2012/7
No.117
1. 巻頭言 2. 連続加振が可能な小走り模擬衝撃源の試作 3. メ ガ ホ ン 4. おしらせらんぷ(BA-05)
   

    <技術報告>
 おしらせらんぷ(BA-05)

リオン株式会社 医療機器事業部 開発部   大 友 あ ず さ

1. はじめに
 おしらせらんぷBA-05は平成23年8月に発売された。本製品は聴覚障害者向けの生活支援機器として、ドアチャイムや電話のベルの音、ドアが開いたことなどを光や振動に変換して、利用者に知らせる機器である。障害者自立支援法の「聴覚障害者用屋内信号装置」に該当し、利用者の生活の質の向上を手助けする機器となっている。

2. 製品の構成
 BA-05は以下の構成品で成り立っている(図1)。  
・ 音センサー  BA-51A :2台  
・ ドアセンサー BA-51C :1台  
・ 中継機    BA-52A :1台  
・ 携帯受信機  BA-53A :1台


図1 おしらせらんぷBA-05

≪音センサー≫
 音センサーは電話のベルやドアチャイムの音など、生活に必要な音を感知した時、中継機にその情報を送信する。センサー感度は、4段階で切り替え可能となっている。
≪ドアセンサー≫
 ドアセンサーはセンサーを設置しているドアが開いたことを感知した時、中継機にその情報を送信する。センサー部は、マグネットセンサーを使用している。
≪中継機≫
 各センサーから受信した情報を、携帯受信機へ転送する。また、中継機自身も、光・メロディ・液晶表示で利用者に情報を知らせることができ、おしらせのリセット操作を行うことも可能である。
 また、時計機能を持っているのでアラームの設定を行うことが可能であり、設定した時刻になると、携帯受信機に向けて情報を送信する。
 電源にはACアダプタを採用しているが、バックアップ用として単3形アルカリ乾電池2本での動作も可能となっているので、停電時でも動作可能である。
≪携帯受信機≫
 中継機からの情報を受信すると、光・振動・液晶表示で利用者に情報を知らせる。内容を確認した利用者は、おしらせのリセット操作を行うことが出来る。
 BA-05全体の動作イメージを図2に示す。


図2 BA-05の動作イメージ

3. 製品の主な特徴
 おしらせらんぷBA-05の特徴を以下に記す。

(1) 小電力無線を使用した通信
 BA-05は機器間の通信に、「2.4GHz帯高度化小電力データ通信システム」を使用しており、各構成品の中には、電波法に適合した共通の無線モジュールが搭載されている。小電力無線は、免許を必要としないので、利用者は購入後すぐに本製品を使用することが出来る。本製品の電波の到達距離は、各センサー〜中継機間、中継機〜携帯受信機間とも見 し20m以内となっている。これは、一般家庭内を十分にカバーできる仕様であり、中継機を家の中央付近に設置すれば、家中どこにいてもおしらせを知ることが可能である。

(2) 光、振動、メロディ、液晶表示を使用したおしらせ
 携帯受信機は「光・振動・液晶表示」で、中継機は「光・メロディ・液晶表示」で利用者に情報をお知らせする。
 光源には、超高輝度LEDを使用しており、発光部に乳白色のカバーを付けることで光を拡散させ、よりおしらせに気付きやすいよう工夫を行った。また、おしらせごとに異なる色で点滅するため、色でおしらせを区別することも可能となっている(全6色)。
 振動源には、携帯電話で使用されているような小型のモーターを使用している。振動のパターンも3つのパターンを持っているため、振動でのおしらせの区別も可能となっている。
 液晶には、どのセンサーからのおしらせであるかが表示される。ベース色が白色の液晶を採用し、コントラストを調整することにより、誰にでも液晶表示が見やすいようにとの配慮を行った。
 中継機のメロディは、ドアが開いたことなどを、健聴者の方が音でも気付けるようにとの考えから、盛り込まれている機能である。

