2004/10
No.86

1. 原爆の日に想う

2. 残響室法吸音率測定における室形状の影響

3. 計 算 尺 4. Inter-noise2004報告 5. 航空機騒音のリアルタイム情報公開システム
       <会議報告>
 Inter-noise 2004報告

圧電応用研究室 児 玉 秀 和

 平成16年8月22日〜25日の4日間、チェコ共和国の首都プラハにある The Czech Technical University, Faculty of Electrical Engineeringで、Inter-noise 2004 (The 33rd International Congress and Exposition on noise Control Engineering) が開催された。当研究所からは、筆者の他、深田顧問、山本所長、加来騒音振動第三研究室長、吉村建築音響第二研究室長、土肥研究員の6名が参加した。

Inter-noise 2004概略
 Inter-noise 2004はThe Czech Acoustic Society主催で行われ、"Progress in Noise Control for 21st Century" のテーマのもと、全18分野が取り上げられた。その一部を紹介する。
・Noise propagation
・Noise control methods and materials
・Noise in buildings
・Transportation noise (air, road, rail and marine vehicles)
・Instrumentation and techniques for noise measurement and analysis
・Modeling, prediction and simulation
・Regulations and legislation
 このように、本学会が対象とする分野がノイズの発生、伝搬から始まり、制御方法、建築物や交通におけるノイズ、人や社会への影響、測定、解析、モデル化とシミュレーション、規格など多岐にわたることが分かる。
 クロージングセレモニーの最終報告によると、Inter-noise 2004の参加者合計は41カ国、1130人で、これまでのInter-noiseの中で最も参加者が多い会となった。
 論文集に記載された論文数は660件(内プレナリ4件、ポスター93件)、発表された論文数は646件(口頭発表554件、ポスター92件)、セッション数は60であった。また、機器展示も充実していた。50もの機器ブースに、37社が機器展示を行っていた。

Inter-noise 2004 会場入口
Inter-noise 2004詳報
 初日は、プラハの中心を流れるヴルタヴ川のほとりにあるRudolfinumでオープニングセレモニーが行われた。Rudolfinumはチェコ交響楽団の演奏会場として有名である。ここでは、Prof. Jiri TichyによるKeynoteに続き、楽団による演奏が催された。
 2日目から3日間、各セッションの研究発表が行われた。会場となった校舎は、Ground Floorにレジストレーション会場、1F〜3Fの教室に口頭発表会場、廊下にポスター発表と機器展示ブースが設けられた。プログラムは3日間とも8時半(一部9時)から1時間、1件のみPlenary Sessionが行われ、それに続き12のParallel Sessionが行われた。Plenary Session会場は数百人が収容可能な大会場であった。初日の発表は、橘I-INCE会長の "Application of new technologies to sound insulation"であった。会場は多くの立見がいるだけでなく、学会特有の厳粛な雰囲気に包まれていたことが印象深い。そのような中で橘会長はISO 15186で規格化されたインテンシティ法をはじめ、Swept-Sine法、Power Difference法など最近の遮音測定法を紹介した。
廊下に設けられたポスター展示スペース
 Parallel Sessionは講義室で執り行われた。筆者は最終日の午後に行われたセッション "Radiation and Absorption of Sound"で、"Sound Shielding of Piezoelectric PVDF Panel"を発表した。ここでは、圧電性を持つ高分子膜(ポリフッ化ビニリデン)を用いた小型パネルを作成し、パネルの遮音性能を電気回路で制御した結果を報告した。ここでは1件の基礎的な質問を受けたが、質問者は、近年新しいエレクトレット材料(Porous Polypropylene Electret)を開発したフィンランドにあるVTT Technical Research Centreの若い技術者(M. Antila氏)であった。発表後は、Antila氏を交え、筆者、深田顧問、Dr. P. Mokryと情報交換を行った。
 24日夜に、ホテルプラハで行われたバンケットに参加した。ホテルは市街のはずれの小高い丘の上にあり市街を一望できる。偶然隣席に座られた方は、東京都立科学技術大学(東京都日野市)の田中教授であった。教授はPVDFを使ったセンサー開発を、工業技術院機械技術研究所におられたときから進められている。これを機会に教授の持つ機械分野の知見と筆者の物性の知見を数多く交換することが出来た。また、研究所と大学が近く、今後とも交流を図らせていただくようお願いした。
 さて、ここで他に印象に残ったことを二つ挙げる。一つはポスター発表の様式である。本会は数分の要約発表だけでなく、ポスター発表のプログラムも無い。これにはポスター発表を行った土肥研究員も事情が分かるまで戸惑っていた。その代わり、ポスター掲示板の右上に発表日と時間を記入する"欄"が設けられており、講演者はこれらを自由に決めることが出来るのだ。これは、発表時間の廊下の混雑を避けるための策であろうか。内容に興味がある人は記入された発表時間に再びポスター前に訪れれば良いという仕組みである。
自己記入制のポスター発表日と時間
 もう一つは、この会場のフロア移動で利用した定員2名のエレベータである。70〜80年代の建造物に多く採用されたもので、ベニア板製のリフトはゆっくりではあるが停止することなく上昇、下降を繰り返す。まず扉が無いことに驚いたが、全てチェコ語表記のため、安全装置の有無も分からない。筆者はこれをよく利用したが、リフトと建物に挟まれやしないかと思うあまり、抵抗無く利用できるまで丸一日を要した。
フロア移動に使った昇降機(左:上昇 右:下降)
最後に
 本会に参加した後、Mokry夫妻と再会する機会を得られた。Mokry氏はチェコから日本への留学生として、平成12年より2年間、当研究所の圧電応用研究室で研究を行った。Mokry夫妻に丁寧に案内をしていただき、旧市街広場、カレル橋を経てプラハ城を巡れたことは良い思い出である。
プラハ旧市街広場天文時計下にて
背後に見えるのは聖ミクラーシュ教会
(右より Mokry夫妻、土肥研究員、山本所長、深田顧問)

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