2017/10
No.138
1. 巻頭言 2. ICBEN2017に参加して 3. デシケータ 4. 物質の機械インピーダンスを測定する技術の開発
 

 
  ICA の悩みと活動の動向  


理 事 長  山 本 貢 平

 「ICA」には悩みがある。その話をしよう。その前に「ICA」には2つの意味があることはご存じだろうか?一つは“International Congress on Acoustics”である。これは「国際音響学会議」であり、3年毎の国際研究発表会である。もう一つは“International Commission for Acoustics”である。これは「国際音響学評議会」とでも訳される国際組織のことであり、音響学の発展や相互協力に関する活動を話し合う場である。以後、本稿におけるICAは後者を意味する。

 ICA が設立されたのは1951 年である。当初はIUPAP(International Union for Pure and Applied Physics:国際純粋・応用物理学連合)の中の単なるsubcommittee(付属委員会)であった。その後、1996年には同じIUPAPのAffiliated Commission(付属機関)、さらに、1998 年にはIUTAM(International Union of Theoretical and Applied Mechanics:国際理論・応用機械力学連合)のAffiliated Commission に立場を変えた。しかし、依然としてメンバーには「現状の ICAは、物理学や機械学という狭い分野に付属する組織でしかない。一方、音響学は人の生活環境と騒音、通信における音声伝達技術や翻訳変換、医療分野での超音波診断技術など、広い範囲の科学・技術によって人類に果たす役割が大きい。にもかかわらず、音響学の認知度が極めて低い」との思いがあり、これがICA の悩みであった。

 2004 年の京都における総会では、「音響学は物理学や機械力学だけでなく社会学、心理学、生理学、生物学、化学な どに関連した総合的な科学であって、『環境と持続的発展』における国際的役割は大きい。音響学の国際的な認知度を上げ、ICA の発言力を高くするためには現在よりも高い位置に登録したい」としている。そこで、ICA はIUPAP や IUTAM の上部機関であるISCU(International Council for Science:国際科学会議)に申請を行い、2006 年には、その直接の傘下であるInternational Scientific Associateに登録されることとなった。これにより、ICAはICSUのGeneral Assembly に出席して発言権と投票権を得たことになる。

 現在ICA は、America 地域が8団体、Asia/Pacific 地域が10 団体、Europe/Africa 地域が29 団体の合計47 の加盟団体と、5団体のオブザーバで構成されている。これらに、International Affiliate Memberとして8団体(EAA, FIA, I-INCE, IIAV, WESPAC, ICU, ICBEN, AES)が加わっている。理事会は15 人の理事と前記国際団体の代表者8名から構成さ れている。これらメンバーによって、国際シンポジウムの支援活動、若手研究者支援活動(Yearly Career Awards、 Young Scientist Grants)、次期ICA(国際音響学会議)の計画等が推進されている。とりわけ若手研究者の育成には力を入れている。近年の大きな活動としては、International Year of Sound 2020(音の国際年2020)の提案と推進を行っている。これはユネスコの活動の一部であり、科学が如何に人類の幸福に貢献しているかを、世界的な規模で啓蒙する 活動である。この活動を通じて音響学が如何に人類の安全・安心と幸福に寄与しているかを世界に知らせ、音響学の国際知名度を現在以上にアップすることがICA のねらいである。そのことによって悩みの解消を図りたいのである。

 

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