2002/4
No.76
1. 創立60周年記念施設の完成 2. 創立60周年記念施設建築音響試験室棟 3. レコード針収納箱 4. 第15回ピエゾサロン

5. 聴覚フィルタの簡易測定

6. 創立60周年記念施設披露式開催
 
 
創立60周年記念施設の完成

所 長 山 本 貢 平

 小林理学研究所が一昨年の夏(2000年8月)に創立60周年を迎えたのは、まだ記憶に新しいところです。私達はこれを契機として、新たな研究展開を図るためのさまざまな構想を練って参りました。その一環として建築音響の新しい試験設備の建設計画を立てました。そしてこのたび、試験設備がようやく完成の運びとなりましたことを皆様にご報告致します。

 建築音響の新たな試験設備とは遮音性能試験設備と床衝撃音試験施設です。この内、遮音性能試験設備では2000年に改定されたJIS A 1416に対応するタイプII試験室を実現しました。タイプII試験室は、1995年以来のJIS国際整合化の波を受けて、従来の残響室(タイプI)に加えて規格化された試験用設備の一つです。すなわち当時は日本の非関税障壁が問題となっていた時代でもあり、産業製品を自由に輸出入するためには、工業規格を国際的に共通化する必要がありました。そこで多くの日本工業規格に世界標準であるISO規格が取り入れられました。その一つが音響分野の遮音性能試験法であり、タイプII試験室はISO 140-1, 140-3に対応するものです。試験室の詳細は別項に譲ります。

 さて、小林理研は創立の当初から実験を中心とした研究を行い、その成果を世の中に広く発表して参りました。実験中心主義は諸先輩から引き継いできた伝統ともいうべきものです。したがって当所の実験設備には、諸先輩の輝かしい歴史がきざまれています。また、現在の私達も実験こそが物理学の原点であると考えています。すなわち実験によって新たな知見を得ることができ、新たな研究展開が可能になると考えています。

 昨今は、研究費の縮小と相まって実験よりもコンピュータの能力を駆使したシミュレーション実験が盛んに行われるようになりました。コンピュータの能力が急速に高性能化し、しかも価格がかなり安くなったためです。これまでは時間のかかった複雑な計算があっという間に終わってしまい、画面上に美しいグラフや動画が容易に描けるようになったのは驚くべきことです。しかし、このコンピュータがつくり出す世界は自然界を近似した仮想世界であることには違いありません。一方、我々は仮想世界ではなく実像の世界に住んでいます。したがって、実世界を知るには物理実験以外のどのような手段も説得力はないと考えています。今後、我々はこの新たな設備を利用して様々な研究を進めたいと思います。またその成果を学会の場に発表すると共に、ISOやJISなど規格を検討する場へもフィードバックしたいと思います。さらに、生活環境をより好ましくするための試験研究にも、この設備を役立てる所存です。今後とも皆様方の御支援ご鞭撞をお願い致します。また、お立ち寄りの際は、私達の研究施設をご案内致しますので是非ともお声がけください。

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