2023/10
No.1621. 巻頭言 2. inter-noise 2023 3. 普通騒音計 NL-43 / 精密騒音計 NL-53 / 精密騒音計(低周波音測定機能付)NL-63
<技術報告>
普通騒音計 NL-43/ 精密騒音計 NL-53/ 精密騒音計(低周波音測定機能付)NL-63
リオン株式会社 技術開発センター 清 水 麗
1.はじめに
特定計量器であるNL-42シリーズは製造販売から10年以上が経過し、多くのお客様からご好評いただいている。長期にわたりご使用いただく中で、法律・規格の改定により変化した測定方法へ対応するほか、改善に向けたご意見にも応えるため、様々な技術的要素の向上に努めてきた。
さらに、近年においては計測器単体(モノ)だけではなく、複数の機器を組み合わせたソリューション(コト)についても需要が高まっている。
それらに対応するため、“つながる”をコンセプトとした新型騒音計、普通騒音計 NL-43/ 精密騒音計 NL-53/ 精密騒音計(低周波音測定機能付)NL-63 を開発したので紹介する(図1)。
図1 左からNL-43 / NL-53 / NL-632. 製品の概要
本項では計測器の操作において重要となるユーザーインターフェースや測定機能、他の機器と連携するためのIO 端子、機能追加のためのオプションソフトについて紹介する。
(1)操作部
本騒音計では、従来器より大きなサイズの3.5 インチタッチパネル付きカラー液晶を採用した。タッチパネルにより、複数ある設定項目を直接選択することができ、従来の上下左右キーを使用した場合と比較し、より少ない手順で設定操作を実現した。加えてメニュー階層の見直しや、測定画面から重要となる設定項目に直接移動できるショートカットを配置することにより、直感的な操作が可能となるよう工夫した。
一方で誤操作防止のため、測定の開始や停止はタッチパネルではなく、従来同様にキー操作を採用した。
筐体についても、音響特性のほか持ちやすさを考慮した流麗なフォルムを採用しており、さらに炎天下における長期測定などの過酷な作業環境も想定し、耐熱温度や耐光性を向上させた。
(2)測定機能
一般的な騒音測定は周波数重み付け特性A、時間重み付け特性Fの設定で測定されることが多いが、低周波音評価のように異なる測定条件が用いられることもある。
これらを実施する場合、従来器では2条件の測定データを同時に保存することができず、設定を変更し複数回測定を行う必要があった。本騒音計では、これらを1度に行えるよう最大4条件の異なる周波数重み付け特性・時間重み付け特性を組み合わせた測定が可能となっている。
またNX-43EX をインストールする(NL-43 / 53 が対象、NL-63 は標準搭載)ことで、サウンドレベルの瞬時値Lp と演算値(Leq、LE、Lmax、Lmin、LN など)のロギングが可能なAuto ストアを行うことができ、瞬時値は急峻なレベル変動を捉えられるように、従来器での最短100 ms 周期に対し、より短い10 ms 周期を選択することができる。ロギング可能な総測定時間は、従来器における最大1000 時間だけではなく、より長い期間の実施も考慮し連続設定を用意した。
さらにNX-43WRをインストールすることにより、測定と並行してマイクロホンで収集された音の波形収録を行うことも可能である。収録データは、騒音計に挿入されたSD カード内に.wav 形式で記録され、PC に読み込み再生や詳細な分析に使用される。
(3)IO 端子
他の機器と接続するための端子として、外部電源入力端子、I/O端子、交流/直流出力端子を備えているほか、USB 端子を従来器のMini-B からType-C に変更し、通信機能を強化するため新たにLAN 端子を搭載した(図2)。延長ケーブル、接続ケーブル、通信コマンドなど従来器からの継続使用を可能としている一方で、外部電源入力端子と交流/ 直流出力端子を変更している。
使用上の安全性やカーバッテリーの使用等を考慮した極性と定格電圧の変更に伴い、外部電源入力端子の形状と推奨のACアダプタを変更している。しかし従来品のACアダプタNC-98シリーズも、別売品の変換ケーブルCC-43Jと併用することにより使用可能である。交流/直流出力については1つの端子に統合されており、別売品のステレオ出力アダプタCC-43Sを使用することで同時出力が可能である。
