2008/1
No.99
1. 巻頭言 2. ICA 2007 3. 超大型低音用ハーモニカ 4. 第30回ピエゾサロン
  5. 環境騒音観測装置 NA-37
 
 武士道、葉隠れ、裏勝り

理 事 長  山 下 充 康

 明けましておめでとうございます。小林理学研究所が財団法人として文部省から認可されたのは昭和15年(西暦1940年)夏(8月24日)。68回目の初春を迎えました。68年・・・長い歴史を感じます。

 設立当時の小林理学研究所寄付行為の総則第一条「本所ハ財団法人小林理学研究所ト称ス」に続く第二条で、「本所ハ理学及其ノ応用ヲ研究シ公益ニ資スルヲ以ッテ目的トス」とあり、これは基本的に現在の寄付行為と変わるものではありません。設立以来、培われ、育まれてきた「理学及びその応用に係る研究」の精神は今日の我々の研究活動を支える堅牢な礎であり、これが小林理学研究所に特有の活気に満ちた研究の場を形成している大きな要因となって居ります。物資欠乏の戦時中や日本国の基盤が壊れた敗戦の混乱期を乗り越えてきた先輩たちの根性があればこそ今日の小林理学研究所が存続していると感じております。

 今、日本はこれまでに体験したことの無い大きな変革の時期を迎えています。研究所を取りまく様々な環境要素は激変の様相を呈しております。さらに外的環境要素の変化に加えて、現在、研究活動を中心的に支えている指導的役割の職員たちが団塊の世代であるが故に迎えねばならない「定年退職」が大きな難問を投げかけております。内外に山積する難題に対して私どもは具体的な解決策を講じなければなりません。

 これらの課題は暴風雨をともなった荒波であり、私たちはこの荒波に打ち克って沈没、難破を避けて航海を続けなければなりません。そのための方策を一心に模索しております。ヒントとなる材料を探して日本国がこれまでに辿った歴史を振り返ってみました。そして強い手がかりとなる言葉に出会いました。それは「武士道」「葉隠れ」「裏勝り」の三語でした。新年のご挨拶に換えてここに紹介させて頂きます。

 徳川300年は世界に例を見ない日本国独自の長期安定政治の布かれた時代でありました。その後明治時代を迎えて急速な文明開化、世界主要国への仲間入り、不合理な戦争、終戦による混乱などが続きましたが、常に日本国を根底から支えていたのは日本人の心に根付いている「武士道」の精神ではなかったでしょうか。荒波の中でも慌てないこと、背筋を伸ばして己の使命をしっかり見据えること。これこそ私どもが今とらねばならない基本姿勢、「武士道」ではないでしょうか。そして近視眼的な対応をしないこと。これがいわゆる「葉隠れ」の精神です。

 表面的に平静を装うだけでは物事の解決にはなりません。「能ある鷹は・・」ではありませんが顔には出さずとも心に抱く珠は磨き続けなければなりません。これが「裏勝り」の文化です。

 日本国が幾多の荒波を乗り越えてきたのには日本人の心の底に流れ続けているこの三語にこめられた根性があったのではないかと感じております。新年を迎えるにあたって、自分の心の整理をかねたご挨拶をさせて頂きました。

−先頭へ戻る−