2016/ 1
No.131
1. 巻頭言 2. 岡小天特別賞とバイオレオロジー 3. 呼び出し電話 4. 多点監視用パーティクルセンサ KA-05
 

 
  ベートーベンの第九番シンフォニー    平成28 年(西暦2016 年)元旦


理 事 長  山 下  充 康

 昨年は日本人のノーベル賞連続受賞など明るいニュースもありましたが、オリンピックに 係る不祥事、常総地域を襲った集中豪雨による鬼怒川堤防の決壊と、残念な出来事が心を痛めた事でした。豪雨をもたらした「線状降水帯」という耳慣れない気象用語が一般化したのも水害の置き土産でした。被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

 本稿を執筆している時期、日本中の音楽会場はベートーベンの第九番交響曲であふれかえっています。年末の第九コンサートが一般化したのはいつの頃からか定かでありませんが、これは日本独自の習慣だそうです。一説には年越しのボーナス、い わゆる餅代を支払うために、楽団員や来客数が多い出し物を比較検討した結果、第九が選ばれたのだとか。ともあれ「歓喜の唄」で締めくくられるこの曲は、い かにも新しい年を迎えるにふさわしい音楽といえましょう。

 習慣といえば、毎年歳の瀬には「ジングルベル」が鳴り渡り、それに加えて近年、晩秋に 「ハロウィーン」などと称して西洋の化け物に扮した若者たちが巷を盛んに闊歩する奇妙な習慣が日本国に上陸、普及しました。21 世紀に入って早くも15 年、今や社会人にも平成生れが珍しくありません。年頭からジイサンのノスタルジーを語るのは如何なものかと考えますが、LP やSP、EP のレコード盤が骨董品店に並べられ、一世を風靡したカセットテープが姿を消し、MDすらも今では再生が困難になりました。エレクトロニクスの目まぐるしい変化について行けないと感じることも少なくありません。加齢のせいでしょうか、時代は変わったと実感する機会が増えてまいりました。

 とはいえ、時代が変わっても変わらないものが在ってもよいのではないでしょうか。第九番交響曲で年が暮れるのは日本独自の習慣と申しましたが、クラシック音楽は変わらず在り続けて欲しいものの一つです。毎年1 月1 日にはウィーンフィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートで、ポルカやワルツの軽やかな音楽がテレビ中継されます。会場のコンサートホールは、 ウィーンの楽友協会が19世紀から変わらず大切に使い込んできた歴史があり、今なお世界最高の音楽ホールと讃えられています。

 小林理学研究所は今年で76歳を迎えます。音響、振動の研究に携わって長い時間が経過 しました。今日でもドローンなどの新技術を活用し、更なる成果向上に挑戦し続けているのは本紙でもご紹介したとおりです。一方で役目を終えた研究成果の一部は「音響科学博物館」に展示しています。古色蒼然としていますが、どれも音響学の黎明期に諸先輩方が音を科学するため、苦労と苦心を重ねた実験道具などの数々です。長い研究の歴史を振り返りながら、変わらずに在るべき研究者の心に思いを致す機会となればと存じます。本年も多数のご来館、お待ちしております。

 

−先頭へ戻る−