(4)周波数分析機能
図2 騒音計の端子面
オクターブバンド分析プログラムNX-43RT / NX-63RT、FFT分析プログラムNX-43FTをインストールすることで、騒音計が測定可能な最大4条件のサウンドレベルと同時にリアルタイムの周波数分析が行える。
NL-43 / 53 はNX-43RT が対応しており、中心周波数16 Hz ~ 16 kHz のオクターブバンド分析、12.5 Hz ~ 20 kHzの1/3オクターブバンド分析を行い、各バンドの瞬時値と演算値を算出し、さらに本製品からはそれらのロギングにも対応している。NL-63においてはNX-63RT が対応しており、低周波音測定機能として中心周波数 1 Hz ~ 16 kHzのオクターブバンド分析、1 Hz ~ 20 kHz の1/3 オクターブバンド分析が可能である。低い周波数のバンドでは測定値が変動しやすいことから、時間重み付け特性Fの設定で測定を行った後に同設定をSに変更して2度目の測定を行う場合もあり、これらを1度で行えるように時間重み付け特性2条件のオクターブバンド分析を可能とした(図3)。
NX-43FTはフレーム長400 ms、周波数分解能2.5 Hz、上限周波数20 kHzのFFT分析と各スペクトルの演算値を算出できる。さらに、本製品からはそれら全ての値を通信によって取得することもできる。
図3 騒音計と1/3 オクターブバンド分析の測定画面
※右図はNX-63RT の測定画面3. 特徴
NL-43 シリーズは、様々な機器と“連携”することで得られる付加価値や、“ネットワーク”を活用した機器へのアクセスによって、操作や測定をより簡便に実現できるよう“つながる”をコンセプトに開発された。その一例としてUSB Type-C端子とLAN端子の機能について紹介する。
(1)USB Type-C 端子
本端子では外部電源からの給電 、通信制御、測定データの転送が可能である。
外部電源からの給電が可能になったことで、市販のモバイルバッテリー等を使用して機器を駆動することができ、多くの乾電池を使用することなく長時間の連続動作が可能である。モバイルバッテリーを使用する際は、電池残量の低下に伴うオートシャットダウン機能を動作させるため乾電池の併用を推奨している。
汎用のUSB ケーブルを用いた接続によって、従来器とは異なり専用ドライバのインストールを行わずに通信コマンドの送受信が可能で、Windows だけではなく Mac や小型PC で使用されるLinux など、OS に拠らず通信制御ができる。
測定停止状態では、USB ケーブルでPC のUSB ポートと接続することにより、騒音計に挿入されたSDカードを認識させ、保存した測定データのファイル転送が行える。
従来器ではこれらの機能を使用するために複数のケーブルが必要であったが、本製品では1 本のUSB ケーブルのみで様々な機器とつながり、付加価値を提供しやすくなる。
(2)LAN 端子
本端子と汎用のLAN ケーブルを接続することで、有線やWi-Fi、インターネットなどのネットワークを経由した機器へのアクセスを行い、通信制御や測定データの転送が可能である。USB 接続とは異なり、測定データのファイル転送は測定中であっても使用できる。
これらの機能は、それぞれ専用ソフトや自作プログラムから使用可能であるが、PCやスマートフォンのWebブラウザを用いることでより容易にアクセスできる。
Webブラウザ上では測定値をリアルタイムに可視化しながらマイクロホンで収音された音を聴ける(NX-43WR のインストールが必要)ほか、機器の設定変更や操作、測定データのダウンロードなどを機器から離れて行えるため、遠隔地に本騒音計を設置した場合でも現地に赴くことなく測定を行える(図4)。
図4 Web ブラウザ上の画面4. おわりに
“つながる”をコンセプトに新規開発した騒音計、NL-43/ NL-53/ NL-63 について操作部や機能、強化した他の機器との連携などを紹介した。本騒音計を使用することで、様々な測定をより簡便に行うことができ、今まで困難であった計測実現の手助けとなることを願っている。
今後もより良い製品を開発できるよう、様々な要素の向上に努めていく。