1991/7
No.33
1. 岡 小天先生と小林理研 2. ガルトンの超音波笛
[エーデルマンパイプ]
3. コンクリート床版の疲労度試験 4. 超音波リークディテクター UM-61型 超音波音源 SF-61型
       <技術報告>
 超音波リークディテクター UM-61型
     超音波音源 SF-61型

リオン株式会社 音測技術部1G 合 田 秋 則

1.はじめに
 リーク(漏れ)を問題にする分野のすそ野は非常に広く、構造物や容器の気密性、配管などにおける液体や気体の漏れなど数眼りないテーマがある。
 簡単に、短時間に、測定対象に悪影響を与えることなく検知可能ならば、産業界、工業界に大いに貢献できると考えられる。
 従来のリーク検知方法としては、人間の五感、煙、水、石鹸水を用いる簡単な方法と加圧してリーク時間を計測したり、放電、磁気、赤外線、ヘリウム等のガスを用いた大がかりな方法がある。しかし微小で屈曲した隙間の検知は、なかなか厄介である。
 また、音による方法の一つに、音響インテンシティがあり優れた方法ではあるが、単にリークの検知と言うことのみであれば、簡単で短時間に安価にできる方法が望ましい。

2.超音波リークディテクターの原理
 微小な隙間を検知するには、原始的な方法ではあるが石鹸や水のシャワーが用いられている。超音波式は同様の原理を用いて水の代わりに音響シャワーを対象物に照射し、もしも隙間があればそこからのリークを検出装置を用いて検知しようとするものである。原理を図1に示す。

図1 原理図

 音響シャワーに用いる音波は、超音波(40kHzを中心周波数とするランダムノイズ)を用いた。その理由として可聴周波数領域の音波でも検査対象を限れば可能であるが、作業環境に悪影響を及ぼしたり、工場内などに発生する他の音に影響されることがある。この弊害の除去作業に労力を費やすようでは有効な手法とは言い難い。
 逆に高い周波数(100kHz以上)は、音源や検出装置の製作が困難なこと、伝搬上の損失が大きくなるなどの弊害がある。そこで、リークの検知には30kHz〜60kHzの周波数が有効であると考え種々の実験を行った。
 実験より微小な隙間における30kHz〜60kHzの超音波は伝搬距離が比較的短く、また隙間によるリークのレベルは形状や厚さにあまり関係せず、その大きさに比例する。さらに隙間近傍の距離減衰は、[−6dB/倍距離]であり、方向性はほとんどないと言う結果を得た。
 今回、この周波数領域の超音波を応用したリークディテクター(UM−61型)と超音波音源(SF−61型)を開発したので紹介する。(写真1)

写真1 超音波リークディテクター(UM-61)
超音波源(SF-61)

3.超音波リークディテクター
 超音波リークディテクター(UM‐61)は人間の聞くことのできない超音波を検知し、可聴周波数に変換し聞くことによりリークの検知を行い、指示値よりその程度を知ることができる。表示部(LCD)は40kHzを中心周波数とした超音波の音圧レベルをデジタルとアナログバーで表示する。レベルの有効範囲は40dBである。また、最大値ホールド、判定レベルオーバー、データメモリーストア(500ポイント)、インターフェースとしてRS‐232C などの機能を備えている。図2に超音波リークディテクターのブロック図、図3にセンサー部の指向特性、図4に内蔵のフィルターの特性を示す。

図2 ブロック図
 
図3 指向特性(40kHz)
 
図4 フィルター特性
4.超音波音源
 超音波音源(SF‐61)は球形で11個の超音波発音体が取り付けられている。超音波発音体は圧電セラミックのバイモルフ振動子にロート状共振子を結合したものである。また、発振部は個々独立に発振する11個の雑音発生器を備えアンプを経由してそれぞれの超音波発音体に接続されている。超音波音源は40kHzを中心とするランダム雑音を発生し空間に均一な音場(100dB以上at30cm)を作りたすことができる。気密性試験の音源に使用する。図5にブロック図、図6に指向特性、図7に周波数分析結果を示す。
図5 ブロック図
 
図6 指向特性
 
図7 周波数特性
5.応用例
5-1.建築物のリーク
 図8は部屋のアルミサッシ窓のシーリング状態を調査した時の例である。部屋の内部に超音波音源を配置しべランダ側から超音波リークディテクターで部屋の内部と外部のリーク試験を行った。建築中の建物であったが工事騒音に妨げられることなく測定することができた。
図8 アルミサッシ窓シーリング試験

 サッシ部とガラスのシーリングは良好であったがアルミサッシ窓をロックした状態において鍵部にリークが検出された。そのレベル差は約12dB程度であった。
 また、建築中の室間のモルタル壁のリーク調査をしたところ施工後のひび割れ、かけ落ち、亀裂によるリークを検出した。調査の結果、床と壁の10〜30cmの所、壁と天井の境にひび割れによるリークが認められた。

5-2.自動車の気密牲試験
 自動車はドア、ボンネット、トランクなど開閉しなければならない部分を持っており、車体本体とウェザーストリップ(ゴムのシーリング材)により車内の気密性が保たれる。これが不十分な場合、微小隙間が生じ放置すれば密閉空間を形成する車内に水漏れが生じたり、走行時に風鳴りを生じたりする。
 図9は車内に超音波音源を配置し、ドア周りのリークを調査している。

図9 自動車のリーク試験

6.おわりに
 超音波を応用し微小隙間からのリーク(漏れ)検知器とその応用について紹介した。
 取り扱いが簡単で非接触であり、比較的大きな構造物が扱え、測定対象物及び測定環境に悪影響を及ぼさない超音波方式の応用範囲は広いと考える。
 本製品の開発に協力いただいた(財)小林理学研究所の畑中、金沢両氏に感謝致します。

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