2013/7
No.1211. 巻頭言 2. 航空機地上騒音の測定事例と気象条件による変化 3. 雲形定規 4. 環境計測データ管理ソフトウェアAS-60TR
<技術報告>
環境計測データ管理ソフトウェアAS-60TR
(航空機、在来線鉄道、新幹線鉄道)リオン株式会社 環境機器事業部 開発部 廻 田 恵 司
はじめに
平成25年4月1日から一部改正された「航空機騒音に係る環境基準」が施行されている。評価指標がWECPNLからLdenに変わり、測定方法も従来から変わっている。詳細な測定方法は「航空機騒音測定・評価マニュアル」[1]に書かれている。
今回は、測定マニュアル内の有人測定でのデータ処理を行うためのソフトウェアを開発したのでここに紹介する。
図1 AS-60TRの画面例(レベル変動グラフ)概要
AS-60TRは、環境計測データ管理ソフトウェアAS-60の使い勝手をそのままに、航空機騒音の有人測定、在来線鉄道、新幹線鉄道の測定後のデータ処理を容易に行うことができるように機能追加を行ったPC用のソフトウェアである。航空機騒音測定
航空機騒音の評価指標はLdenとなり、単発騒音の基礎測定 は航空機騒音の最大騒音レベルから -10 dBを越える区間のLAEとなった。前記マニュアルで新たに定義された準定常騒音は、暗騒音レベルから10 dB以上大きい区間を測定対象とするLAEとなっている。また、レベルレコーダから最大騒音レベル等を読み取ってはならないと測定マニュアルに記載がある。従来の評価指針WECPNLの時のように最大騒音レベルだけを読み取るように容易ではなくなった。イベント区間の検出
AS-60TRで騒音データを処理するには、騒音計NL-42 /52 /62などを用いたAUTO測定結果と測定現場で飛行状況などを記録した野帳が必要である。まず、単発騒音イベントの処理方法を説明する。NLシリーズでの測定結 をAS-60TRに読込ませると、レベル変動グラフを表示することができる。航空機騒音を測定する際には、周波数重み付け特性Aかつ時間重み特性はS(slow)に設定する必要がある。野帳を見ながら航空機騒音が観測されている時間帯の該当するレベル変動を探し、CTRLキーを押しながら左クリックすると、自動的に近傍と最大騒音レベルを自動的に検索し、最大騒音レベル -10 dBを越える区間のLAEを自動的に算出する。この機能によって野帳とレベル変動グラフを見ながら、評価すべき騒音事象であるかを確認して、LAEを算出することができる。当然ながら実音を再生しながら音源が何かを確認することも可能である。
図2 精密騒音計NL-52
また、騒音計で記録した複数のマーカーからまとめてイベント検出することも可能である。それぞれのマーカー区間から最大騒音レベルを検出し、イベント区間の検出を行いLAEまで自動的に算出される。この方法で、離陸音、着陸音、ランナップ音などの単発騒音イベントを処理することが可能である。
準定常騒音イベントは、マウスをドラッグ&ドロップすることで登録することが可能である。本ソフトウェアでは、現地測定を行った際の野帳の情報とレベル変動グラフを参照して準定常騒音イベント区間を判断することとなる。イベント一覧および評価指標
前述のどのイベント検出・登録方法を用いても、イベント一覧が表示され、各イベントの値を確認したり、イベント区間の実音を再生したりすることが可能である。イベント一覧画 で出力ボタンをクリックすることで、イベント一覧(騒音発生日時、継続時間など)と日毎に算出されたLdenが記載されたエクセルファイルが出力される。エクセルファイルには、LAEからLdenを算出する式が記載されているため、最終的な評価値は1 dB単位であるが、途中の0.1 dBの桁の数値も把握できる。在来線鉄道騒音
本ソフトウェアは、航空機騒音以外に在来線鉄道騒音のデータ解析にも対応している。在来線鉄道騒音の測定値は昼間等価騒音レベルLAeq,d、夜間等価騒音レベルLAeq,nである。基礎測定 はそれぞれの鉄道通過時のLAEである。時間帯は昼間が7時〜22時、夜間が22時〜7時である。測定方法の詳細は、「在来鉄道騒音測定マニュアル」[2]を参照されたい。イベント区間の検出
イベントの検出方法は基本的に航空機と同じであり、グラフ上でマウスを操作することでイベント検出するか、マーカー区間から自動的にイベント検出することができる。測定は、原則として1日のうちに運行されているすべての対象列車について行うため、過密路線では多くのデータを処理することになる。現地測定時に、列車通過中はその区間にマーカーを記録しておき、イベント検出処理は効率的に行うべきである。このとき単発騒音暴露レベルの算出方法は、測定マニュアルで示されている「(1)騒音計のディジタルメモリ機能を利用する方法」(最大騒音レベルから10 dB 低いレベルを上回る時間について、騒音レベルのサンプル値をエネルギー加算)を採用している。
現地測定時、上り、下りの区別をマーカー1、マーカー2としてそれぞれ割り当てて記録しておくと、マーカーからイベント検出を自動的に行う際に、上り下りを割り当ててイベントに登録される。イベント一覧および測定値
イベント検出・登録を行うと、イベント一覧画 が表示されるので、イベント一覧と測定値をエクセルファイルとして出力することができる。イベント一覧には、騒音発生日時、LAE、LASmax、上り下り情報などが含まれており、測定値の昼間および夜間等価騒音レベルは自動的に計算される。
在来線鉄道騒音は、全イベント一覧がワークシートに記載されるので、各路線や上り下りに測定値を算出するためには、別途用意された計算シートに必要なイベントのみをコピーして自動計算させることとなる。
予め上り下りを割り当てられたイベントは、エクセルファイル上で、それぞれを分けて評価する際にエクセルのフィルタ機能を用いる。新幹線鉄道騒音
新幹線鉄道騒音は、連続した20件の列車通過時の基礎測定 LASmax測定する必要がある。このうち上 半数のLASmaxのパワー平均値が評価指標[3]である。
イベントの検出から出力までは在来線鉄道騒音と同様に行うことができる。イベント一覧から上 10件のLASmaxを選択して、パワー平均を算出することが容易である。
図3 AS-60TRの画面例(イベント一覧)最後に
本製品を用いることで測定・分析業務が円滑に行われ、作業軽減に繋がれば幸いである。なお、本ソフトウェアが対応している騒音計はNA-28、NL-42/ 52/ 62、NL-32/ 31/ 22/ 21である。合わせてご利用頂きたい。
参考文献 [1] 環境省、「航空機騒音測定・評価マニュアル」平成24年11月 [2] 環境省、「在来鉄道騒音測定マニュアル」平成22年5月 [3] 環境省、「新幹線鉄道騒音測定・評価マニュアル」平成22年5月