2015/1
No.127
1. 巻頭言 2. inter-noise 2014 3. 顕 微 鏡 4. 4チャンネルデータレコーダ DA-21
   

      <技術報告>
 4チャンネルデータレコーダ DA-21


リオン株式会社 環境機器事業部 開発部  尾 崎 徹 哉

1. はじめに
 近年、パーソナルコンピュータ(以降PC)の処理能力の向上に伴い、データ処理の主な作業はPC上に移行 している。音響・振動の計測分野においても、レベルの 評価だけでなく、FFT 分析やオクターブバンド分析のような、より詳細な計測はPC で行うことも多くなってきている。
 屋外の計測現場では必ずしも電源が確保できないため、電池駆動でき、携帯性の良い計測器が望まれている。弊社では2005 年に携帯性を重視した4チャンネル 分の波形記録ができる4チャンネルデータレコーダDA- 20 を発売した。DA-20 は多くのお客様にご好評いただ いたが、一方でまた多くのご意見も頂戴した。
 お客様のご意見およびより広範な測定ニーズに対応するため、新たに4チャンネルデータレコーダDA-21 を 開発したのでここに紹介する。
 DA-21 は、主に可聴域の音響信号や振動をSD カード に記録する製品である。小型・軽量で、単三形乾電池で長時間の駆動が可能である。センサ駆動電源を搭載しているのでマイクロホンや振動加速度ピックアップを直結できる特徴を備えている。

2 製品の特徴
2.1 小型・軽量なコンパクトデータレコーダ
 本器は操作パネル、表示部液晶、入出力端子、収録部、 電源部から構成され、本体単独で動作させることができる。寸法は約140 mm(H) × 175 mm(W) × 45 mm(D)、 質量約450 gと小型・軽量で運搬時や計測時の負荷とならず、様々な計測現場に適している。

2.2 センサ直結
 入力端子は汎用性の高いBNC 端子である。周波数特 性はDC 〜 20 kHz、最大入力電圧は13 V であり、騒音計や振動計の交流出力に加え、風向風速計や温度計などの直流出力にも対応している。
 本器はセンサ駆動電源を搭載しているので、当社製 品を含む多くのアンプ内蔵型マイクロホン・振動ピックアップを直接接続でき、センサとデータレコーダのみのシステムで音響・振動信号の波形収録が可能である(図1)。
 またあらかじめセンサ感度を入力しておくと、後述の 当社製ソフトウェアでデータ処理をする際には、自動で縦軸を音圧や加速度の単位で表示できる。

図1 DA-21 とマイクロホン・ピックアップの接続例

2.3 記録媒体
 記録媒体にはSDカードを採用し、入力された信号波形を非圧縮のWAVE形式で記録する。最大容量は、従来製品DA-20 は2 GB であったが、DA-21 では32 GB に拡充 されている。32 GBのSDカードを使用した場合、4チャ ンネル、サンプリング周波数48 kHz、ビット長16 bit の設定で約23時間分のデータを記録することが可能である。
 また記録媒体がハードディスクやテープドライブのような回転機構を持たないため、動作は無音で温湿度環境や振動環境への耐性にも優れており、車やバイクにおける車載での走行試験などに力を発揮する。

2.4 電池駆動および電源動作範囲
 単三形アルカリ乾電池4本で約8時間(動作条件によ り異なる)動作する。またニッケル水素充電池にも対応しており、乾電池廃棄量の削減に貢献する。
 外部電源端子はDC5 V〜20 Vという広範囲な電圧入力を許容している。別売品の専用AC アダプタに加えて、DC12 Vのカーバッテリーなどから電力を供給する ことも可能である。
 連続した測定では商用電源を利用することも多いが、 その場合、停電などの電源トラブルによって収録が停止 することが懸念される。本器は停電時動作機能が装備されており、外部電源が遮断された場合でも本体内の乾電池によって収録動作が継続される。

2.5 4チャンネル + 音声メモまたは回転速度入力
 本器は4チャンネルの信号入力端子以外に音声メモ・マーカ入力端子と回転速度専用端子を備えている。従来製品DA-20では音声メモデータは4チャンネル目のファイルに記録されていたが、DA-21では音声メモデータが 4チャンネル信号ファイルとは別のファイルに記録され、4チャンネルをすべて信号記録に割り当てることができる。例えば、音1チャンネル・振動3チャンネルに加え、音声メモを同時に記録することが可能である。回転速度データも4チャンネル信号ファイルと別のファイ ルに記録される。

(ア)音声メモ・マーカ入力端子
 音声メモは、収録動作の前後、または収録中に収録状態に関するコメントなどを録音するために使用できる。マーカは、収録中で特記すべき現象が発生した場合にその時刻を記録する。マーカをつけておけばPC での後処理の際に、どの部分でイベントが発生したのか容易に検索が可能となる。

