2012/4
No.116
1. 巻頭言 2. 折り紙インパルス音源の音響特性 3. ホイッスル 4. 第37回ピエゾサロン
  5. 強震計測装置(SM-28)

     <技術報告>
 強震計測装置(SM-28)

リオン株式会社 環境機器事業部 開発部   澤 田  毅

1. はじめに
 リオンの地震計は、ダム、道路施設、鉄道関係、電力設備施設等の重要施設における安全管理のための地震観測等で利用されている。
 今回、総務省消防庁が平成18年に提案した震度情報ネットワークに対応できる強震計測装置SM-28を開発したのでここに紹介する。


図1 強震計測装置SM-28

2. 概要
 本装置は、地震動を検知して、加速度応答値、速度応答値、SI 値、計測震度、水平成分及び鉛直成分の最大加速度などのデータ処理(演算)と演算データ並びに地震波形のデジタル記録を実行する。さらに、インターフェースにEthernetとRS-232Cを標準装備しており、ネットワーク観測システムを構築する際の 信手段に幅広く対応する。
 加えて、2台の感震器を用いたANDまたはORの論理起動条件を設定できるだけでなく、本装置を複数台接続しての連動機能を標準装備している。
 また、本装置は、当社製のサーボ式のデジタル出力感震器(LS-13DX、LS-14DX、LS-15DX、LS-15D)と静電容量式のデジタル出力感震器(PV-24)が接続可能である。
 尚、接点出力増設用の接点出力ユニット(SZ-28P)、GPS時刻校正装置(SZ-53D、SZ-53E)、容量増大用のバッテリユニット(SZ-57A、SZ-57B)などの多彩なオプション製品を用いて、防災、交通制御、緊急遮断弁制御だけでなく、ダムや発・変電所、ビル、橋梁などに代表される大型構造物の挙動観測など幅広い分野に対応している。

3. 製品の主な特徴
(1) 気象庁検定に対応可能
(2) 国土交通省の強震計測装置仕様に準拠
(3) 最大加速度± 4000 Gal 測定で大地震にも対応
 接続する感震器により、最大測定加速度が 2000 Gal と 4000 Gal と選択が可能である。
(4) 感震器は2台まで接続でき、目的に応じて選択が可能
(5) SM-28は2台以上の連動が可能で、3台以上の感震器を同時に稼働させて地震観測が可能
(6) 地震波形はWIN32フォーマットで記録
(7) イーサネットポートを標準装備
(8) FTPサーバ機能を搭載。データ回収や設定変更を行うことが可能
(9) 筐体の省スペース化と軽量化により、壁掛けが可能
(10) USBフラッシュメモリで容易にデータ回収が可能
(11) 接点出力ユニットの追加で最大6段階の警報出力が可能
(12) 環境に配慮した設計
 環境にやさしい製品づくりを目指し、設計段階から環境へ与える負荷を少なくするよう検討して設計を行った。
 すべての部品において RoHS 対応品を採用、および鉛フリー半田による部品実装を行った(グリーン製品)。

4. 感震器
・ラインナップ
(1) サーボ式感震器
 弊社独自の構成でレーザダイオードを使用し、高感度・低雑音を実現。地震波形を高精度で検出し、感震器内部でデジタル化、フィルタリングを行い、データを出力する。
 地表などに設置するLS-13DX/14DXと、埋設(ボーリング孔)で設置するLS-15Dがあり、選択が可能。
(2) 静電容量式感震器
 SM-28と並行して開発を進めた感震器。
 小型・軽量で低価格。1軸あたり3つのセンサによる2out of 3を採用し、弊社独自のアルゴリズムを用いて、高信頼性を実現。設定した警報レベルを超える地震動に対して外部機器を制御するなどの目的に最適な仕様になっている。


図2 感震器ラインナップ


図3 感震器動作原理

5. オプション
・SM-28用プリンタユニット(SZ-56)
 本体に内蔵し、地震発生時のデータ自動印字や、設定条件の印字などが出来る。
・SM-28用ラック取付金具(SZ-70A)
 19インチラック(リオン標準、汎用)に取り付ける際に使用。
・SM-28用壁 取付金具(SZ-70B)
 地震計を壁 や柱などに取り付ける際に使用。
・GPSアンテナセットD,E(SZ-53D/53E)
 時刻自動修正用のGPSチューナとアンテナ、避雷器などのセット。53Dは標準タイプ、53Eは寒冷地、豪雪地帯用。
・バッテリユニットA,B(SZ-57A/57B)
 地震計は停電時にも、内蔵電池により計測動作を継続するが、その継続時間を延長するためのユニット。  57Aはリオン標準ラック取り付け時、および壁掛け用。57Bは汎用ラック取り付け時用。
・電波時計時刻修正ユニット(JJY-PK-RION)
 時刻自動修正用の電波時計ユニット。屋内用と屋外用(JJY-PK-RION-O)がある。
・表示器(SZ-34M2)
 地震計から離れた地点で、地震情報を表示するための装置。 信種 SM-28/SM-27に対応。
・接点出力ユニット(SZ-28P)
 本体と組み合わせることにより、警報6段階、軽故障・重故障・起動の接点出力を行うことが出来る。
・計測震度計気象庁検定

6. ソフトウェア
・SM-28データ変換ソフトウェア
 データカード(SDカード)に記録されている地震データは、WINフォーマット(差分圧縮)で記録されているため、そのまま利用することが出来ない。
 このソフトは、データをテキスト(CSV、及びTXT)に変換するツールで、弊社Webより無償でダウンロード出来る。
・地震波形処理ソフトウェア
 地震計に対して、遠隔操作などが可能になるソフトウェア。
 地震計に内蔵しているEthernet、またはシリアル(RS-232C)に搭載されている通信プロトコルを利用して、記録データの回収、設定の変更、動作チェックなどの実施が可能。
 ユーザのニーズに合わせて、個別に設定されることが多いため、オプション扱いとなっている。

7. システム構成例
(1) 公共施設・大規模商業施設
 学校、図書館、デパート、競技場などで多くの人が利用する施設等に設置し、非常放送設備と連動して館内放送により速やかな避難誘導に役立てることが可能。
(2) 工場などの避難誘導・制御など
 非常放送設備との連動による避難誘導に加え、工場ラインの制御、設備の保護、同時に火災などを誘発する装置のシャットダウンを行うことも可能。
 それぞれのイントラネットに接続することにより、支社・工場・営業所を含む防災ネットワーク構築にも活用が可能。
(3) ライフラインの確保
 配水池等に設置することで、緊急遮断弁との連動により、飲料水の流出を防止することが出来るため、災害時のライフラインを確保させることが可能。
(4) 構造物の安全管理
 ダムの基礎部と天端等に設置し、観測したデータを堤体の点検、管理に活用可能。また地震動の解析データを、次の設計に反映できる。
 また、本機2台以上による連動動作で、より多くの観測点にも対応可能なため、大型のダムやプラントでの利用が可能。
 携帯電話へのメール送信システムとの連動により、地震の把握、その後の対応判断に有効。

8. おわりに
 昨年の東日本大震災から1年になります。震災では、多くの人、施設などが犠牲になりました。弊社で製造販売する地震計により、今後このような犠牲が少しでも低減出来ればと願っています。

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