2014/10
No.126
1. 巻頭言 2. ICBEN2014を終えて 3. シンバル 4. タッチパネルを備えた多機能計測システム
   

      <技術報告>
 タッチパネルを備えた多機能計測システム SA-A1シリーズ


リオン株式会社 環境機器事業部 開発部  中 島 康 貴

■ はじめに
 出張の現場測定で複数の測定器、たとえば騒音計、周波数分析器、データレコーダなどを持って行くのは機材の量が多くなり不便である。また、測定時にはケーブルの取り回しに手間がかかるとの声が多い。これらの課題を解決して、またハンディ分析器の新ラインナップを構成する製品SA-A1 シリーズを開発した。

■ 概要
 KSA-A1シリーズには大きく分けて二つの特徴がある。第一に、FFT 分析器、オクターブバンド分析器、データレコーダなどの複数の機能に対応しつつ、ブリーフ ケース一つで測定に行ける点である。多機能な測定器ではボタンの数が多くなりがちだが、本製品は、10.1インチカラー液晶とタッチパネルを備え、分かりやすい直感的な操作性を実現した。第二に、ディジタル転送と有線/無線を使った柔軟なシステム構成が可能である点である。測定状況によってケーブル敷設が困難な測定場所でも測定ができ、測定準備や撤収の手間や時間を減らせ、かつ現場でリアルタイムに測定値を確認できる。
 SA-A1シリーズのラインナップは、基本部分として、本体部SA-A1(図1左)、アンプSA-A1B4(4チャンネル版)、SA-A1B2(2チャンネル版)で構成される。さ らに、無線ドックSA-A1WD、無線センサアンプSA-A1WL1がある(図1右)。システム構成により無線による計測ができ、いずれもIPX4相当の防水になっている。
 プログラムとして、FFT 分析プログラムSX-A1FT、1/3オクターブ分析プログラムSX-A1RT、波形収録プログラムSX-A1WRの3つを第一弾として用意した。波形収録プログラムSX-A1WR で収録したWAVE ファイルはWindows 上で動作する波形処理ソフトウェアAS-70 で、1/3オクターブ分析プログラムSX-A1RTの測定デー タは環境計測データ管理ソフトウェアAS-60でそれぞれシームレスに扱うことができる。

図1 1/3 オクターブ分析プログラムSX-A1RT を表示したSA-A1 本体部(左)、無線センサアンプSA-A1WL1(右)

■ 特 徴
専用器の使い勝手
 本製品では個々のプログラムが単一の目的に特化しており、使いやすい操作性を実現した。プログラムのラインナップは今後、順次拡充予定である。

直感的で統一された操作感
 本製品では、校正方法を含めいずれのプログラムも共通した操作性を備えている。ユーザーが今後発売されるプログラムを追加した場合でも、従来のプログラムと校正方法や画面構成自体が同一であるため、一度、慣れ親しんだ操作感のまま戸惑うことなく使うことができる。

ディジタル転送
 アンプSA-A1B4 から本体部SA-A1 への接続はすべてディジタルで転送される。外来ノイズにも有利であり、アンプSA-A1B4から本体部SA-A1への接続が有線の場合で もLANケーブル1本のため、従来の1チャンネル毎に1本のケーブルを用意する場合に比べてシンプルである。また、アンプとLANハブを増設してチャンネル数を増や すことも可能である。そのため、拡張性のある柔軟な測定系を実現することができる。

無線測定
 SA-A1 本体と無線部(アンプSA-A1B4 + 無線ドック SA-A1WD)の間を図2のように無線で制御、データ転送ができる。データを無線でリアルタイムに取得できるため、離れた複数の測定ポイントの概況確認ができ、データを見ながら安心して測定できる。なお、有線と無線の混在もでき、最大4台(計16 チャンネル)までのアンプ を接続できる。汎用的な無線LANでは、IPアドレスの設定など接続のための設定に手間がかかることが多いが、本製品では簡単な操作で有線、無線の接続ができる。

