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2012/1
No.115 |
1. 巻頭言 | 2. CANSMART & CINDE 2011 | 3. ストップウォッチ | 4. ハンドヘルドパーティクルカウンタ KC-52 / KC-51 | |||||||
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＜技術報告＞
ハンドヘルドパーティクルカウンタ
KC-52 / KC-51
リオン株式会社 環境機器事業部 開発部 細 川 勉
１．はじめに
ハンドヘルドパーティクルカウンタ KC-52 / KC-51は、主に医薬、電子工業、精密機械工業、食品メーカなどの試験室、生産ライン等の空気中の清浄度管理を目的としたハンディタイプの粒子計数器である。特に、医薬関連では手術室や無菌室の管理に使用され、電子工業分野では電子デバイスの生産工場における異物混入防止に伴う製品歩留まり向上などの用途で使用される。
従来機種KR-12A / KR-11A / KR-11Bの発売から約12年が経過し、このたび、新型センサの開発や自動流 制御の搭載、国内・国際規格の対応、測定現場に配慮した持ちやすさ・操作性の向上など、機能充実化を図りKC-52
/ KC-51を開発したのでここに紹介する（図１）。
 図1 KC-51(左) / KC-52 (右) 概観 |
２．概要
KC-52 / KC-51はJIS B 9921:2010およびISO 21501-4:2007に対応した空気中に浮遊する微粒子の粒径および個数を光散乱方式により測定し、粒子個数濃度を求める装置である。KC-52
/ KC-51共に測定可能な粒子の最小直径（最小可測粒径）は0.3μmであり、定格流 は2.83 L/minとなっている。粒径区分は、KC-52では５段階（0.3μm以上、0.5μm以上、1.0μm以上、2.0μm以上、5.0μm以上）の表示であり、KC-51では３段階（0.3μm以上、0.5μm以上、5.0μm以上）である。計数値は測定時間または測定体積における累積値、または体積あたりの個数濃度が表示できる。KC-52では粒径間の差分値での表示も行え、これらは測定中に表示切替ができる。
電源はACアダプタまたは内蔵バッテリから供給され、内蔵バッテリは充電可能なリチウムイオン電池を搭載する。充電状況は表示LEDにて確認でき、満充電時でKC-52は約3.5時間、KC-51は約４時間の連続動作が可能である。
３．製品の主な特徴
KC-52 / KC-51の主な仕様を表1に示す。また、本製品の特徴を以降に記す。
(1) 新規設計の小型センサを搭載
パーティクルカウンタにおいて、センサは吸引した試料空気にレーザ光を照射し、散乱光を得る役割を たす非常に重要な機構である。レーザダイオード、レンズ、フォトダイオードなどは
置関係の最適化をする必要があるため、光学調整機構が必要になり幅をとってしまう。今回、我々はセンサの小型化を実現するためにセンサの光学調整機構を見直して簡素化することでセンサ全体の幅を短くすることができた。
(2) 自動流量制御
KC-52では自動流量制御機能を搭載している。自動流量制御は、センサインレットに付ける負荷に依らず吸引するサンプルエアの体積を一定 に保つ機能であり、圧力センサを用いて流路中の圧力を監視し、フィードバックをかけて一定に保つようポンプを制御して流量をコントロールしている。
通常、センサインレットには等速吸引プローブを取り付けて測定するが、計測対象により本器から離れたポイントの測定が必要な場合がある。このような測定にはサンプリングチューブ（最大
５m）を取付けて測定することになるが、サンプリングチューブによる吸引時の負荷により、計測する流量が減少してしまう問題が生じる。自動流量制御機能は、このような吸引時の負荷に対しても、常に定格流量を確保した状態で測定可能となる機能である。
(3) 光散乱式気中粒子計数器の各種規格に対応
光散乱式気中粒子計数器の規格はJIS B 9921:2010およびISO 21501-4:2007に定められている。KC-52 / KC-51はこれらの最新規格に適合した製品であり、測定の信頼性を向上させている。
(4) ISO 14644-1 クリーンルーム評価に対応
クリーンルームの空気清浄度評価の規格にISO 14644-1があり、1 m3(=1000 L)における粒径の最大許容個数で規定することになっている。
