2015/7
No.129
1. 巻頭言 2. Wind Turbine Noise 2015 3. 旧い吸入器 4. さらに進化した高出力補聴器
   

      <技術報告>
 さらに進化した高出力補聴器 HB-G7PC/HB-G7PS/HB-G7PLハイパワーシリーズⅡ


リオン株式会社 医療機器事業部 開発部  堀 田  聡

はじめに
 様々なタイプの補聴器がある中でも高出力補聴器は、肌身離さず装用し常に音のサポートをし続け、装用してくださる方にはなくてはならない存在の補聴器のひとつであると考えています。その為には安心してご使用して頂き、常に音を届け続ける必要のある事が重要であると考えます。従来からもリオンでは高出力補聴器を販売し多くの方々にご使用頂いている中で、更に安心してご使用頂ける高出力補聴器を提供していきたいという想いからハイパワーシリーズⅡが開発されました(図1)。

 

図1 HB-G7PC/HB-G7PS/HB-G7PL ハイパワーシリーズⅡ

特徴
・従来のハイパワーシリーズ同等のゆとりのある出力/利得の実現
・強化されたハウリング抑制機能AFBCαの搭載
・騒音下でも聞き取りやすいノイズリダクション
・正面の音を聞き取りやすくする指向性
・その他デジタル機能として突発音抑制機能PNS(パルスノイズサプレッサー)音のメリハリを強調するSSS(サウンド・スペクトル・シェイピング)を搭載
・その他テレホンコイル/おまかせ回路等を搭載
・イヤホンクロス/外部入力/FMへも対応

開発背景
 開発に着手する際に約10 年前からの歴代リオン高出力補聴器からの声とお客様の声を改めて見直そうと修理状況の調査を行いました。その中でセンサー部が修理全体の約10%の故障原因となっている事が分かりました。 今回のハイパワーシリーズⅡではそのセンサー部に関して従来製品からの品質向上という点に着目しました。原因として衝撃による故障が考えられ、耐衝撃性の向上が必須であると判断し、センサーの選定から行いました。 また新しい高出力補聴器を発売する毎に品質向上の為に数々改善がなされていますが、従来のHB-G7PA / HBG7PB(ハイパワーシリーズ)から更に性能/品質の向上をはかるべく、ハウリングへの対策、ご使用時の汚れ等への対策等を、デジタル機能や、筺体へのコーティングにより更に改善を施す事を計画し設計をスタートしました。装用してくださる方々に安心してご使用いただける様に、開発時に力を注ぎ時間をかけて検証を行ってきました。
 その様な背景の元、設計に着手して従来のHB-G7PA / HB-G7PB(ハイパワーシリーズ)と外観や操作性に違いはありませんが、耐衝撃性、耐汗性の品質の向上をはかるべく、またリオンが積み上げてきた汗に強い筺体設計にプラスし、今回のHB-G7PC / HB-G7PS / HB-G7PL (ハイパワーシリーズⅡ)では更に筺体含め内部まで耐汗コートのコーティングを行う事で、外的要因の汗の侵入を軽減し、ケースの耐汗構造+耐汗コートで更に耐久性の強化を行いました(図2)。

図2 耐汗処理と耐汗コート

 

衝撃性について
 耐衝撃性に関しては自社比較となりますが従来機種と比較しても向上しています。試作時に落下試験を何度も繰り返し、何度も改善をはかり従来機種よりも約1.5倍の高さから補聴器を落下させても品質に影響がない補聴器までたどり着きました。大切にお使い頂いている中で不意に補聴器を落としてしまった場合でも、今まで以上に安心してご使用頂けるものとなっています。

ハウリングの対策について
 従来のHB-G7PA / HB-G7PB(ハイパワーシリーズ)の逆位相方式のみのハウリングキャンセラーAFBCからプレシアシリーズに搭載をしている周波数シフト方式 を加えたAFBCαを搭載する事で、従来のハイパワーシリーズのハウリングマージンを大きく上回り約15 dB から約25 dBへ約10 dBハウリング限界が向上しています。フィッティング時に今まで出力/利得をもう少し上げたかったが、ハウリングの発生により出力/利得を上げられなかった方へも希望を持って頂けるものとなっています。

出力制限処理
 マルチチャンネルの出力制限を採用する事で、出力制限の調整ポイントがより細かく調整する事が可能となっています。またチャンネル毎に制限を行う事で、過大音以外のチャンネルには影響が少なくなり、シングルチャンネルの出力制限を搭載していた世代の高出力補聴器よりも、音の損失を少なくしっかりと音を届ける事につながります。

外箱について
 外箱も従来のハイパワーシリーズから一新し、ピンクを基調とした外観へ変更しています。色の選定に際し、配色を数十パターン検討し、その中からピンクを基調とした配色を採用するに至りました。現状の耳かけ型/耳あな型/ポケット型/レディーメイド型の外箱の配色とのバランスや視認性を考慮し、リオンの高出力補聴器への安心感と、手にとって頂いた時に優しい気持ち(ほっこり感)になって頂きたいという想いからピンクをベースとした優しい配色を採用しました。販売店で初めて目の前に差し出された時に、少しでもお客様に安心して頂きたい、また販売員の方にも安心して販売して頂きたいという想いをこめた配色であり、高出力補聴器というと補聴器の中でも力強いイメージを持つ補聴器ですが、少しでもほっこりしたやさしい気持ちになって頂けたらという想いからこの配色を選定しました(図3)。

図3 外箱外観

 

おわりに
 しっかり耳に音を届け、少しでも愛着を持って装用し続けて頂き、少しでも安心してご使用頂ける補聴器となるようハイパワーシリーズⅡの開発に携わってまいりました。2015 年2月20 日に発売となりましたこのハイパワーシリーズⅡがひとつでも多く笑顔になれる音を届けてくれる補聴器となる事を願っています。
 また装用してくださる方々が笑顔になれる音を届けられる様に、これからも製品開発に尽力していく所存です。

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