2008/4
No.100
1. 巻頭言 2. エレクトレットコンデンサマイクロホンのロバスト化 3. 製図器械

4. 多チャンネル騒音振動計測システム

   
 
 <技術報告>
     多チャンネル騒音振動計測システム

       UN-14 / UV-15 / UV-16 / UV-22 / BP-17

リオン株式会社 計測器技術部  蓮 見 敏 之

1. はじめに
 弊社では、騒音・振動の多チャンネル計測器としてUV/UNシリーズと呼ばれるUN-04A、UV-05A、UV-06A、UV-12A、BP-07を販売し、幅広い分野でご使用いただいている。例えば、自動車産業、鉄道、家電、大型機器、発電所などの製品開発や性能評価、現場環境などにおける騒音、振動計測である。
 このたび、これらUV/UNシリーズの後継機として、5機種の新UV/UNシリーズを開発した。その特長や製品概要について報告する。
図1 左からUV-22、UN-14(2台)、UV-15(2台)

 

2. システム構成
 本シリーズは5機種のユニットにより構成される。
@ 騒音計ユニットUN-14
 

 さまざまな計測用マイクロホン・プリアンプ接続に対応した1チャンネル音響計測用ユニット

A 振動計ユニットUV-15
 

 さまざまな加速度ピックアップ接続に対応した1チャンネル振動計測用ユニット

B 2チャンネルチャージアンプUV-16
 

 さまざまな加速度ピックアップ接続に対応した2チャンネル振動計測用アンプ

C インタフェースユニットUV-22
 

 UV-15、UN-14専用のUSB、Ethernet通信可能なインタフェースユニット

D バッテリーユニットBP-17
   UN-14、UV-15、UV-16専用のバッテリーユニット

3. 任意の多チャンネル構成が可能
 新UV / UNシリーズは、1台1台がユニット構成になっており、連結可能な構造となっている。任意のユニット台数(最大16台まで)が連結可能であるため、必要なチャンネル数分のシステム構築ができる。また、UN-14、UV-15、UV-16を混在して連結することも可能であるため、簡便に多チャンネル騒音振動測定システムを構成することが可能である。
図2 左からUV-16(3台)、BP-17(1台)

 

4. 各種のセンサ接続に対応
 UN-14ではさまざまな計測用プリアンプ、マイクロホン接続に対応している。従来機種を踏襲した7ピンコネクタ(マイクロホンバイアスDC 200 V、60 V、30 V内蔵)に加え、CCLDタイプのプリアンプも接続可能なBNC入力コネクタ(センサ駆動電圧+24 V、駆動電流4 mA)も有しており、幅広い感度設定(−10 dB/Pa 〜−59.9 dB/Pa)を持つことから、弊社のマイクロホンから他社のマイクロホンまで多種類のセンサ接続が可能である。

 UV-15、UV-16にはチャージアンプを搭載しており、CCLDタイプの加速度ピックアップも接続可能である。CCLDの駆動電源電圧、駆動電流については、他社センサの接続も可能な+24 V、4 mAとした。

 また、最大の特徴として、UN-14、UV-15はTEDS方式のセンサ接続に対応している。TEDSは、IEEE 1451で規定されるプラグ・アンド・プレイが可能なセンサの通信方式で、センサ感度を自動認識するため、計測現場において多チャンネル接続時の感度設定などのセットアップ時間の短縮や、センサ誤接続防止に大きな効果を生む。
図3 背面 左からUV-16、UV-15、UN-14、UV-22

 

5. ディジタル処理の採用
 UN-14、UV-15ではDSPを用いてセンサ信号をディジタル処理している。ディジタル処理により、感度設定誤差や、フィルタ特性差、多チャンネル時の同一機器間における特性差を小さくし、温湿度などの環境の変化に対する高安定性を実現している。

6. EMC性能の向上
 EU圏内では、機器が他に電磁干渉を与えないこと(エミッション)、さらに機器が他からの電磁干渉の影響を受けないこと(イミュニティ)を性能規定したEMC指令が定められている。新UV/UNシリーズは、全機種においてEMC指令に基づいたEN 61326の試験に合格したCEマーキング対応の計測器である。

7. 液晶の採用
 新UV/UNシリーズでは、各種設定や瞬時値が直読できるよう専用のセグメントタイプ液晶を搭載した。本液晶は、−10 ℃から+50 ℃までの環境下において良好な視認性を保ち、設定条件やバーグラフ、測定値の常時表示を行っている(測定値表示はUN-14、UV-15に対応)。多チャンネル計測においては、バーグラフの動きを比較することが多いため、バーグラフ表示を最大限大きくし、配置についても配慮した。また、ACアダプタ動作では、液晶バックライトは常時点灯にした。

8. 現場計測を考慮した構造
 新UV/UNシリーズは、さまざまな環境下での使用を想定している。実験室などでのラック設置に対応するため専用ラックCF-27を用意し、電源のとれない計測現場に対応するため専用バッテリーユニットBP-17を同時開発した。従来機に対して連結時の強度を保ちつつ約200 g(約30%)の軽量化を実現し、本体正面もしくは上面からでも識別可能な過負荷表示器(Over LED)を搭載した。
図4 過負荷表示器点灯状態(Over LED)

 

9. ネットワーク計測への対応
 UN-14、UV-15には、インタフェースユニットUV-22の連結が可能である。UV-22は、USBおよびEthernetの2種類のインタフェースを有し、コンピュータからのコマンドにより、最大16台までのUN-14やUV-15の設定制御、測定値の取り込みが可能である。そのため、計測現場にPCを設置できる環境ではUSBを用い、LANに対応した実験室や工場などではEthernetを用いるなど、それぞれの現場に対応した計測システムを構築することが可能である。なお、簡易的なアプリケーションソフトウェアをUV-22に付属しており、インストール後すぐにPCからの設定制御、測定値の表示を行うことが出来る。
図5 Ethernetを使用した測定例

 

10. 任意のフィルタ設定が可能
 UN-14、UV-15では、UV-22を接続することによりユーザフィルタ機能(任意のフィルタを設定する機能)を用いることができる。ユーザフィルタ機能は、1/3オクターブバンドステップのカットオフ周波数で、任意のハイパスフィルタ、ローパスフィルタを設定できる機能であり、測定対象に限定した周波数帯域での計測が可能である。

11. 従来機種との互換性
 新UV/UNシリーズは、従来機種UN-04A、UV-05A、UV-06Aの後継として、周波数特性、フィルタ周波数特性、交流出力や直流出力の出力電圧を踏襲している。

12. おわりに
 新UV/UNシリーズについて製品紹介をさせていただいた。新UV/UNシリーズは、さまざまなセンサ接続が可能であり、多チャンネル構築ができ、実験室や現場計測に広く対応するユニット型計測器である。多方面で騒音振動計測に利用され、皆様の計測に役立つことを願っている。

 

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