2025/10
No.170
1. 巻頭言 2. inter-noise2025 3. 振動分析計 VA-14

 
  日本国際博覧会「大阪・関西万博:EXPO2025」


  理事/騒音振動研究室長  土 肥  哲 也

 大阪の夢洲会場で開催されている大阪・関西万博に足を運んだ。テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」である。「万博は50 年、100 年後の未来が見られる」といわれることがある。1970 年の大阪万博で紹介された「携帯電話」はいまや当たり前の存在となった。また、1985 年のつくば万博で「夢の交通機関」と呼ばれた浮上式鉄道は、リニア中央新幹線として実用化が決まっている。今回の大阪・関西万博でも、未来を先取りする技術がいくつも披露された。いわゆる「空飛ぶクルマ」の飛行実演、IPS 細胞による心筋細胞の鼓動展示、アンドロイドが人間と共存する世界を演出した展示。これらはいずれも未来社会を実感させるものだった。

 航空機が人々の移動手段として当たり前になっている現代も、ライト兄弟が初飛行を成功させた1903 年当時の人々にとっては夢物語であったに違いない。今回の万博では「空飛ぶクルマ」が会場内のバーティポート(垂直離着陸場)から離陸して隣接する海まで飛行するデモンストレーションを実施しており、未来の乗り物を「音」とともに肌で感じた。50 年後にはエアータクシーなどとして日常の移動手段の一つになっているに違いない。

 今回の万博のテーマ「いのち」に関連し、医療・ヘルスケア分野の展示も目を引いた。IPS 細胞から作られた心筋細胞が自発的に脈動する動体展示や、自宅で病気を早期に発見できる先端技術の紹介があり、この分野の技術が想像以上に進んでいることを実感した。現在でも心臓・肺などの臓器移植が行われているが、移植可能な「人工」臓器はまだ限定的であり心臓などの臓器が細胞から作れるようになる未来を垣間見た。

 最も印象に残った展示はアンドロイドに関するものであった。現在でも人工関節・股関節の置換は一般的な医療技術となっているが、将来、脳つまり記憶や人格もアンドロイドに置き換えることが可能な時代が来た時、「あなたはこのまま人として寿命を全うしますか?それともアンドロイドとして生き続けますか?」という選択を迫られることになる。万博の展示では人間にそっくりなアンドロイドが表情を変えながら互いに会話をしており、アンドロイドと人間が共存する未来の姿を疑似体験できたが、そこには「いのちとは何か」という根源的な問いかけが潜んでいた。

 今回の万博では毎晩約1000 機のドローンが夜空を彩った。音源が1000 個ということは音が10 × log10(1000)=30 [dB] 大きくなる…と考えてしまうのは職業柄だが、演出のための音楽がドローンの音をうまくマスキングしていた。ドローンショーは各地で実施されており「未来技術」ではなくなっているが、物資運搬等の「未来」に期待したい。

 フランスの作家ジュール・ヴェルヌは「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」という言葉を残している。今回の万博もまさにその言葉を体現する場であった。近い将来、人工知能が人間を超える「シンギュラリティ」が到来すると予測されている。科学技術の進歩により世界がどう変容するのか、未来を想像する楽しみは尽きない。

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