KC-52 / KC-51では、換算機能により1 m3あたりの個数濃度表示ができ、クリーンルームの評価が可能である。
(5) 流線型の筐体設計
KC-52 / KC-51の筐体設計にあたり、形状にも十分に配慮して設計を行った。通常、ハンディタイプの気中粒子計数器は、内部のセンサ配置により本体上部が出っ張った金槌のような形状が多い。KC-52
/ KC-51では新規小型センサの搭載等により、本体上部の出っ張りをなくし流線型の筐体設計を行った。流線型により筐体による流れの妨げを軽減し、確実な測定結果を得ることが可能である。
(6) 視認性・操作性・持ち易さを向上
KC-52では3.5インチタッチパネル付きカラーディスプレイを、KC-51では3.2インチモノクロディスプレイを採用している。従来機種に比べて画
サイズや文字フォントを大きくすることで視認性を向上させた（図２）。
また、持ちやすさ、操作のしやすさを追求したボタン配置を行い、タッチパネル入力に関しては、携帯電話を操作するような入力方法にすることで、初めて操作する方にも馴染みやすいように配慮した。
また、持ちやすい形状にも配慮すると共に、本器底面のインサートネジへのハンドストラップ取り付けにより、落下防止対策を施している。
特に医薬、製薬、食品関係の測定者には女性も多く、従来機種の約1 kgに対して約20 ％の軽量化を行った。
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図2 KC-52 (左) / KC-51 (右) 測定画面例
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(7) ２ヶ国語（英語、日本語）の表示切替
お客様からのご要望の中に日本語の画面表示がある。本器は研究者、専門家以外の微粒子計測にあまりなじみの無い作業者も使用される場合が多く、ユーザーの幅が広い。従来機種の画面表記は英語のみであったが、KC-52では、英語と日本語の表示切替が可能である。
(8) 出力端子
KC-52ではUSBポートを有し、USB仮想COMポートを使用したコンピュータと通信が可能となっている。コンピュータから本器の制御や、本器をリムーバルディスクとして認識し、コンピュータへ計測データの転送が行える。また、別売の専用プリンタへの印字も可能である。
また、データリンク端子を有し、当社独自の多点システム用インタフェース機能を内蔵し、最大31台の多点監視システムを構築することができる。
(9) データ保存
測定したデータはtsv形式で内部メモリに自動保存される。保存したデータは本器での閲覧、プリンタへの印字が可能であり、KC-52では約5000データを、KC-51では100データの保存が可能である。KC-52の内部メモリに保存されたデータは、挿入したSDメモリカードに一括してコピー可能である。
(10)パスワード機能
設定ミスによる測定結 の評価間違いを防ぐために、KC-52ではコンピュータのログイン機能のような権限を設け、「管理者」と「使用者」の２段階に分けた使用が可能である。「管理者」はすべての設定・操作が可能であるのに対して、「使用者」は、測定の開始と停止、測定データの閲覧等の操作のみが可能であり、操作範囲に制限をかけている。
(11)オーディオ測定
KC-52には、設定した粒径区分の計数値の整数倍を数えるごとにビープ音を出力するアラーム機能を搭載しており、主に発塵源の特定に使用される。オーディオ機能を有効にしておけば、発塵源に近づけば近づくほどカウント数が増え、ビープ音の発生周期が短くなるので、液晶表示で見るカウント数だけでなく聴覚的にも発塵源を特定することができる。
(12)環境に配慮した設計
環境にやさしい製品づくりを目指し、設計段階から環境へ与える負荷を少なくするよう検討して開発を進めた。
・すべての部品においてRoHS対応品を採用、および鉛フリー半田による部品実装を行った。（グリーン製品）
・省電力部品の採用、および未操作時の液晶バックライトの消灯、非測定時のレーザ、ポンプの自動オフ機能を搭載することで、消費電力を低減した。
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表1 KC-52 / KC-51 主な仕様
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４．終わりに
KC-52 / KC-51はお客様の使いやすさを追求して設計を行った。これからもお客様の声に耳を傾け、ご満足いただける製品開発を進めていきたい。