティの劣化といった現象が現れてきます。
  UC-57は感度の高いマイクロホンで、音圧に対してとても鋭敏な動きをする振動膜を備えておりますが、 132dBまでの音圧レベルに対して、問題なく正常な電圧信号を出力します。

4.従来製品との比較
UC-52・53Aとの互換性について
  UC-57は、従来の1/2インチ エレクトレットマイクロホンUC-52・UC-53Aと互換性があり、現在ご使用の機器でそのままお使いいただけます。音響計測システムの感度・自己雑音は、マイクロホンカートリッジの感度・自己雑音でほぼ決まり、マイクロホンカートリッジをUC-57に交換するだけで、システム全体の高感度化・低雑音化が実現します。
高感度(UC-52・53Aとの比較)
  下記に示しますとおり、UC-57は従来の1/2インチ エレクトレットマイクロホンと比較して、高感度であり、UC-53Aと比較して6dB、UC-52と比較すると10dB以上も高感度(代表値での比較)になっております。
UC-52 : −33dB(代表値)
UC-53A : −28dB(代表値)
UC-57 : −22dB(代表値)
(re 1V/Pa at 1kHz)
低雑音(UC-52・53Aとの比較)
  下記に示しますとおり、UC-57は従来の1/2インチ エレクトレットマイクロホンUC-52・UC-53Aと比較して、低雑音になっております。
UC-52 : 24dB(最大値)
UC-53A : 20dB(最大値)
UC-57 : 13dB(代表値)
(A特性自己雑音等価音圧レベル、NH-17使用時)
取り扱いの簡便さ(UC-34Pとの比較)
  UC-34PはUC-57よりもさらに高感度(−21dB)・低雑音(2dB)のマイクロホンですが、通常のマイクロホンと異なり、マイクロホンカートリッジ(UC-34)を、それに特性をあわせた専用プリアンプ(NH-34)と組み合わせた状態(UC-34P)で使用する必要があります。また、このプリアンプの機能を十分に活かすためには、使用する計測アンプ・分析器などもこのUC-34Pに対応したものを使用する必要があります。
  これに対しまして、UC-57はマイクロホンカートリッジで高感度・低雑音を実現しているため、特別なプリアンプ・計測アンプ・分析器などを必要とはしません(組み合わせて使用するプリアンプ・計測アンプ・分析器などは雑音が十分低いものである必要があります)。しかも、エレクトレット型であるため、DCバイアス電圧が不要で、DCバイアス電圧を供給する機能を持たない騒音計・分析器でも使用可能です。また、周波数範囲が10Hz〜16kHzとUC-34Pに較べて広く(UC-34Pは、10Hz 〜12.5kHz)より一般的な計測に対応できるようになっております。

5.システム構成
  UC-57を使用する場合のシステム構成です(図1,2)。
図1 システム構成(計測システム)
 
図2システム構成(マイクロホン関係)
  音響校正器はNC-72・NC-74が使用可能、プリアンプはNH-17・NH-17A・NH-22が使用可能で、これらのプリアンプが接続できるすべての計測アンプ・分析器で使用できます。
  また、プリアンプだけでなく、防風スクリーン・フレキシブルロッド等も従来の1/2インチ型エレクトレットマイクロホンと共用が可能です。

6.リオン製品群のなかでの位置づけ
  UC-57の性能は、高感度・低雑音という点でUC-34Pに次ぐもので、通常の1インチ型マイクロホン(DCバイアス型、UC-27など)に近いものになっています。そのため、従来、低レベルの騒音計測で1インチ型マイクロホンが使用されていたような場面でも十分ご活用いただけます。
  以上述べてまいりましたように、UC-57は従来製品と互換性があり、簡便に低レベル騒音の計測が可能な、使い勝手のよいマイクロホンとなっております。今後、低レベルの騒音を計測する場において、皆様のお役に立つことができれば幸いに思います。

7.製品仕様

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