2024/ 1
No.163
1. 巻頭言 2. 101 歳の物理学者の回想 3. 19th International Symposium on Electret(lSE19)会議報告 4. 自身の聞こえに関する「気付き」を促進するための「聞こえチェッカー」の開発
5. 携帯ワイヤーレコーダ

 
  顔認証の便利さ  


  理事長  山 本  貢 平

 新年明けましておめでとうございます。2024 年(令和6年)の幕開けとなりました。この4年間、世界で猛威を振るっていたCOVID-19 もようやく弱まり、以前の生活が戻ってきたように感じます。しかし昨年10 月、ロシアとウクライナの戦争が続く中で、イスラエルと武装勢力ハマスの間で戦闘が起きました。黒海の北側と中東というヨーロッパとアジアが接する地域の紛争が、世界情勢を不安定にしています。これらの争いの早期終結を願っています。

 コロナが下火となった昨年11 月、台湾音響学会の年次大会に参加してきました。久々の海外出張でしたが、出国の諸手続きが、アップデートされていたことに気付きました。例えば搭乗手続きは、自宅からオンラインで済ませることができました。また、台湾入国時に必要な入国手続きも、同様にオンラインで申請できるようになっていたのです。一方、羽田空港での出国手続きは、顔認証で済ませることができるようになりました。すなわちパスポートを機械にかざして、顔をカメラに向けるだけで、AI(人工知能)が本人確認を行い、出国ゲートを開いてくれました。今までのように、出国審査官に顔を向けて一言二言しゃべる必要はなくなったのです。

 後で気が付いたのですが、この顔認証の利用はさらに拡大していました。空港で「Face Express」(顔認証)という装置で搭乗手続きを行うと、保安検査場通過時も、航空機への搭乗時も、パスポートや搭乗券の提示は必要ありませんでした(今回は利用できず)。顔がパスポートと搭乗券の代わりを担ってくれるのです。つまり顔パスです。

 顔認証はすでに身の回りで普通に使われています。PC やスマートフォンのログインでは、カメラ装置をのぞき込むだけでロックが解除されます。また医療機関では、顔認証によりマイナンバーカードが健康保険証になります。このほか、顔認証決済と呼ばれるものも最近出現しています。登録さえすれば現金やキャッシュレスカードを持ち歩かなくても、手ぶらで買い物ができるのです。さらに、交通機関も切符やIC カードを持たなくても、顔認証だけで利用できようになりつつあります。とても便利な顔認証ですが注意したいことがあります。顔情報は個人情報でもあるため、登録した顔情報とそれに紐づけされた個人情報が、誰に管理されているかに注意する必要があります。

 パスポートやマイナンバーカードでは、顔の登録情報はIC チップ中にあって、本人確認のための照合にのみ用いられます。IDカードから紐づけされる他の個人情報は、政府や地方公共団体などによって厳重に管理されています。また、空港のFace Express は、24 時間以内に登録情報が削除されます。顔認証決済の場合は、顔情報と決済方法がクラウドやサーバーで管理されるので、そのセキュリティには十分注意する必要があります。

 将来、技術が進化すると、海外の町を歩くあなたの顔をカメラがとらえ、あなたの国籍、氏名、生年月日、居住地、経歴、趣味までが即座に特定され、知らぬ人から思わぬ歓迎を受けて様々なサービスを受けるかもしれません。

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