1.はじめに
現代の製品の多くは機械によって生産されており、それらの機械には駆動部が備わっている。駆動部の多くは回転構造であり、エネルギー効率が高く、精密な制御が可能であるという利点を持つ。一方で、摩耗や振動、騒音などの問題が発生しやすく、定期的なメンテナンスが不可欠である。
こうした機械設備に対しては、設備診断や品質保証の分野で各種測定が行われており、振動測定は特に重要な役割を果たしている。近年では、熟練技術者の減少や技術継承の困難さが課題となっており、加えてカーボンニュートラルの実現に向けて、設備の効率化や安定運転、長寿命化が求められている。そのため、より正確な計測技術の必要性が高まっている。
これらの背景を踏まえ、「正確」「迅速」「操作性」を重視した振動分析計VA-14(図1)の開発を行った。
2.VA-14 の概要紹介
VA-14 は、図1に示すように「表示・演算処理部」と「振動加速度ピックアップPV-57I」の2つの構成要素から成り立っている。1チャンネルのFFT(高速フーリエ変換)機能を備えた振動分析計であり、さまざまな振動測定に対応可能な機能を有している。
2.1 表示部
VA-14 は、表示部に3.5 インチのカラーLCD を採用しており、日本語・英語・中国語の3言語に対応している。これにより、より多くのユーザーにとって使いやすい設計となっている。
また、周波数分析機能の画面(図2)では、最大 3200 ラインのデータ表示が可能であり、詳細な波形やスペクトルの確認に適している。画面の拡大機能も備えており、細かなデータの視認性を高めている。
2.2 操作部
近年では、操作のほとんどをタッチパネルで行う製品が増加している。しかし、現場での操作性やメンテナンスのしやすさを考慮した結果、VA-14 では物理的なスイッチを多く備える設計とした。
特に、手に持った状態で頻繁に操作されるボタンは、メンブレンの上部に配置することで、使いやすさを重視した機構デザインとなっている。また、多機能ボタンとしてファンクションキー(図3)を搭載しており、データリコール、スクリーンショット、フィルタ設定、設定の保存・読み込みなどの機能を割り当てることが可能である。
これにより、通常はメニュー画面を経由して行う操作を、より迅速に実行できるようになり、現場での測定作業の効率化が図られている。
2.3 電源部
VA-14 は、電源供給手段として3 種類を備えている。具体的には、AC アダプタによるDC 電源供給、USB Type-C によるUSB 給電、そして単3形電池6本による電源供給である。
特に電池による動作では、約12 時間の連続使用が可能であり(※使用設定により動作時間は変動)、長時間の測定作業にも対応できる設計となっている。
2.4 インターフェイス部
VA-14 の天面部には、データ記録用のSD カードスロットを備えている。底面部には、図4に示すように、前述の電源入力端子、通信兼用のUSB Type-C コネクタ、通信用のLAN 端子が配置されている。さらに、外部機器と連携して本器の測定開始を制御するためのトリガ端子も搭載している。
これらのインターフェイスにより、VA-14 は多様な使用環境や測定シーンに柔軟に対応可能な設計となっている。
3.VA-14 の測定機能
VA-14 では主に加速度、速度、変位、エンベロープなどを測定値に有している。加速度、速度、変位を同時に測定可能な振動計モード、振動の時間波形を測定可能なTIME モード、更に周波数分析測定可能なFFTモードを有している(図5)。測定機能の中における一部の機能について紹介する。
3.1 フィルタ設定
VA-14 では、加速度、速度、変位の各測定値に対して、共通のフィルタ設定が可能であるほか、それぞれ個別にハイパスフィルタおよびローパスフィルタを設定することができる。これにより、測定対象や目的に応じた柔軟なフィルタ調整が可能となっている。
ハイパスフィルタは、1 Hz(加速度のみ)、3 Hz、10 Hz、1 kHz の4 種類から選択可能であり、低周波成分の除去に対応している。一方、ローパスフィルタは、1 kHz、5 kHz、20 kHz の3 種類が選択可能であり、高周波成分の制限に活用できる。
これらのフィルタ設定により、ノイズの除去や特定周波数帯域の強調など、精度の高い振動解析が可能となっている。
3.2 周波数分析
VA-14 では、TIME モードおよびFFT モードにおいて周波数分析が可能である。周波数スパンや分析ライン数を変更することで、広範な周波数帯域を持つ振動の測定に対応できるため、設備診断や品質保証の分野において不可欠な機能となっている。
