2026/4
No.1721. 巻頭言 2. 6th Joint Meeting ASA and ASJ報告 3. 強震計測装置 SM-31/ 地震警報記録装置 SM-48
<技術報告>
強震計測装置 SM-31/ 地震警報記録装置 SM-48
リオン株式会社 環境機器事業部 開発部 音響振動計測器開発課 長 島 健 祐
1.はじめに
当社はダム、道路施設、鉄道、工場などの重要設備における安全管理のため、長年地震計を提供してきた。その中でもダム、道路施設、工場においては強震計測装置SM-28 が、鉄道においては地震警報記録装置SM-47 がご好評により多くの場所でご利用いただいている。ただこれらは販売してから10 年以上が経過しており、また近年は地震発生後の情報の断絶を防ぐため、通信の多重化が望まれるなど市場要求も変化している。そのような市場要求に応えるべく、この度SM-28/SM-47 の後継機として強震計測装置SM-31/ 地震警報記録装置SM-48 を開発したので紹介する(図1)。
図1 SM-31/SM-482.製品の概要
地震計は感震器(図2)と呼ばれるセンサからの加速度データを元に、計測震度やSI 値(地震の揺れ方に対して構造物がどの程度のエネルギーで揺らされているかを示す値)といった地震観測に必要な諸元値算出を行い、通信や接点による警報出力、SD カードへの記録、内蔵プリンタによる印字、通信によるデータ出力等を行う装置である。地震情報の伝達やシステム制御に用いられることが多く、信頼性の高さが求められる機器である。
以降にSM-31/SM-48 それぞれの特徴を記す。
図2 感震器一覧〇 SM-31
SM-31 は最大2台の感震器が接続可能なため、大型構造物の挙動観測や、AND 判定による地震の誤検知防止など、様々な使い方ができる(図3)。Ethernet ポートを2つ、RS-232C ポートを1つ搭載するため、通信の多重化が可能であり、また従来機種の電文フォーマットを搭載したため、置き換えも考慮した設計である。また震度情報ネットワークでも使用できるよう本器は気象庁検定取得ができる設計とした。気象庁検定取得は従来機種でも対応していたが、これまでは必須出力値のみだったのに対し、本器では震度情報ネットワークが要求する全ての演算値出力を可能にした。〇 SM-48
SM-48 は鉄道市場向け製品である。そのため機械式地震計(本器と異なる検出方式を用いた地震計)や2つの感震器を用いた警報のAND 判定ができる設計とした。これにより誤警報の防止が可能となり、より確実な警報発報を実現した。また警報出力用接点を複数用意しているため、列車運行制御において様々な要求に応えることができる。
図3 ダムでの使用例3.製品の主な特徴
〇 ネットワーク機能の強化
前述した通り、近年は通信の多重化、特にEthernetポートを複数搭載することが市場要求の常識になりつつある。そのため、SM-31/SM-48 ではEthernet ポートを2つ搭載し、各ポート複数宛先(SM-31 は3宛先、SM-48は4宛先)とTCP/IP のソケット通信ができる設計にした。異なるネットワークへ地震データ出力ができるので、冗長性の高いシステム構築が可能である。またFTP サーバ機能を搭載するので、遠隔でのデータ回収や設定変更に必要なファイルのアップロードが可能である。〇 操作性の向上
SM-31/SM-48 では、従来機種の5.7 インチ液晶より大きいサイズである7.0 インチ液晶を採用したため、ステータス表示部や操作領域を増やした。これにより地震データの表示や本器の状態確認が少ない操作で行えるようになった。また誤操作しにくいボタン配置や、注意喚起画面を入れるなど、メンテナンスでの操作ミスによる誤警報出力を防ぐ工夫に努めた。〇 耐ノイズ性の強化
