2006/1
No.911. 謹んで新年のお慶びを申し上げます 3. 1st ISMA参加および Technical University of Liberec 訪問報告 4. レイリー板の復元 5. 4chデータレコーダ DA-20 <技術報告>
4chデータレコーダ DA-20リオン株式会社 計測器技術部 植 田 敏 弘
1.はじめに
音響・振動分野の評価において、レベルの評価だけではなく、周波数分析のようなより詳細な計測を行うことが一般化しています。また、パーソナルコンピュータ (以下PC)の高性能化により、これらの評価を行う上で用いられる機器が、専用の測定器からPCへと移行してきています。その一方で、測定システムの一部としてPCを現場に持ち込まなければならない煩雑さも生まれています。
4chデータレコーダDA-20は、主に可聴域の音響信号や振動をCompactFlashTMに記録する製品です。また、小型で単三乾電池による長時間駆動が可能、センサ駆動電源を搭載してマイクロホンや振動ピックアップを直結できるという特徴を備えています。これらにより、測定システムの簡素化と、PCとの容易な連携を実現しています。
図1 DA-20 とセンサ内蔵型マイクロホン、ピックアップの接続例 2.製品の概要
2.1. センサ直結
DA-20は、センサ駆動電源を搭載しているので、当社製を含む多くのアンプ内蔵型マイクロホン、振動ピックアップを直接接続できます。また、予めセンサ感度を DA-20に入力しておくことで、専用のアプリケーションソフトウェア(付属のDA-20 Viewer、別売のDA-20PA1等)でデータを処理するときに、縦軸を加速度や音圧の単位に換算して利用できます。2.2. 入力の多様性
DA-20は、主に可聴域の音響信号や振動を測定する目的で定電流駆動型のセンサをつなぐことのできる4ch BNC端子を備えています。BNC端子は、定電流駆動型のセンサをつなぐだけでなく、騒音計や振動計の交流出力を始め、回転計や温度計の出力のような直流信号を入力することができる汎用端子となっています。また、3ch振動入力プリアンプVP-80をつなぐことでプリアンプ非内臓型のピックアップを接続することができます。2.3. 広い電源動作範囲
DA-20は単三型乾電池 4本で約8時間(動作条件による)動作します。また、外部電源端子は5V 〜 15V という広い電源電圧入力を許容しています。このため、別売のACアダプタ NC-94A だけでなく、単一型乾電池4本から電力を供給するバッテリーボックスBP-21、12Vのカーバッテリー等から電力を供給することも可能となっています。このため、DA-20は、市街地、線路脇、車内、建設現場、実験室といった様々なフィールドで活躍することができます。2.4. 耐環境性
DA-20は情報をCompactFlashTMに記録する製品であるため、従来の磁気テープによる記録機器に比べ、温湿度環境に強い製品となっています。また、回転構造などの機構的に脆弱な部分を持たないため、耐振動性にも優れており、車やバイクにおける車載での走行試験等、コンパクトかつ耐環境性能を必要とする測定においても、力を発揮します。2.5. プリタイム収録
DA-20では5秒間のプリタイム収録が可能です。この機能を利用することで、事象が発生した直後に収録を開始しても、その事象を記録することが可能です。2.6. 再生機能
DA-20は再生機能を備えていますので、現場で収録したデータを実験室で再生してレベルレコーダで記録したり、使い慣れた分析器でデータを分析したりすることも可能です。2.7. 騒音計との連動
長時間時間領域の波形を記録すると、膨大なデータ量 (4ch、20kHz レンジで24時間記録すると約30GB)になります。これほど大きなデータ量をPCで処理するのは、PCの処理能力が上がったとは言えまだまだ現実的な方法とは言えません。騒音を測定する場合は大きな騒音レベルの事象に注目することが多いと考えられます。そこで、騒音計でデータ量の少ない騒音レベルを常時記録しておき、一定の騒音レベルを超えた事象のみを DA-20で時間領域の波形として記録する方法を提案します。
当社製騒音計 NL-21,22,31,32のコンパレータ出力と DA-20の外部トリガ端子を接続すると、DA-20は騒音計で設定したレベルを超えている間とその前後5秒間の時間波形を記録します(トリガ発生前5秒間のデータは、プリタイム5sを設定しているときのみ記録)。記録されるデータには時刻情報が入るので、後で騒音計のレベルデータと見比べて必要とする部分を分析できます。
図2 NL シリーズ騒音計 3.データ処理ソフト DA-20PA1
DA-20で収録された時間波形は、PCで直接読むことのできるファイル形式(WAV形式)になっていますので、ファイルをコピーするだけでPCを利用してデータ処理を行うことが可能です。別売のソフトウェア DA-20PA1 を使用すると、任意区間のデータを切り出し、時間波形処理(フィルタ処理、実効値演算、時間率騒音レベル算出、等価騒音レベル計算)、オクターブ分析(1/1,1/3オクターブ)、FFT分析をPC上で容易に行うことができます。また、報告書作成用の機能があり、表示画面のクリップボード転送や分析結果を別ファイルに出力することが可能です。図3は画面例で、4chで収録した時間波形に適当な時定数をかけてレベル化したグラフを表示しています。この例の横軸は経過時間を表示していますが、時刻表示も可能です。
図3 DA-20 PA1 の画面例 4.まとめ
今回、4chデータレコーダ DA-20について紹介させていただきました。大気・水、食品、騒音・振動など、生活を取り巻く環境の問題がとりただされている中、あらゆるものの安全性、信頼性が求められています。規制対象となる項目が増え、計測技術、評価方法は変化しています。この DA-20が様々な分野の計測のお役に立てることを願うものであります。
主な仕様
入力端子 BNC 4ch,他 出力端子 BNC 4ch,モニタ端子 入力電圧レンジ 0.01 V〜 10 V
(10 dBステップ)周波数特性 DC〜20 kHz ダイナミックレンジ 80 dB以上
(1Vレンジ以上)記録媒体 CompactFlashTM
(最大2GB)量子化ビット数 16 bit 周波数レンジ 100 Hz, 500 Hz, 1 kHz,
5 kHz, 10 kHz, 20 kHzプリ収録 最大5秒間 トリガソース 内部, 外部 トリガモード Single, Repeat 電池寿命 約8時間(条件による) 電池 単3(アルカリ)×4本 大きさ・重さ 140(H)×175(W)×45(D)mm,
約480 g(電池含まず)使用温湿度範囲 -10℃〜+50℃,
10%〜90%RH以下
(結露のないこと)付属ソフト DA-20 Viewer