図2 無線測定のイメージ図

センサを直結できるアンプ
 アンプSA-A1B4は、マイクロホンや振動加速度ピックアップを直結して測定ができる。4チャンネル入力以外に汎用DC入力や回転パルス入力も備え、風向風速計または回転センサを直接接続できる。アンプには外部トリガ端子を備え、トリガイベントで測定を開始することもできる。また、将来のプログラムが利用できるように、本体部、無線部には、ディジタルI/O を備えており、分析結果や外部入力を備えたシステム構築も可能である(SA-A1WDのディジタルI/Oはファクトリオプション)。

充電式リチウムイオンバッテリ
 環境負荷の観点も考え、本体にフィットする小型軽量で大容量を実現できる専用リチウムイオンバッテリを開発した。SA-A1 にバッテリを装着した状態でも充電可能だが、バッテリ単体に直接ACアダプタを接続して充電することもでき、別途、充電器は不要である。

既存通信インフラとの親和性
 無線通信には汎用的な無線/有線LAN を使っているため、カスタマイズとして一般的な市販の無線LAN アクセスポイントや指向性アンテナを使った中継、数百メートル距離の転送、オプティカルファイバーを使った長距離伝送、通信会社のサービスを利用した国内外の遠隔地、または3G ネットワークを使ったデータ転送などにも親和性が高い。

■ 測定の一例
 無線による測定例として、道路交通騒音を音源として空気音遮断性能の測定を行った。図3に木造実験棟の平面図、および機器の設置位置を示す。実験棟の前には、 幅約2 m の歩道を挟んで片道1車線の道路が走っている。窓サッシから2 m 離した建屋内に測定点Aとして SA-A1 を設置した。建屋窓サッシから0.5 m 離した実験棟のポーチ部分に、測定点Bとして無線部を設置した。SA-A1及び無線部には、マイクロホン(UC-59)、プリアンプ(NH-22)をそれぞれ装着した。測定点Aと測 定点B間の窓は閉め切った状態である。測定点A及び測定点Bともに、1/3オクターブバンド分析のLAeq、1 minを測定した。従来の測定手法では音源側でない窓を通して 室内への約20 m のケーブル配線が必要になるが、無線により作業性が大きく改善された。また、現場にドラムリール型延長コードを持ち込む必要もない。SA-A1 上で無線部の測定データも確認することができるため、測定時には建屋内外の測定データをリアルタイムに比較することができ、図4(右)のような時間‐レベルグラフ、 1/3 オクターブバンド分析結果を確認できた。
 本体部は最大4つの無線部と無線通信することができる。そのため、無線部を増やすと、測定対象に応じて容易に建屋内外での複数点同時計測が可能になる。

図3 建物の平面図

図4 測定風景と測定中のキャプチャ画面

■ おわりに
 直感的な操作を実現した操作性、そして有線、無線を含めた柔軟な構成ができるSA-A1 シリーズを紹介、無線測定が有効な一例を示した。現場測定の幅を広げる製品として役立てれば幸いである。

表1 主な仕様(SA-A1 シリーズ全体)

入力端子
4チャンネル、汎用DC 入力または回転パルス入力(SA-A1WD 利用時、最大4台計16 チャンネル)
センサ駆動電源CCLD
2 mA、24 V(4 mAファクトリオプション)
入力レンジ
−40 dB 〜 +20 dB、20 dB ステップ、0 dB ref. Vrms = 1 V
A/D 変換器
24 bit Σ-Δ型、同時サンプリング
トリガ
外部、波形、レベル、タイム(プログラムに依る)
表示部
10.1インチカラー液晶1280×800 pixels.タッチパネル
接続
SA-A1B4 接続用専用端子
100BASE-TX (RJ-45)
IEEE802.11a/b/g/n 2.4 GHz、5 GHz
記録媒体
SDHC 対応 最大32 GB
電源
AC アダプタ、リチウムイオンバッテリ(連続動作約4時間)
大きさ・重さ
SA-A1:約275(W)×30(H)×188(D) mm、1.2 kg(SA-A1B4 装着時、バッテリ280 g 含む)
SA-A1WD:約193(W)×42(H)×95(D) mm、500 g(単3乾電池8本電池含む、アンプ部除く)
SA-A1WL1:約54(W)×21(H)×84(D) mm、100 g(バッテリ含む)

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