2022/4
No.156
1. 巻頭言 2. コロナ照射法を用いたオキシ水酸アパタイトの電荷蓄積 3. ISO/IEC 17025 認定校正について
 

     <技術報告>
 ISO/IEC 17025 認定校正について

リオンサービスセンター株式会社 環境機器チーム  仁 科   道
リオン株式会社 品質保証課  下 坂 竜 也

1.はじめに
 リオンサービスセンター株式会社は2021 年12 月3 日に「試験所が正確な結果を出す能力」に関する国際規格であるISO/IEC 17025 をサウンドレベルメータ(騒音計)及び音響校正器のメーカーの校正事業者として国内で初めて認定された[1]。リオン及びリオンサービスセンターは、サウンドレベルメータの自由音場レスポンスレベル及び音響校正器の音圧レベルに関するJCSS 校正サービスを実施しているが、今回の認定により、サウンドレベルメータ及び音響校正器の各IEC 規格規定の定期試験に従う認定校正が実施可能となった。本稿では、ISO/IEC 17025認定プログラム、及び認定業務について紹介する。

2.ISO/IEC 17025 認定プログラム
 ISO/IEC 17025は製品検査や分析、測定などを行う試験所、及び計測機器の校正業務を行う校正機関に対する一般要求事項が定められた国際規格であり、高い信頼性を有すことを第三者認定機関が認定する際に用いられる。公平性、機密保持、組織構成、資源(要員、設備、計量トレーサビリティ)、プロセス(レビュー、検証及び妥当性確認、測定不確かさの評価、データの管理)など、運用の的確性と試験、校正能力が求められる。
 認定を受けた機関は、製品管理や品質管理を行う上でのマネジメント力と、信頼性のある試験及び校正結果を生み出す技術力が国際的に認められたことになり、それら結果を記した書類に認定シンボルを付した書類が発行可能となる。
 現在、サウンドレベルメータをはじめとした音響計測器の認定を受けた試験所及び校正機関での校正、試験の要望が世界的に高まっていることから、認定機関である NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)の ASNITE(製品評価技術基盤機構認定制度)に申請し、ASNITE 認定事業者としてISO/IEC 17025 認定校正を実施可能とした(図1)。
 同認定機関のJCSS(計量法校正事業者登録制度)にて、リオン及びリオンサービスセンターではサウンドレベルメータの自由音場レスポンスレベル、音響校正器の音圧レベルについて認定を取得しているが、サウンドレベルメータの定期試験JIS C 1509-3:2019(IEC 61672- 3:2013)、音響校正器の定期試験JIS C 1515:2020(IEC 60942:2017)はJCSS認定範囲だけでは対応できない。そのため、JCSS では対応できない分野を主な認定対象としたASNITEの認定プログラムを利用した。JCSS同様、校正事業者の認定基準はISO/IEC 17025であり、認定されると、国際的に受入可能な国際MRA対応のISO/IEC 17025 認定校正証明書の発行が可能となる。

図1 ISO/IEC 17025 認定証

3.認定業務
 リオンサービスでセンターではISO/IEC 17025の認定を取得したことにより、サウンドレベルメータ及び音響校正器の各IEC 規格の定期試験で要求されるすべての項目について、ISO/IEC 17025認定校正が提供できるようになった。認定の校正範囲と校正測定能力(拡張不確かさ)を表1と表2に示すので、参照されたい。

表1 サウンドレベルメータの校正範囲と校正測定能力
表2 音響校正器の校正範囲と校正測定能力

3.1 サウンドレベルメータ
 サウンドレベルメータの定期試験として規定される JIS C 1509-3:2019(IEC 61672-3:2013)は、試験もしくは校正に責を負う試験機関で一貫した方法で試験を実施されることを目的とした規格である。
 試験項目は表1に示すとおり、試験は音響試験(12項)と電気試験(13 項〜 21 項)に分けられる。リオンサービスセンターでは校正システムを利用し、音響試験、電気試験、文書化の一連の作業が完了できるようになっている。
 音響試験「周波数重み付け特性の音響信号による試験」は、サウンドレベルメータにそれぞれ125 Hz、1000 Hz、 8000 Hzの基準音圧レベルの音響信号を加えたときの指示値を測定する。本試験は比較カプラ法を採用し、図2のように音源を内蔵した音響カプラにサウンドレベルメータを結合し、カプラ内に一定の音圧音場を作成し測定を行う。
 電気試験は、サウンドレベルメータからマイクロホンを取り外し、そのマイクロホンの型式と静電容量が等価なダミーマイクロホンを取り付け、そこから各試験で定められた電気試験信号(信号レベル、周波数、波形)を入力し、試験する。
 試験結果の合否判定は、JIS C 1509-1:2017(IEC 61672-1:2013)規定の受容限度値を超えず、かつ該当する測定の不確かさが最大許容値を超えない場合に合格と判定する。

図2 比較カプラによるサウンドレベルメータの音響試験

3.2 音響校正器
 音響校正器の定期試験として規定されるJIS C 1515: 2020 附属書B(IEC 60942:2017 Annex B)は、サウンドレベルメータの規格同様、試験もしくは校正に責を負う試験機関で一貫した方法で試験を実施されることを目的とした規格であり、その試験項目は、表2に示すとおりである。
 B.4.6 項の音圧レベルの試験は、マイクロホン法を採用し、IEC 61094-1:2000に規定する標準マイクロホンを用いる。図3に示すように音響校正器と標準マイクロホンを結合し、音響校正器の発生音圧をマイクロホン、プリアンプ、メジャリングアンプを経てデジタルマルチメータで読取る。20秒間の平均値を測定後、マイクロホンを取り外す。結合及び取り外しを反復2回行い、各結合でマイクロホンを軸周りに120度ずつ回転させ計3回測定し、平均値を算出する。
 B.4.7 項の周波数、B.4.8 項の全ひずみ及び雑音は、メジャリングアンプ後段のデジタルマルチメータ、オーディオアナライザにて20秒間の平均値を測定し算出する。
 試験結果の合否判定は、JIS C 1515:2020(IEC 60942: 2017)規定の受容限度値を超えず、かつ該当する測定の不確かさが最大許容値を超えない場合に合格と判定する。

図3 標準マイクロホンによる音響校正器の試験

4.おわりに
 サウンドレベルメータ及び音響校正器の各IEC 規格規定の定期試験を認定範囲とした、ISO/IEC 17025認定 校正について紹介をした。
 試験結果に信頼性を与え、世界的に高まる音響計測器の認定校正要望に応えることができた。
 ユーザーにとっては、定期試験に合格と判定されたサウンドレベルメータ、音響校正器を使用することで、測定したデータの信頼性が確保され、品質を国際的に保証することができる。
 リオンサービスセンターは今後もより高品質な校正、サービスの提供をしていく所存である。

【引用文献】
[1] リオンHP:リオンサービスセンター株式会社がISO/IEC 17025認定を取得, 2021 年12 月10 日

 

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