1998/1
No.59
1. 謹賀新年 2. 音の形と相 3. 高速移動体上の騒音発生源の同定 4. 携帯の美学 ポケット蓄音機 5. 積分型普通騒音計 NL-06 6. ISO NEWS
 
 謹 賀 新 年

平成10年元旦
理事長 山 下 充 康

 早いもので平成も二桁の年を迎えました。十年一昔と言われますが十年は一つの区切りのスパンなのかもしれません。

 十年前の平成元年は、北京天安門の悲劇、ベルリンの壁撤去、ルーマニアのチャウセック政権崩壊など世界史に残るような数々のドラマティックな事件が伝えられた激動の年でした。

 消費税が導入され、一円硬貨の復権が見られたのもこの年、そして天井知らずと言われた好景気ムードに微かな陰りが見えはじめ、パブル現象が露呈、以来、経済活動の破綻と不況の黒雲が拡がって、今や日本国が暗雲にすっぽりと覆われた観があります。

 好景気に浮かれ気分で過ごす内に、われわれに大きな油断があったようです。十年の歳月の中、息を殺して動き出す時を待ちこらえていた妖怪が足元に巣くっていたことに気付きませんでした。近年、世紀末的な混沌がいよいよ農さを増して、妖怪どもが活発に蠢き始めた気配が感じられてなりません。

 一部なのでしょうが、ことさらに不健康さを強調する容貌風体の若者たち、繁華街の一角には地べたにしやがみ込んでたむろする得体の知れない少年たち、何を語るか耳に押しあてた携帯電話族の横行、エステサロンやらグルメやらと徒党を組んでのし歩くご婦人たち・・・、自分が妖怪どもの手先にされていることに気付いて欲しいものです。  日本の将来を担うべき若者たちが、国を思うことを忘れ、自らの人間としての尊厳を意識しなくなってしまったことに恐ろしさを感じざるを得ません。悲しむべきは、その傾向が社会の指導的な立場にある人々にまでも見られることでありましょう。

 こんな世間に誰がしたと嘆き合うのも無理ないことですが、政治や行政のあり方を非難するだけでなく、各人が日本国を思い、個々の生きざまを省みる意識を持つべき時期が来たように感じます。

 オゾン層保護のためにフロンガスの全廃を提唱したヘルシンキ宣言が出されたのも十年前、そして昨年末には地球温暖化防止京都会議が開催され、日本がグローバルな環境保全活動の指導的な役割を担いました。背筋を伸ばした日本の毅然たる姿勢を世界に向けて示したものでした。日本の国力が衰え切ったものではないことが明示されました。  「憂国」などと言うと陳腐に聞こえますが、昨今の世情を見るに、人々の国を思う心が消えかけているように思えてなりません。今や妖怪どもが出現しやすい環境条件が整っています。油断のないように用心しなければなりません。

 還暦を迎えるこの年、年始のご挨拶に代えての放言をおゆるし願います。

 皆様のご多幸をお祈り申し上げます。

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