(3) コミュニケーションを補助する呼び出し機能
 中継機と携帯受信機間には、お互いを呼び出す「呼び出し機能」が備わっており、ボタンひとつでお互いを呼び出すことが可能となっている。この機能を使用することにより、離れた場所にいてもお互いを呼び出すことが可能となり、よりコミュニケーションが取り易くなることが期待される。

(4) 音センサーの判定機能
 音センサーには、不要な雑音に反応しないようにするための4段階の感度切り替え機能や、突発的な音に反応しないようにするための判定機能が備えられている。
 感度切り替え機能により、ターゲットとしている音のレベルには反応し、周囲の雑音等のレベルには反応しないよう、あらかじめ設定をすることが可能となっている。
 また、判定機能として、反応閾値を超えるレベルの音を感知すると、そこから3秒間音を感知し続け、そのうち積算で1秒以上反応閾値を超えていた場合のみ、情報を送信するような仕様となっている。音センサーがターゲットとしているドアチャイムや電話のベルの音は上記仕様で十分反応するが、突発的に短時間発生する大きな音には反応しないため、音センサーの誤動作防止に役立っている。

(5) 他機器との混信を考慮した通信方式
 おしらせらんぷで使用している2.4GHz帯の電波は、無線LANやWi-Fi、Bluetooth等、現在一般家庭内でも広く使用されている周波数帯である。そのため、BA-05と他機器との電波の干渉(混信)については十分考慮する必要がある。おしらせらんぷは聴覚障害者にとって生活の一部となる機器であるため、大切な情報(おしらせ)が届かず利用者の生活に支障をきたすようなことがあってはならない。
 上記のようなことが無いよう、BA-05は情報の送信時にキャリアセンスを行い、他の機器の電波を感知した場合には、タイミングをずらして再度キャリアセンスを行うという動作を繰り返すことで、利用者へ確実におしらせが届くよう工夫を行っている。
 また、各構成品それぞれが独自のIDを持ち、中継機にそのIDを登録することで 信が可能となる。したがって、例え隣家で のBA-05を使用していたとしても、BA-05同士で干渉が起こることはない。

(6) オプション品
 オプション品として、  
・ おしらせらんぷ サインマーカー BA-53B  
・ おしらせらんぷ 外部マイク BA-51-S21
を接続することが可能である。
 BA-53Bは、持ち運び可能な光る受信機である。超高輝度LEDを内部に6個搭載し、点滅パターンにも工夫を加えることで、利用者がおしらせに気付きやすいようになっている。また、電源はACアダプタまたは単4形アルカリ乾電池2本のいずれかを使用するようになっており、利用者の使用環境に合わせ、選択が可能となっている(図3)。
 BA-51-S21は、音センサーに接続して使用する。音センサーの外部入力端子に本器を接続することにより、内蔵マイク動作から外部マイクでの動作に切り替わる。マイク部を音源に近づけることが出来るため、より確実に目的の音を感知できるようになる。また、周囲の騒音にも反応しづらくなるため、誤動作を防止する意味でも効 を発揮する(図4)。


図3 サインマーカー(BA-53B)


図4 外部マイク(BA-51-S21)

 

(7) センサー、受信機の追加
 各種センサー、携帯受信機、サインマーカーは増設することが可能である。1台の中継機に追加可能な数は、  
・ センサー : 15台  
・ 携帯受信機 : 5台  
・ サインマーカー : 5台
となっている。
 必要なものを選択し中継機に登録することで、利用者ごとに望んだシステムを構築することが出来る。

4. おわりに
 おしらせらんぷBA-05について、紹介を行った。本製品は、聴覚障害者の方の毎日に潤いや安心を与えることが出来る製品であると考えている。
 今後も、補聴器以外の様々な補聴支援機器として、利用者の生活の質の向上や、人と人とのコミュニケーションを広げるための手助けとなるような機器の開発が出来るよう努力していきたい。

 

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