1996/1
No.51
1. 謹賀新年 2. 音と振動を科学する−研究活動のあり方と課題 3. 公害振動の評価と研究の動向 4. 環境にやさしい鉄道であり続けるために

5. 道路交通騒音の予測と対策に関する研究の課題と方向

6. 音響材料試験に関わる測定精度の追求
7. ダンピング試験と制振材料 8. 航空機騒音問題の歴史(1)
  
 謹賀新年 平成8年 元且

理事長 山 下 充 康

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 小林理研ニュースの第1号が刊行されたのは12年前の昭和58年6月(西暦1983年6月)でした。これまでに50号を数えます。そして今回は51号。本誌にとっては50号の区切りを跨いでの新たなスタートを迎えることになります。

 そこで今回は小林理学研究所で中核的な役割を担っているメンバーたちの初夢を特集することにいたしました。日常の業務の中で各々が感じ取っている様々な事柄を将来の夢に託し、21世紀への研究活動の展望としてここに抜露させていただく次第でございます。御笑覧いただければ幸いです。

 ところで、戦後50有余年、わが国は経済大国として目覚ましい発展を遂げてきました。その基盤には日本の優れた科学技術力が大きな礎として存在したと言われています。とくに応用科学の面でわが国が果たしてきた先進的な役割は諸外国からも高く評価され、将来に向けてさらなる期待が寄せられているものと考えます。

 私たちは科学技術の果たす役割の大きさを十分に知っています。しかし、昨今の世界的情勢を見ると応用科学に関して日本が諸外国に追いつかれ、追い越されつつあることに気付かされるのではありますまいか。

 昨年の秋、10月31日、衆議院で「科学技術基本法」が可決され、11月8日の参議院本会議でも可決、成立しました。衆参両院とも超党派による全会一致での可決であったと報じられています。

 「科学技術基本法」は昭和四十年代に一度提案されたものの、文教都会での論議に未解決の課題を残したことなどによって破棄となったもので、以来30年を経てようやくの成立ということになります。  この基本法を受けて今年の5月、6月を目途に「科学技術基本計画」が策定される予定であるとのことですが、「科学技術創造立国を目指すことなくしては二十一世紀の日本の将来はない」という理念が基本コンセプトとして位置づけられており、具体的には、応用研究を支える基盤的な研究に注目し基礎と応用の両方を同時に振興することを提言しています。

 今ここで、行政府が科学技術の発展に対して具体的な施策を打ち出し50年後の日本の生きる道筋を示そうとしたことは、ややもすると諸外国に遅れを取ることになりかねない今日的な状況を考えると、いささかばかり胸をなでおろす気分にさせられるところです。

 小林理学研究所は理学の基礎とその応用を研究し、その成果をもって社会に貢献することを謳って55年に及ぶ活動を続けてまいりました。研究を推進するための環境を整備し、優れた人材の育成と独創的な研究成果の導出を実現することを目途として研究所の運営に当たってきましたが、これは「科学技術基本法」の基本理念と変わるものではありません。小林理学研究所は二十一世紀に向けて、人間にとって好ましい生活環境を創造し、これを健全に保つことを目的に基礎・応用両面からの総合的な研究活動を精力的に遂行していきたいと考えます。

 新たな年の初めに当たり、従来にも増して温かい御支援と御鞭燵をお願い申し上げる次第でございます。 敬具。

-先頭へ戻る-