2021/ 1
No.151
1. 巻頭言 2. 残響室内の温度勾配と残響時間の関係について 3. 損失係数測定システム AS-14PA5  
   

 
  新型コロナウィルスの副作用  


  理 事 長  山 本  貢 平

 新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。つい一年前、年明け早々に「原因不明の感染症が中国で発生」との報道があり、その感染症は瞬く間に我が国はもちろん世界各地に飛び火しました。WHOによりCOVID-19と命名された新型コロナウィルスによる感染症(重症急性呼吸器症候群)は感染力が強く、発症した場合は重篤な状態に陥るリスクが高いとされています。それゆえ、我が国では入院勧告の対象となる感染症2類相当に指定されました。この未知のウィルスに対するワクチンや感染者への治療薬が未開発であったため、感染拡大防止策として、国境や都市を越えた人の移動制限や外出自粛が実施されました。さらに加えて、多くの人が集まる催し物や会合も全て中止にされたのでした。これに伴う社会経済面の損失は甚大といわれています。

 まさか私たち人類が、目に見えない極微小ウィルスごときものに対してこのように脆弱であり、これだけ脅威を与えられるとは思いもしませんでした。そういえば、SF 映画「猿の惑星」は、ウィルスに攻撃を受けた人類が絶滅に瀕している未来世界が舞台であったことを思い出しました。それはネガティブな作り話ですが、現実には人間活動が抑制されることにより、社会経済面が悪影響を受ける一方、環境面には逆に良い効果が表れたとする報告もあります。世界的な観光地ベネチアの運河が、観光客の激減によって澄んで綺麗になったという報道もありました。また、昨年4月の緊急事態宣言後に、わが国の大気汚染が有意に減少したとの報告もあります(環境省中環審報告)。騒音については国からの正式な発表はありません。しかし、国際航空便が著しく減少したことは事実であり、空港周辺では航空機騒音が確実に下がったと推定されます。移動・外出の制限による社会経済活動の抑制という社会実験は、地球規模で大気・水質・騒音といった環境要素に良い影響を与えるという副作用があることがわかりました。

 環境面だけではなく、新型コロナは私たちの生活や仕事の方法にも大きな影響を与えました。人の外出に制限が求められたことにより、テレワークが主流となる会社も増えました。また、多くの会議も Web を使ったオンライン会議に切り替わりました。学協会の研究発表会や講演会などの催し物も、Web開催に変更となりました。国際会議でさえ時差を超えてネット上で行われています。Web会議は意外と使えるなという印象です。これなら、PC の前で大きなクシャミをしても、モニタの向こうに飛沫感染は及ばず、COVID-19の拡大を防止することができるでしょう。

 新型コロナウィルスの感染拡大のおかげで、私たちの仕事や会議の場は、ネット上の仮想空間に移りつつあります。日本列島の各都市のみならず、世界各国にパスポートを持って出かけなくとも、居ながらにして人々と対面で共に仕事ができるのは大変便利です。ただし、Web会議では特定の人との雑談が出来ないことや、現地の名物料理を味わえないのは極めて残念です。年頭より予防ワクチンと治療薬が安全に利用できる日を待ち遠しく思っています。

 

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