FFT モードでは、平均値と最大値を同時に記録することが可能であり、振動の傾向と瞬間的なピークの両方を把握できる設計となっている。
さらに、図6に示すように、最大値10 点を取得する「TOP10」と合わせて特徴的なピークに対して「PEAK10」を算出・表示する機能も備えており、ピーク値が小さい場合でも見逃しを防ぎ、より精度の高い分析が可能となっている。
4.オプション製品紹介
VA-14 には、機能を拡張するためのソフトウェアプログラムに加え、複数のオプション製品が用意されている。本稿では、それらの中から2つのオプション製品に着目し、代表的な拡張機能およびオプション製品について紹介する。
4.1 機能拡張プログラムVX-14S
オプション製品であるVX-14S は、SD カードを用いてインストールを行うことで、VA-14 の機能を拡張することが可能である。これにより、標準機能に加えて、より高度な測定や解析機能を追加することができ、用途に応じた柔軟な運用が可能となる。
(1)マイクロホン接続機能
VA-14 は基本的に振動分析を目的とした機器であるため、標準状態ではマイクロホンの接続には対応していない。しかし、オプション製品VX-14S を導入することで、CCLD(Constant Current Line Drive)タイプのマイクロホンの接続が可能となる(図7)。マイクロホンの感度設定を行うことで、FFT モードにおいて音響信号の測定が可能となる。
回転機械に異常が発生した場合、振動だけでなく音として異常が現れることがある。VA-14 では、音と振動の両方を1台で測定・比較することができるため、異常の発生源をより正確に特定することが可能である。
(2)オートストア機能
本機能の導入により、従来は複数の計測器を必要としていた不確定な不具合への対応が、VA-14 一台で可能となる。瞬時の振動データはもちろん、後解析に対応した実波形ファイルの収録により、詳細な分析が可能である。
特に瞬時データは、異常発生時の前後の状態を含めて記録できるため、事象の発生メカニズムの解明において有効な情報を提供する。これにより、現場でのトラブル対応や設備診断の精度向上が期待される。
(3)真のピーク値算出
一般的な振動計測器の中には、速度や変位のピーク値やピークトゥピーク値を、実効値から換算して算出する方式を採用しているものが存在する。これらは「EQPEAK」や「EQP-P」として表現されており、あくまで正弦波を前提とした等価的な値である。
この方式では、実効値に√ 2 などの係数を乗じてピーク値を推定するが、実際の振動波形が非正弦波である場合、波高値との乖離が生じる可能性がある。そのため、異常の兆候を正確に捉えるには限界がある。
一方、VA-14 の拡張プログラムでは、真のピーク値を波形から直接取得することが可能である(図8)。これにより、振動の大きさを正確に把握でき、より信頼性の高い測定結果が得られる。
この機能により、従来よりも早期に異常を検出することが可能となり、設備の故障状態をより正確に把握できる。結果として、設備を長期間安定して使用したいという現場の課題に対して、有効な対応策となる。
4.2 キャリングケース
前述の通り、VA-14 はマイクロホンなどの外部機器との接続が可能であることから、別売品として本器を含めて収納可能なキャリングケースを用意している(図9)。このキャリングケースにより、振動と音を同時に測定する際の取り回しが向上し、現場での運用性が高まる。
また、保管や輸送時においても機器の破損を防ぐ構造となっており、安心して長期間使用できる環境を提供する。これにより、測定機器としての信頼性と耐久性を両立させている。
5.おわりに
本稿では、「正確」「迅速」「操作性」の向上を目指した振動分析計VA-14 の製品概要について紹介した。本文で取り上げた機能に加え、紹介しきれなかった多くの機能も、現場での計測作業に大きく貢献できるものとして設計されている。VA-14 は、振動と音の同時測定、真のピーク値の取得、柔軟なフィルタ設定、多様な電源供給方式、そして携帯性を高めるキャリングケースなど、現場のニーズに応える多機能性を備えており、設備診断や品質保証の分野において有効なツールとなる。
本製品が、ユーザーの課題解決に寄与し、設備の安定運用と長寿命化に貢献することを願っている。今後も、ユーザーの声を重要なインプットとして捉え、製品の改善および新製品の開発に取り組んでいく所存である。
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