2020/10
No.150
1. 巻頭言 2. inter-noise 2020 3. 深紫外線照射技術を採用した生物粒子計数システム  
   

 
  創立 80周年にあたって  


  監 事  山 田  一 郎

 小林理学研究所はこの8月に創立80 周年を迎えた。太平洋戦争勃発の直前1940 年8月に設立されたので、2000 年 に60 周年、オリンピックの開催のはずだった本年に80 周年を迎えたということだ。理学の基礎及び応用の研究による社会貢献を基本理念として物理学の様々な分野の基礎研究に始まり、騒音振動・建築音響・圧電材料・聴能などの分野の応用研究に重点を移して実績を積み重ねてきた研究所にまずもって心から敬意を表し、お祝いを申し上げたい。

 小林理学研究所が発行する小林理研ニュースは、創立43 周年の1983 年に創刊され、年4回発行されている。今回で150号となり、節目の年毎に研究活動を回顧する記事が書かれ、創立時からの様子を知ることができる。たとえば、 50 周年の1990 年4月号に「創立50 周年を迎えて」と題する巻頭言があり、設立の経緯や創立時点の基礎研究の様子、 四半世紀経過して音響学を中心とした応用研究へと移行していったことが分かる。60周年の2000年の各号にも創立以来の研究活動の雰囲気が分かる記事が書かれている。新たなミレニアムを迎えて60周年を記念する建築音響試験棟の建設が計画され、2年後2002年の4月号に記念施設完成の記事がある。新たな研究展開を図るための構想を練った一環だと書いてある。70 周年の2010 年1月号には「Change!!」の巻頭言があり、エレクトロニクスの発達、普及がそれまでの研究手法をアンティークにしてしまい、音響の研究にも変革の大波が押し寄せている、小林理研の果たして来た役割を振り返り将来への展望を考えたいとChange!を表明している。75周年の2015年1月号には「2年前の法改正により一般財団法人に改めた、風格と活力を感じさせる研究所として益々の発展を目指したい」と書かれ、4月号に「創立者は技術力を発展させて日本の国力を増すために基礎科学を充実したいと考えその礎となる物理学の研究所を設立した。音と闘い続ける小林理研であるが時代と社会が必要とする限り存続の意味がある。」と書かれている。

 さて、このような流れのなかで80周年を迎える予定であったが、コロナパンデミックで状況は一変した。パンデミックは全てを圧倒し、人と社会の交流や交通、経済が停滞してオリンピックも延期になった。しかし、それでビデオ会議が当たり前になり、テレワークも身近なものになった。会社に行かなくても仕事はできると常識が激変している。そうした変化が小林理研の活動にどんなインパクトをもたらすか。世はクラウドファンディングの時代でもある。常識を飛び超える発想で魅力的な研究や開発の提案を作り、上手に情報発信すれば賛同を得て実現することも可能になっている。研究の場や研究仲間が広がり、研究を加速できるかもしれない。パンデミックが社会に及ぼす衝撃は今も進行中で先が見通せない中で、小林理研は創立百周年に向けて残り20年間の研究活動を続けていくことになる。小林理研には創立以来積み重ねてきた知の蓄積がある。それを基盤に据え、時代の要請に耳を澄ませて活動を進めて欲しい。小林理学研究所のますますの発展と活躍を祈念しつつ、筆をおくことにする。

 

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