(イ)回転速度専用端子
 本器は回転速度専用端子を備えているので、モータやファンなどの回転体から周期的に取り出されるパルス信号を入力すると、本器内で回転速度信号 (r/min) に変換して記録することができる。DA-20は回転入力専用の端子を備えていなかったため、4チャンネルの入力のうちの1つを回転速度用に用いるしかなかったが、DA-21では回転信号を記録する場合でも音1チャンネル、振動3 チャンネルという計測が可能である。

2.6 ユニット間同期
 本器は携帯性を特徴としているため4チャンネルのデータレコーダであるが、2台のDA-21 を専用の同期ケーブル(別売品)で接続することで、最大8チャンネルまでサンプル同期して収録することが可能となる (図2)。

図2 DA-21 とユニット間同期ケーブルの接続例

2.7 収録波形の再生
 本器は再生機能を備えているため、現場で収録したデータを再生して、他の信号処理器(オシロスコープ、 レベルレコーダ、周波数分析器など)に入力して収録波形を観測したり、レベル化、周波数分析することが可能である。

2.8 トリガ機能
 従来製品DA-20では3つのトリガ機能 (Level Trigger、 External Trigger、External-Gate Trigger) を備えていた。 DA-21ではそれらに加えて今回Time Triggerを新たに追加した。記録開始時刻、記録停止時刻、記録時間、記録間 隔、繰り返し (Repeat) を設定することで、例えば、毎正時10 分間等のインターバル収録を行なうこともできる。

2.9 USB ストレージ対応
 本器はUSBストレージ対応しているため、USB ケー ブル(別売品)でPC に接続するとDA-21 がリムーバブルディスクとして認識される。これにより、SD カードを本体から外すことなく、PC へのデータ転送が可能となる。

 本器のシステム構成を図3に、主な仕様を表1に示す。

図3 DA-21 を用いた音響・振動システム構成

3 収録波形データの処理に利用できるソフトウェア
 DA-21 でSD カードに記録した波形データをPC で確認するため、波形処理ソフトウェアAS-70(別売品)の機能限定版であるビュアーソフトウェアAS-70 Viewer (付属品)を用意している。本ソフトウェアはWAVE ファイルの読み込み、波形表示やレベル表示、ファイル出力(WAVE 形式/CSV 形式)および再生が簡単に行なえる。もちろんユニット間同期して収録した最大8 チャンネルデータの同時表示も可能である。
 さらに別売品の波形処理ソフトウェアAS-70(図4)や CAT-WAVE では、フィルタ処理、時間率騒音レベルや等価騒音レベルなどの統計演算値の計算に加えて、より詳細な周波数分析(FFT 分析やオクターブバンド分析)を行うことができる。またAS-70はディジタルボリューム機能を備えているため、(レベルレンジが大き過ぎた場合など)記録レベルが小さく、再生音が聴き取れない場合でも、レベルを増幅して確認することができる。
 従来製品DA-20ではDA-20PA1 というソフトウェアを提供していたが、AS-70は複数のファイルを同時に処理することができるようになり、また処理速度もDA- 20PA1 より大幅に向上しているので、PC での後処理の負荷を軽減できる。

図4 波形処理ソフトウェアAS-70 表示画面例

4 おわりに
 新規に開発した4チャンネルデータレコーダDA-21 について紹介した。DA-21は音響・振動計測の様々な測定現場で活用いただける製品となっており、またAS-70 と組み合わせることでPC でのデータ処理が、より簡便に、より適確に、より効率的に行なうことができる。
 これからもお客様の声を大切にし、より良い製品開発に努力していきたい。

表1 主な仕様

入力端子
信号入力用BNC (4 ch)
回転速度 (1 ch)、音声メモ (1 ch)、他
センサ駆動電源
(CCLD)
2 mA、24 V   
出力端子
再生出力用φ 2.5 (4 ch)、モニタ出力(1 ch)
入力電圧レンジ
0.01 V 〜 10 V
(10 dB ステップ7 段階)
周波数特性
DC 〜 20 kHz
S/N 比
80 dB 以上
量子化ビット数
16 bit または24 bit
チャンネル間位相差
1度以内
(AC 結合、HPF OFF、同一レンジ、20 kHz レンジ時)
記録媒体
SD カード、SDHC カード(最大容量32 GB)
周波数レンジ 100 Hz、500 Hz、1 kHz、
5 kHz、10 kHz、20 kHz
プリ収録 最大5秒間
ユニット間同期 2台(最大8チャンネル)までのサンプル同期が可能
電池寿命 約8時間(条件により異なる)
大きさ・質量 約140 mm(H) × 175 mm(W) × 45 mm(D)
質量約450 g(電池含まず)
付属ソフトウェア
ビュアーソフトウェアAS-70 Viewer

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