2003/4
No.80
1. ニュース刊行20年に際して 2. 間伐材を用いた吸音性遮音壁の開発 3. 音 叉 4. 新型振動レベル計 VM-53/53A
       <技術報告>
 新型振動レベル計 VM-53/53A

リオン株式会社 計測器技術部 蓮 見 敏 之

1.はじめに
 われわれを取り巻く環境にはあらゆる振動が発生している。地震や地殻変動による振動、モーターやエンジンなどの機械振動、自動車やトラック・鉄道などの交通振動、工場・建設作業場などから発する振動などさまざまである。
 今回開発した振動レベル計VM-53/VM-53Aは、交通振動や工場・建設現場などの地盤振動に関連する環境振動を主に計測、評価することに用いられる振動計である。

2.VM-53/53Aの概要
 VM-53/53Aは計量法 振動レベル計及びJIS C 1510:1995に適合し、人体の振動感覚特性の補正をおこなう振動感覚補正回路を備えている。
 図1はVM-53Aの正面写真である。液晶画面を2つ設け、下部に操作パネルを配置して視認性、操作性を向上させた。入出力端子は従来と同じく上部に配置し、地面や平らな面の上に置いて、簡便に操作できるように配慮している。

図1 VM-53A
 
図1 VM-53A

 本器はVM-52/VM-52Aの後継器にあたり、従来器の基本機能を踏襲しながらオートストア機能や自動測定機能などの機能充実化をはかっている。

2-1 新型ピックアップPV-83Cの開発
 ピックアップPV-83Cは鉛直方向及び水平2方向に受感軸を持つ圧電型加速度ピックアップである。PV-83Cでは従来器PV-83Bからケーブルの軽量化 / 細型化を行った。そのため、ケーブル設置の取り回しが向上し、さらにケーブルがゆれた時のピックアップへの影響が軽減されている。

2-2 ディジタル処理の活用
 本器では、従来アナログで行なっていた振動感覚補正回路および実効値検波を3方向同時にディジタル処理で行なっている。そのため、VM-53/53Aの計測値について、高精度化、高安定化を達成することが出来た。

2-3 2種類の液晶画面を搭載
 今回VM-53/53Aでは視認性のよいバックライト付液晶を2つ搭載している。左側のメイン画面では、選択した1方向の振動レベルをバーグラフとともに大きく表示させている。さらに右側のサブ画面では、3方向または1方向のレベル-タイムや3方向バーグラフ、設定確認画面などを表示可能とした。レベル-タイムやバーグラフは3方向を同時に表示することも可能であり、現場の振動環境をより把握できるようにしたものである。

図3 3方向バーグラフ表示
 
図4 3方向rベル-タイム表示

2-4 メモリーカードの採用
 騒音計NL-20シリーズと同様に、VM-53AにおいてコンパクトフラッシュカードTMの使用を可能にした。その結果大容量データが保存可能になり、16MBカードでは100m秒毎の3方向瞬時値であれば8時間までの記録を行うことが出来る。
 タイマーを使用したストアも出来るため、長時間の無人測定にも有効となっている。
 メモリーカード機能はVM-53Aのみの機能であり、メモリーカード機能の有無がVM-53とVM-53Aの違いとなっている。

図5 VM-53A メモリーカード挿入状態

2-5 自己ノイズ
 振動レベル計は公害振動だけでなく、構造物の微振動計測にも利用されることがある。図6に代表値を示すが、平坦特性(Lva)の場合15dB程度(0dB=10-5m/s2)となっている。

図6 ノイズレベル測定例

2-6 リニアリティレンジの向上
 アナログ回路の見直しとディジタル処理の採用により、リニアリティレンジ70dBを確保している。その結果、レンジ切り替えがなくても連続測定が可能となっている。

2-7 新ケーブルの採用
 ピックアップPV-83Cの項でも示したが、ピックアップケーブルおよび延長ケーブルにおいて、ケーブルの軽量化、細型化を行なった。なお、コネクタは従来と同一タイプを採用しており、互換性を持っている。
 振動レベル計の測定は延長ケーブルの使用が多く、取り回しのしやすさや軽量化が望まれており、従来ケーブルφ6.2mmからφ5.0mmへの変更を行った。その結果一回り小型のリールにすることができ、100mリール付延長ケーブルで1.2kg減(従来ケーブル8.4kg)の軽量化を行うことが出来た。
 なお、耐久性については従来ケーブルと同レベルであり、500g過重の屈曲試験で10万回以上を達成している。また、防水性能も施されている。

2-8 プログラムオプションカード
 VM-53Aにはプログラムオプションカードが使用でき、VX-53RT(1/1、1/3分析カード)を開発中である。VX-53RTは振動レベルまたは振動加速度レベルの瞬時値またはLx、Leq、Lmaxの1/1、1/3オクターブバンド分析処理が可能である。本器1台で現場での分析が簡便にでき、振動の発生原因調査や対策について有効であると考える。

2-9 商用電源使用時に内蔵電池で停電保証
 VM-53/53Aの電源には単2形乾電池とACアダプタが使用可能である。
 アルカリ乾電池の常温連続使用時間は約35時間であるが、図7に温度の違いによる測定時間例を示すので参考にしていただきたい。  
 なお、乾電池を入れておけば、ACアダプタ使用時に停電が発生しても、乾電池がバックアップするように停電保証機能を設けている。

図7 電池寿命の温度特性

 商用電源が使用できない場所での長時間測定については、外部電源端子にバッテリーパックBP-21を使用することにより、本体部の乾電池とともに常温連続100時間の測定が可能である。

3.おわりに
 新型振動レベル計VM-53/53Aを紹介させていただいた。本器は当社における振動レベル計の7世代目であり、今後も引き続き環境振動分野やそれ以外の振動計測分野に対しても利用され、活躍できるよう望んでいる。

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