2019/1
No.143
1. 巻頭言 2. inter-noise 2018 3. 聴覚検査結果支援システム メディレポ  
   

 
  三種の神器と電気   2019 年 元旦


  理事長  山 本  貢 平

 明けましておめでとうございます。今年は「平成」から新しい年号に変わり、新たな天皇の時代を迎える出発点にあたります。昭和から平成に生きてきた人間にとっては、3つ目の時代を迎えることに大変感慨深いものがあります。 振り返れば、私の知る昭和すなわち1950 年以降には、「高度成長期」と呼ばれる活気に満ちた時期がありました。その原動力は私たちの親のジェネレーションが担い、私たち子供は高度成長の目撃者であり体験者だったのです。この時代、人々は便利で質の高い生活を求めました。昭和を代表することばに「三種の神器」があります。誰もが憧れて欲しいと思ったモノです。三種の神器とは白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫を指します。共通しているのは、これらが電気製品であるということです。電気というエネルギーが、我々の生活を便利で楽しいものにしてくれた始まりでもあります。この後、新たな電化製品が日常生活にあふれ、今やオール電化の時代を迎えることになりました。

 ここで、我が国の電気使用量の推移を調べてみましょう。資源エネルギー庁のエネルギー白書(2018年版)には、電力の「発受電電力量」(供給量・使用量)の変遷が記録されています。記録が始まった1952 年の434 億kWh を基準にすると、電力量は毎年急激な増加を続け、68 年後の2010 年には26.5 倍の11,494 億kWh に達しました。しかし、2011 年の原子力発電所の事故以後は少し減少し、2016 年には1952 年の24倍で推移しています。興味深いのは原子力の占める割合の急降下です。発電量は事故前の2010 年の25.1 % から、事故後の2012 年には1.5 % へと激減しました。この穴を埋めたのが火力発電です。2016 年の統計では火力(石炭、LNG、石油)が83.8 %、水力を含む再生可能エネルギーが14.5 %、原子力は1.7 % となっています。同じ2016 年の再生可能エネルギー発電量は、水力が7.6 %、バイオマスが1.9 %、地熱が0.2 %、風力が0.5 %、太陽光が4.4 %(以上、NPO法人環境エネルギー政策研究所資料)とされています。

 現代の三種の神器を動かす電気は、大半が火力発電で賄われていることがわかります。つまり、私たちは便利な生活と引き換えに大量の炭酸ガスを放出し、一方で、世界的な気象変動に伴う自然災害の恐怖に震えているのです。私たちが現代の便利で安全・安心な電化社会を持続させたいと思えば、炭酸ガスを発生させない電気を供給する必要があります。近年において伸びの著しい再生可能エネルギーには太陽光と風力があります。このうち風力発電には騒音、バードストライク、景観という環境上の問題はありますが、陸上風力と洋上風力の発電所計画は着実に増えつつあります。当面は事故前の原子力発電所の全容量(約5,000 万kW)を超えることが目標であると思います。2016 年を起点として風力発電(350 万kW)は15 倍以上、太陽光発電(3,500 万kW)は1.5 倍以上が必要だろうと思います。

 新しい年号の時代はすぐそこに到来していますが、2025年の大阪万博に登場するであろう未来の三種の神器を、安定して使えるようなCO2フリー電力の十分な獲得が大きな課題となるでしょう。

 

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