2009/4
No.104
1. 巻頭言 2. 第13回エレクトレット国際会議 3. 木魚・魚板 4. 第33回ピエゾサロン
  5. 8チャンネルデータレコーダ DA-40

     <技術報告>
 8チャンネルデータレコーダ DA-40

リオン株式会社 計測器技術部  植 田 敏 弘

はじめに
 パーソナルコンピュータ(以降PC)の処理能力の向上に伴い、音響・振動の計測分野においても、データ処理の主な作業環境はPC上に移行してきた。それと共に演算や分析の結果だけでなく実波形を記録してPC上で処理するという計測事例が多くなり、PCと一体化した計測システムが多く見受けられるようになった。これらのシステムは、特に屋外を中心とした計測においては決して利便性が良いばかりの機器ではなかった。
 そこで、弊社では2005年より利便性を重視した4チャンネル分の波形記録を1台の機器に集約することのできる携帯型の4チャンネルデータレコーダ「DA-20」を販売してきた。さらに、より多チャンネルの計測ニーズに応えるため、8チャンネルデータレコーダ「DA-40」を開発し2008年7月に発売を開始した。本稿では、DA-40の特徴・仕様概要とDA-40のデータ処理を行う波形分析ソフトについて紹介する。
図1 DA-40の外観

1. 製品の特徴と仕様概要
 データレコーダDA-40は、計測現場において、音響・振動の波形や各種の電気信号を簡便なシステムで記録することを目的に開発された。よって、DA-40は現場計測に適した様々な特徴を備えている。

( 1 ) 単独動作のコンパクトデータレコーダ
 DA-40は操作キーやカラー液晶、入出力部、収録部、電源部全てを本体に備え、他の機器からのコントロールに頼らず単独で動作させることができる。寸法は (D)210 mm×(W) 270 mm×(H)50 mm、重量1.2 kgとコンパクトで運搬時や計測時の負荷とならない。

( 2 ) センサの直結が可能
 DA-40の8チャンネルの入力端子は汎用性の高いBNCコネクタで構成され、通常の電圧入力以外にも、定電流駆動型のプリアンプ付きマイクロホン、またはプリアンプ内蔵型加速度ピックアップを直接接続できる。 これにより、定電流駆動型のセンサとデータレコーダのみのシステムで音響・振動の波形記録を行なうことが可能となっている。入力端子は周波数範囲DC〜20 kHz、最大入力電圧±13 Vであり、定電流駆動型のセンサ、騒音計や振動計、その他の計測機器を自由に組み合わせた計測システムを柔軟に構築することが可能である。
図2 DA-40を用いた音響・振動計測システム構成例
(画像をクリックで拡大図を表示)

( 3 ) 記録媒体
 記録媒体にはCompactFlashTMを採用し、入力された信号波形を非圧縮のWAVE形式で記録する。ハードディスクやテープドライブのような回転構造を持たないため、動作は無音で温湿度環境や振動環境にも強い。DA-40は2GBと4GBのCompactFlashTMが利用可能であり、4GBのCompactFlashTMを使用した場合、8チャンネル、51.2 kHzサンプリングで約80分間の波形データを記録できる。

( 4 ) 本体による記録波形の再生
 DA-40は記録波形の再生機能を備えており、再生した信号を他の信号処理器(オシロスコープや周波数分析器など)に入力して記録波形を観測したり分析することが可能である。

( 5 ) 乾電池動作
 DA-40の大きな特徴として、8チャンネルの波形記録機器でありながら乾電池で長時間動作することがあげられる。DA-40は単2形アルカリ乾電池6本で動作するが、8チャンネル全てに定電流駆動型センサ (プリアンプNH-22とマイクロホンUCシリーズ使用)を接続し、サンプリング周波数51.2 kHzとした場合においても、 連続約4.5時間の動作が可能である(環境温度23℃、液晶バックライトオフ時の代表値)。また、DA-40は乾電池以外の電源として、ACアダプタや12 Vカーバッテリーといった外部電源を接続して動作することができる。外部電源で動作する場合、内蔵した乾電池は外部電源の停電時に電源供給をバックアップするため、記録中の電源の瞬断や突然の停電が起こった場合においても、動作を継続することができるのでデータの安全性が確保される。
表1  乾電池での動作時間
周波数
レンジ
チャンネル数
定電流駆動
センサ接続時
通常の電圧
入力時
20 kHz
8 ch
4.5 h
6.5 h
20 kHz
1 ch
5.5 h
9.0 h
100 Hz
8 ch
6.5 h
10.5 h
※ 23℃、アルカリ電池連続使用時、バックライトオフ時における代表値

( 6 ) トリガ機能
 長時間にわたって波形データを記録すると、膨大なデータ量(8チャンネル20 kHzレンジで80分記録した場合約4GB)となってしまう。PCの能力が向上したとは言え、大量のデータの中から必要なデータを見つけ出すには大変な時間と労力を必要とする。そこで、分析が必要な部分の波形データのみを効率的に記録するために重要となるのがトリガ機能である。DA-40には2つのトリガモード(単発、繰り返し)と次の4つのトリガタイプが用意されている。
@ Level Trigger
 観測波形が設定レベルを超えた場合に記録を開始する。
A Time Trigger
 記録開始時間、記録停止時間、記録時間、記録間隔、を設定できる。トリガモードをRepeatにすることにより毎正時10分間等のインターバル記録を行なうことができる。
B External Trigger
 外部トリガ端子の入力(+端子と−端子)をショートすると記録を開始し、設定した時間だけ記録する。
C External-Gate Trigger
 外部トリガ端子の入力をショートした時間プラス5秒間記録する。
 例えば、騒音計(NL-21、22、31、32、NA-28)のコンパレータ出力を外部トリガ端子に入力することにより、騒音イベントによる連動計測が可能である。
 さらに、最大5秒のプリ記録時間を設定することができるので、記録対象となるイベントが発生する直線のデータを含めた記録も可能である。

2. 波形分析ソフトウェア
 DA-40でCompactFlashTMに記録した波形データをPCで分析するために、DA-40 ViewerとCAT-WAVE という2種類のソフトウェアを用意している。
 DA-40 Viewer は、DA-40付属のソフトウェアであり、DA-40で記録されたデータファイルの波形表示、レベル表示、分割保存ができる。また表示機能として、環境騒音評価値を表示できる他、音響・振動分野でよく使用される周波数重み特性と時間重み特性を多数備えている。
 CAT-WAVEはDA-40の別売オプション製品であり、DA-40で記録した波形データを基に、より詳細な分析を行うソフトウェアである。FFT分析、オクターブ分析、スペクトルマップ分析が選択できる他、クロススペクトル・伝達関数も分析可能である。
 DA-40 Viewer、CAT-WAVE共に、DA-40本体で予め設定しておいたセンサ感度や電圧レンジの設定を読み込み、グラフの縦軸や演算値を音圧レベルや振動値に自動的に変換して表示することができる。また、波形記録時に校正信号を記録しておけば、同様に、校正信号を基にソフトウェアで自動変換することも可能である。
図3 DA-40Viewer表示画面例
図4 CAT-WAVE 表示画面例

さいごに
 現在、計測の現場は多様であり、計測器に要求される条件も様々である。DA-40は屋外計測におけるモバイルユースから、実験室などでの長時間計測まで、様々な作業環境や計測条件で行なわれる計測のニーズに応えられるものとなっている。弊社では、今後も計測の効率化に役立つ製品、そして計測の可能性を拡げることのできる製品の開発を行なっていく所存である。

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