地震計は設置環境によっては、誘導雷や外部機器からのノイズを受けやすく、従来機種では広範囲の故障につながることがあった。SM-31/SM-48 では避雷対策において従来機種よりもさらにノイズに強いデバイスの採用、外部機器と接続する通信ラインにおけるアイソレートの強化を実施し、耐ノイズ性の強化を図った。これにより今まで以上に壊れづらく、外乱に対する堅牢性が高い製品になった。〇 メンテナンス性の向上
地震計はシステムの一部として組み込まれることが多いため、エンドユーザーが地震計を操作することはほぼ無く、メンテナンス従事者の操作がメインである。そのためSM-31/SM-48 においては、メンテナンス従事者からの意見を重要視し、メンテナンス性の向上を図った。(1) ping とtraceroute の機能
地震計と上位システムの通信ができない時、まず疑うのはネットワーク回線の異常である。ping やtracerouteでネットワーク回線の状態を確認するのが一般的だが、これまでは所持しているPC を接続する必要があった。そこでSM-31/SM-48 では本器上からこれらのコマンドを発行し、画面上で結果を確認できるようにした。これによりPC の起動やIP アドレスの設定など煩わしい作業がなくなり、作業における工数低減が図れる。(2) 状態監視
地震計はいつ発生するかわからない地震を監視する機器である。そのため常時動作する必要があり、故障や異常が発生した際は早期の復旧が必要である。しかし地震計は感震器、上位システム、SD カード、時刻校正機器、停電補償用電池など、接続する外部機器(図4)が多いため、故障の発生要因が多く、原因究明には時間を要することが多い。SM-31/SM-48 では接続機器との通信状態を常時監視・ログ記録するよう設計し、早期の原因究明ができるよう考慮した。
また感震器からの加速度データを常時記録する機能(データロガー機能)を搭載しているので、32 GB SDカードを使用すれば、感震器1台接続の場合で約1年間分の常時震動データを記録することができる。これにより地震以外の環境振動(暗振動)の確認が可能となった。暗振動を元に地震検知判定に用いる加速度レベル設定を決めることができ、また暗振動の低いところへ設置するための調査としても使用できるため、設置環境の適正化を図ることができる。
図4 システム構成図(3) 遠隔での制御
SM-31/SM-48 では2つの遠隔操作機能を搭載した。1つ目が電源の遠隔操作、2つ目が警報の遠隔リセットである。
地震は様々な環境で観測されることから、無人の建屋や遠い場所に地震計を設置することもある。設置場所近隣で工事等発生する場合、誤検知防止のため、地震計の電源を切ることがあるが、遠隔による電源操作で作業者の負担が減ることが期待できる。
またシステムによっては一定の大きさの地震があった場合、継続して警報出力する必要がある。そのため顧客のタイミングで警報出力の停止ができるよう、警報の遠隔リセットを設け、システム設計の自由度を高めた。4. プラットフォームの設計
当社は地震計事業に長年携わった経験から、様々な顧客と関わってきた。要望も様々であり、場合によってはハードウェア設計を一から行うなど、開発が長期にわたることもあった。
そこでSM-31 開発に併せ、これまでの要望をまとめ、インターフェースを多彩に盛り込んだプラットフォームの開発を行った。ハードウェア、ファームウェアの軽微変更で様々な顧客の要望を実現できる。そのプラットフォームを使った第一段がSM-31、第二段がSM-48である。
共通のプラットフォームに対し、周辺機器の組み換えや制御用のファームウェアの切り替えのみでよいため、開発期間が短縮し、より早く顧客へ提供できることが期待できる。5. おわりに
近年、大地震が続き、防災への取り組みがより一層強化されている。SM-31/SM-48 は防災を通して社会貢献に努めるべく、これまでの設計を見直し、使いやすさや堅牢性を中心に地震計としての機能強化を図った製品である。SM-31/SM-48 が多くのところで活用され、防災への一助となれば幸いである。また今後も防災対策への重要性を考え、よりよい地震計の開発に尽力したい。