1984/9 No.6
1. 左右性について

2. 中国技術交流の記

3. ルーバーによる道路騒音対策 4. 震動ピックアップの絶対校正 5. 音響インテンシティ法による応用計測例 6. 聴力と年令

 聴力と年齢

 年をとると視力は機能的に減退することが知られているが、聴力についても古くから多くの研究がある。

 聴力の閾値については、1940年、米国で行われた博覧会の際、来場した人の聴力を測定したというのが有名である。その後、1965年には、年齢、性別の聴力測定の結果が統計資料として米国政府によって刊行されている。

 一方英国ではR. Hinchcliffeが、年齢と聴力の関係について測定を行いAcusticaに報告している。また、1979年には、英国のNATIONAL PHYSICAL LABORATORYSのShiptonが騒音の影響を受けていない人の聴力について、オーディオメータの測定結果を報告している。

聴力が年齢とともに減退することについては、日常生活における種々の騒音の影響があるとの予想のもとに、Hinchcliffeはジャマイカの人里離れた所の住民の聴力を測定しているほか、Kell, Peason and Taylor等は、北部スコットランドの人々の聴力測定も行った。その結果騒音のほかにも日常の食料にも関係がありそうだと報告している。騒音が聴力に影響のあることは、騒音のはなはだしい作業環境において実証されているが、どの程度の騒音が聴力にどの程度影響があるかは、騒音の影響を受けていない人の年齢と聴力の関係を明白にしなければならない。

 上に述べた多くの報告をもとにISO(国際標準機構)では、聴力と年齢の関係について統一した見解をまとめることになった。ISO 7029:Threshold of hearing by air Conduction as a function of age and sex for otologically normal persons.

 この報告は年齢、男女別に周波数に対する聴力の統計をとったもので、125、250、500、1、1.5、2、3、4、6、8kHzにおける年齢別聴力分布が提示してある。そのうち500Hz、1kHz、2kHz、4kHzについての年齢、男女別聴力分布を表として掲げておく。これからわかることは、同じ年齢でも人によって聴力に大きな差のあること、男と女の間にも差があって、特に年をとるとともに特に高い周波数でその差が大きくなっている。
(表) 年令男女別周波数に対する聴力損失
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文献
(1) Gloorig:Hearing Level of Adults by Age and Sex National Center for Health Series. (1965)
(2) Hinchcliffe:Threshold of Hearing as a Function of Age. Acustica.9 (1959)
(3) Shipton:Table Relating Pure-tone Audiometric Threshold to Age. Acoustics Report 94 (1979)

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