2010/4
No.1081. 巻頭言 2. 補聴器試聴システムの開発 3. お呼び出しチャイム 4. 圧電式加速度ピックアップPV-90T
<技術報告>
TEDS対応 『圧電式加速度ピックアップPV-90T』
リオン株式会社 環境機器事業部 開発部 大 八 木 淳 史
1. はじめに
圧電式加速度ピックアップ(以降、加速度ピックアップ)を用いた振動の計測において、感度等の加速度ピックアップの情報を測定器等の測定系に反映させる必要がある。その反映させる手段としては、手入力による設定と加速度ピックアップに内蔵されたTEDS(Transducer Electronic Data Sheetの略。IEEE 1451.4に対応。)による自動設定が挙げられる。例えば、感度の設定において、測定系に含まれる加速度ピックアップの個数が少ない場合、手入力でも大きな労力とはならないが、加速度ピックアップの個数が増えていくと、この作業が負担となってくる。また、感度の設定ミスが生じるリスクも増えていく。こういったケースに対して、TEDSによる自動設定では、感度設定の労力を省くことができ、さらに設定ミスのリスクが無い点、メリットは大きい。すなわち、加速度ピックアップを測定系に対し、プラグ・アンド・プレイとして扱うことができる。
『圧電式加速度ピックアップPV-90T』はTEDSに対応した1軸の加速度ピックアップであり、上記のような利便性を持ち、小型・軽量である。その特徴、性能、システム構成例について報告する。
図1 PV-90Tの外観2. PV-90Tの特徴
PV-90Tは、アンプ内蔵で小型・軽量、TEDS対応といった点に特徴がある。小型、軽量のため、測定対象物へのピックアップ質量の影響が小さく、軽量構造物の振動測定やモード解析など、幅広く使用できる。また、CCLD(constant current line drive:定電流駆動)入力を持つ振動計や分析器、データレコーダなどの機器に接続して使用でき、さらに、TEDSに対応した振動計や分析計、データレコーダに対してはTEDSの読み出しができる。図1に外観を示す。外形寸法は7 mm(六角の対辺)×11 mm(高さ)、質量は2 gとなっている。測定対象物への取り付け方法としては、ねじ止め(M3ネジ)の他、絶縁アタッチメントを介しての接着固定がある。図2に加速度計測とTEDS読み出しについての概念(IEEE1451.4準拠)図を示す。PV-90Tの内部に圧電素子とアンプ(加速度信号ライン)及びEEPROM(TEDS信号ライン)が内蔵されており、印加電圧によってこの2つのラインが切り替わるようになっている。PV-90Tが接続される測定器側で供給電圧を切り替え、加速度信号又はTEDS信号を取り出すしくみになっている。
(画像をクリックで拡大図を表示)
表1 PV-90Tの主な仕様
項 目 仕 様成分数 1成分
(取り付け面に直行する方向)電圧感度 0.5 mV/(m/s2)
(at 80 Hz、23℃)電圧感度の温度係数 −0.2 %/℃周波数範囲 1〜12000 Hz
(±10 %)横感度比 5 %以下
(30 Hz)最大測定加速度 7000 m/s2
(peak値)ベース歪み感度 0.05(m/s2)/μstrain 以下
(3 Hz HPF使用時)自己ノイズ 30μV(rms)以下
(周波数範囲 3 Hz〜20 kHz、23℃)駆動電源 DC18 V〜30 V
(定電流2〜4 mA)絶縁 非絶縁ケース材料 チタン固定方法 ネジ止め
M3ネジ動作温度範囲 −20〜100℃
TEDS通信は−20〜85℃外形寸法 約7 mm(六角の対辺)×11 mm(H)質量 約2 g
3. 性能
表1にPV-90Tの主な仕様を示す。電圧感度は0.5 mV/(m/s2)であり、自己ノイズは30 μV(rms)以下、最大測定加速度は7000 m/s2である。周波数特性、ベース歪み感度、電圧感度の温度特性、熱過渡応答についての代表特性は図3に示す。PV-90Tの取り付け方法をねじ止めとした場合、絶縁アタッチメント(VP-53E:付属品)を介して接着したときの周波数特性に比べて共振周波数が若干高くなる。また、代表特性では両者とも1 Hzから12 kHzの周波数範囲で±10 %(80 Hz基準)に収まっている。電圧感度の温度特性はマイナス傾斜を示し、傾きは−0.2 %/℃程度になる。動作温度範囲は−20 ℃から100 ℃で、TEDS通信動作は−20 ℃から85 ℃ である。
4. システム構成
図4はPV-90Tを用いた振動測定システム構成例である。PV-90Tはコア付き加速度ピックアップ用コード(VP-51LC:付属品)と組み合わせた場合、CEマーキング(EMC指令:2004/108/EC、EN 61326-1:2006/IEC 61326-1:2005)に適合する。また、加速度ピックアップ用コード(VP-51L:オプション)にも接続できる。振動計ユニットUV-15や汎用振動計VM-83はCCLD入力を持ち、VP-51LCやVP-51Lを直接接続することができる。さらに、UV-15の出力(出力端子:BNCコネクタ)を周波数分析処理器SA-02やデータレコーダDA-20、DA-40に入力(入力端子:BNCコネクタ)することもできる。一方で、SA-02、DA-20、DA-40もCCLD入力を持ち、BNCアダプタVP-52C を介してPV-90Tを接続することができる。また、UV-15やSA-02はTEDSに対応しており、PV-90Tの感度情報を読み取って自動的に感度設定を行うことができる。特に多チャンネル接続時のメリットは前記のとおり大きい。
図4 システム構成例
5. おわりに
『圧電式加速度ピックアップPV-90T』について、報告した。小型・軽量であることから、取り付けスペースの小さい場所や軽量構造物の振動測定にも対応できる。また、TEDSにより、モード解析等の多チャンネル計測のセットアップにかかる負担を低減させることができる。多様な振動の測定現場に対し、上記のような点でPV-90Tが少しでもお役に立てることを願っている。また、PV-90Tが、よりお客様のお役に立てるよう、また今後のより良い製品開発に繋げるよう、お客様からの声をしっかり受け止めていきたいと考えており、そのような声をいただければ、光栄である。