2005/1
No.87
1. 巻頭言

2. Low frequency 2004

3. プラニメータ(面積計測器) 4. 第23回ピエゾサロン 5. リオネット新製品 デジタリアンS/new JOYTON
      <技術報告>       
 リオネット新製品 デジタリアンS / newJOYTON

リオン株式会社 聴能技術部 堀 田  聡

1. はじめに
 "デジタリアンSシリーズ"、"ジョイトーンシリーズ"は平成16年8月に発売されました。

 "デジタリアンSシリーズ" はアナログノンリニア補聴器の良さを、どうやってデジタル補聴器に取り込むかがポイントでした。アナログ回路による圧縮時の時定数変化をプログラムに置き換えることで、良さを取り込むことに成功しました。

 さらにフィッティングソフトの操作性の良さを追求して、簡単に最適な調整状態に合わせられる調整器の構成にしています。今回新たな試みとして、調整時にお客様自身が異なる音質感を選択できるようにと「内部処理変更機能」を追加しています。この機能により、従来のKタイプ補聴器の音質から昨今のデジタルの音質まで好みに合わせて選択できます。お客様ごとのライフスタイルに最適な処理を選べる「内部処理変更機能」はモニター結果で非常に良好な結果が出ました。まさに従来のデジタルから一歩進んだ、「聴こえのステップアップ」を実現した補聴器です。

 "ジョイトーンシリーズ"は従来のジョイトーンシリーズの主にソフトウェアでの調整機能を改良し、補聴器の基本的な調整機能に重点を置き、扱いやすさの向上をはかり、ミドルクラスのデジタル補聴器として開発されました。

 デジタリアンSシリーズ、ジョイトーンシリーズ共に、スーパーミニカナール(CIC)のHI-G1S/HI-G1E、カナールエイドのHI-G2S/HI-G2E、耳かけ形のHB-G1S/HB-G1Eのそれぞれ3機種となります。

"デジタリアンSシリーズ""ジョイトーンシリーズ"
製品構成

2. デジタリアンSシリーズについて
 K-ampと呼ばれる世界中で評価され認められた補聴器用ICを登載した当社補聴器が「K」タイプ補聴器です。「K」タイプ補聴器最大の特徴は、入力音の継続時間により圧縮時の「リカバリータイム」が変わることにあります。この特徴により、母音のような大きな音素が入った後でも子音に対して十分な利得を与えることができ、また、急激なレベル変化による音圧の違和感を抑えることができました。

 従来のデジタル補聴器では上記の特徴がない為、周波数特性、入出力特性を「K」タイプ補聴器に近づけたとしてもその聴こえは「K」タイプ補聴器と大きく異なり、「K」タイプ補聴器をご使用のお客様がデジタル補聴器へ買い換える際に大きな障害となっている場合がありました。

 製品を開発するにあたり「K」タイプ補聴器のアナログ回路による圧縮時の時定数変化をプログラムに置き換えることで、「リカバリータイム可変型」の処理アルゴリズムを実現しました。さらに「シングルチャンネル処理方式」「ワイドダイナミックレンジコンプレッション」の処理アルゴリズムで「K」タイプ補聴器との近似性を高めることでスムースな買い替えを促進させます。

 このままでは「アナログをただそのままデジタルに置き換えた」ということになってしまうので今までにない新たな発想を試みました。この補聴器はリオン初のオープンプラットフォームDSPで従来の補聴器用DSPよりも自社のオリジナリティーを出しやすい特徴があります。他社に存在しない特徴として「調整器ではなく、基本となる補聴処理自体を変更できる」つまり2種類の補聴器をお客様が自由に選択できる自由度を持った内部処理変更可能な補聴器を作り上げることにしました。

 選択可能な2種類の処理は、従来のアナログノンリニア補聴器からの違和感のない置き換えとデジタルならではの処理を融合した「シングルチャンネル処理」と、「K」タイプ補聴器の良さと従来デジタル補聴器の良さを融合した「マルチチャンネル処理」です。基本調整器構成は同じなので、どちらを選んでも製品のコンセプトは保たれます。

3. ジョイトーンEシリーズについて
 従来のジョイトーンシリーズからの追加となった調整器として、
・ 各チャンネル独立調整
  低音チャンネル、高音チャンネル毎に調整可能となり、より自由度の高い調整が可能となりました。
・ "TK"の搭載
  比較的静かな部屋などでのノイズ感の低減やそれとは逆に小さな音をより明瞭にする事が容易になりました。
・ クロスオーバー周波数"FC"を搭載
  高音急墜型や低音障害型などのオージオグラムへの対処が容易になりました。
・ エクスパンションの搭載
  特に静かな場所でのノイズ感の低減を有効にしました。
・ デジタルダンパーの搭載

   第一ピーク周波数の利得、出力を低減させる為のパラメータです。従来のダンパー交換の手間を省きパラメータとして容易にピークを低減させる事が可能となりました。

 その他音質調整器、TONEH、TONEL、圧縮比の調整器CRC、出力制限装置OPC等を搭載し従来のジョイトーンシリーズよりも調整の幅が広がりお好みの音質へ近づける物となっております。

 またその他にも従来のデジタル補聴器でご好評頂いております様々な機能(おまかせ回路(HI-G1Eは除く)、電池交換お知らせ音)も搭載しております。

 また携帯電話からのノイズの影響に関しても快適にご使用頂ける様努力し、外来ノイズの影響も低減しております。

4. 最後に
 デジタリアンSシリーズに関しては、初めての試みであるので開発は非常に困難でしたが、市場に出た補聴器を本社に戻すことなく店頭でのバージョンアップを可能な柔軟性のある構成に仕上げることができました。今後の補聴器のターニングポイントとなる製品に仕上がったと確信しています。

 ジョイトーンシリーズ3機種は、"ジョイトーン"の名前を引き継ぎリオンの補聴器として"ジョイトーン"の名前、そして製品が装用されるお客様からフィッティングされる販売店の皆様までに愛される製品となります事を願っております。

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