1996/7
No.53
1. 残したい"日本の音風景100選" 2. スリッパが怖い 3. [The Rattle夜警用警報器] 4. 1/2インチ高温度用マイクロホン UC-63L2
   
 残したい"日本の音風景100選"

理事長 山 下 充 康 

 去る6月5日、各紙の朝刊に「日本の音風景100選」が環境庁から発表された旨の記事が掲載された。北はオホーツク海の流氷のせめぎあう音から南は沖縄の伝統行事のエイサーまで、全国津々浦々から様々な音が「残したい日本の音風景」として選ばれた。

 これについてはテレビやラジオでも報道されたので、気付かれた方々が少なくないと思う。

 平成7年の秋、環境庁から日本の音環境を「好い音」の視角から見直したいという、従来とはひと味違う内容の企画についての相談が持ち掛けられた。「日常生活の中で耳を澄ませば聞こえてくる様々な音の再発見を促す」ことによって、無駄な音の少い「良好な生活環境を保全しよう」というのがこの企画の狙いである。

 環境庁の依頼によって、音環境の問題に係わってこられた方々(9名)からなる「日本の音風景検討会」を組織して具体的な企画の作成と選定審査に当たった。

 騒音は典型7公害の中で苦情件数が最も多く、環境庁においても騒音低減を実現するための施策が多角的に検討されてきた。その中にあって、平成5年に5か年計画でスタートした事業に「音環境モデル都市事業」がある。

 この事業について、環境庁は「都市における快適な環境(アメニティ)の向上の一環として住民などの生活騒音防止活動を積極的に支持する観点から、サウンドスケープ的手法を取り入れたモデル事業」と説明している。毎年4自治体に事業委託をして継続中である。音を騒音としてではなく生活要素の一つとして捉えることによって好ましい音環境を保全しようとする考え方をさらに発展させたのが今回の「日本の音風景100選」である。

 生活の場には耳を傾けたくなる音が在るはずだから、そんな音を大切に保存しようではないか。ついては、残したい日本の音を公募し、その中から100を選んでこれを環境庁が認定しようとした次第である。

 公募期間は一月から三月下旬の短期間であったが、全国の地方自治体、個人、NGO等各種の団体から738件の応募があった。検討会では全委員が総ての案件に目を通した上で全体討議を繰り返し選定に当たった。特に生活とのかかわりと地域的なバランスを重視したので、寄せられた各案件の背景や周辺条件などの調査が必要なため、事務局には一方ならぬご苦労をおかけした。

 絞り込まれた100件から漏れたものの中に沢山の残したい音風景があったことを申し添えておく。

 小林理研の在る台地からの湧き水が日本名水100選の一つに指定されている。国分寺市は湧水の流れに沿って自然石を敷いた遊歩道を整備した。どうということのない細い流れだったが、この湧水が名水100選に指定されて以来、流れにごみが捨てられなくなった。

 環境美化には「ごみヲ投ゲ入レルベカラズ」と立て札するよりも名水100選に指定したことの方が効果的であったことになる。

 この度の「日本の音風景100選」が生活空間における騒音の低減を促すものとなることを期待してやまない。   
(環境庁:日本の音風景検討会/座長 山下)

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